魔法の壁
サラディアに戻って来たタケシは、レオンとギルドに向かっている。
「ふーん。それで吐いたんか」
「はい。街道の奥から馬車も見つかっております。中から家紋の入った短剣が見つかっておりますので、間違いないと」
「そっか。防衛成功ってこっちゃな」
ギルドの奥。小さな部屋だが、ピアーナが仕掛けをしているらしい。
手足を縛られ、猿ぐつわをされた3人。
「もう抵抗する意思もないですが」
「お前ら一体何したん」
「いえ別に」しれっとしているレオン。だが明らかに怯える3人。目がけん玉に向いている。
「傷つけるようなことはしておりませんので」
「まあ......それならええけど」
部屋を出た。
「そやなぁ。王都へ送るか......」
「護送しますか」
「そや、カイエンタイに来てもらお。手紙書くわ」
サラサラと書き付けると、細くたたんだ。
「カースケ、これホーホーのとこや」
カースケの足に結わえ付ける。
「急がんでええけど、まっすぐ行ってな」
「カ!」カースケが飛び立った。
「リシェル、だいぶ進んだな」
城趾の花壇はリシェルの担当。レオンやピアーナが手伝っている。
「お父さま、まだまだです。もっともっと作りますよ」
「うん。ボチボチやりや」
そう言うとタケシは黒馬車の横で、ソージキを作り始めた。
カースケが戻ってきて2日後。街に濃紺の外套を纏った1団が現れた。
統制の取れた騎馬の後ろに、護送用の檻車が続いている。カイエンタイだ。
初めて見るその勇姿に、街の物がざわめき立った。
「タケシ、大変だったな。こんな事でお前の領に来るなんてな」
リゥトスがタケシの額の傷を指差す。
「あぁ。すまんな。こっちから護送するにも、ちょっとな」
「構わんよ」
「ギルドにおるわ。レオン、案内したって。あ、リシェル紹介するわ、リゥトスこっち」
「リシェル、この人な、リゥトス。カイエンタイってめっちゃ強い軍の指揮官や」
「始めまして、リシェルです」
姫らしい美しいお辞儀。だがリシェルの手は土で汚れ、服も男の子のようだ。
「始めまして、リゥトスです。お目にかかれて光栄です」と、リゥトスはひざまずいた。
キョトンとするリシェル。
「おいリゥトス、やめたって。
困ってるやろ」
「ハハっ。タケシ、いい子だな。いや、可愛い姫だ。大切にな。リシェル姫、たくさん甘えてくださいね」
「はい。お父さまはとても楽しい方で、リシェルは大好きです」
「タケシがお父さまかぁ。良かったな」
タケシはリシェルの顔を見て、ニッと笑った。
カイエンタイが王都に向けて隊列を組み、タケシに向けてサッと敬礼すると、足並みを揃えて街道へ。
手を振りながら後を追う子供達を見ながら、レオンはふぅっと息をつく。
「お疲れ様」振り向くとピアーナだ。
「ああ。ピアーナも。助かった」
「ううん。やっぱり勇者よね。威圧感が違うわ」
「そうかな」
「まあ自覚がないから、余計に怖いのよね。剣も持たないのに」
「.......」
レオンがピアーナを睨む。
「フフッ、そういう顔。素敵♪」
「ほんでここに魔石をやな」
ポチッと入れる。
ブーン.......「お。吸うかな」
ブーン.......「よしよし。こっちも」
ブーン.......ブガッブガッ「あぁぁぁー」
慌てて魔石を外す。
「スライム詰まった........」
スライム箱の蓋を開ける。排気口に詰まったスライムをビローンと引っこ抜く。
「風で.....動いたんかな?ふむふむ.......」
翌日ーー
ポチッっと。
ブーン......「よしよし」
ブーン......「ええでー。もっと吸えー」山盛りの木くず。
ブーンブーンブーン.......バコン!
「うわぁ!」スライム箱の蓋が吹っ飛んだ。
「うっそ。スライム分裂しとる!......もうちょい箱デカするかな?」
翌日ーー
ポチッっとな。
ブーン......「よしよし」
ブーン......「ええでー。もっといけー」
ブーン......ブブップスン。パリン。
「あ.......魔石割れた......おーいピアーナ」
「はい、なんです?」
「割れてもた」
「使いすぎですね」
「なんでやねん。まだ3回目やぞ」
「タケシさん。風魔法って、ビューンと吹いて1回です。ただでさえ吸うほうがパワーいるのに、ブンブン続けて使ったら、すぐ割れちゃいます」
「マジか........」
がっくりうなだれるタケシ。
「そんなん、アカンやん.......」
「できるって言うたやん」
「出来てますでしょ、一応。ちゃんと吸ったじゃないですか」
「.......そんなに魔石使うんやったら......実用化出来んやんけ」
「だから、箒でいいでしょって」
「クッソー!!」
諦めたタケシは、ソージキを片付けて工房に向かった。ライトの進捗状況を確認したかったのだが.......
「あ、タケシさん。こないだ言ってたソージキ、どうなりました?」
かるーく聞いてくるペータ。
「うっ......」
黙ってUターンするタケシ。
「あ、お父さま。あれ?お楽しみは?」
「ん?あれは......えっと.......」
「リシェル、花壇の続きしよう」レオンがリシェルの手を引いて行った。
「クッソー!」
「なあピアーナ。氷魔法とかあるやん。こんな箱にな、ここに魔法で氷置いたら、箱の中......冷えるよな」
「冷えますよ。上に魔石置いて魔法陣ですね。氷できますよ」
「お」
「でも多分すぐに全部氷で覆われますけど」
がっくりするタケシ。
「ほんならな、こんな箱に水入れて、グルグル回せるかな」
「あー。水流作るんですか?できますよ。流れ作る魔法陣を底に仕込んで、魔石置いたら箱の中でグルグルしますね」
「やった」
「でも多分、3分持てばいいほうじゃないかな?それに回りすぎて溢れると思うなぁ」
またがっくり。
「ほな、あの魔道水路とかどないなってるんよ」
「あれは魔道士が定期的に魔力補充してるんです。最初流れ作る時はすごく大きい力がいるんですけど、一旦流れができたら、後はたまに魔石入れ替えておけば」
「魔道コンロは?あれ案外持つやん」
「火魔法って、攻撃に使う時って凄い火力でしょ。あれに比べるとコンロなんて微々たるものですから」
「結局何ならできるんやろ」
「タケシさんが魔道士なら、魔石コントロールできるけど、無理ですし。そんな便利なものだったら、とっくに作ってますよ」
「うぐぐ......ごもっともです」
しょんぼりと黒馬車のベッドに潜り込むタケシだった。
ーーくそ。
気の迷いや。
俺はやっぱり魔法なしでええ。




