日常の裏側
「なぁローデリック、ここの森にな、タイタイの木ってあるかな」
「あぁ、ございますよ。真ん中に穴の空いた木ですな」
「よかったぁ。ちょっとだれかに取ってこさせて」
「はい。承知いたしました」
タケシがピアーナに絵を描いて説明している。
「こんな感じでな......ここ持ち手や。ほんでこっちにスライム入れでな.....」
「はい」
「風魔法でこの先から吸い込んで、スライムの箱に落ちるようにすんねん」
「何を吸うんです?」
「ゴミ」
「??」
「ゴミ吸う機械作りたいねん」
「ゴミ吸う......」
「出来るんか!出来んのかい!」
タケシ、ちょっとイラッとする。
「できますよ。風の魔石と魔法陣の組み合わせですね」
「やった」
「えっと.....この持ち手の所に吸う魔法陣を書いて、白い魔石なんですけど、中央に置いたらいいだけ」
「えらい簡単に」
「だって簡単ですもん」
「魔石はミナセのギルドで手に入る言うとったな」
「あそこは使う人少ないですからね。貯まったら王都に買い取ってもらうんですって。でも私も少しは持ってますよ」
「そっか。ほなとりあえず.......,あ、ありがとう。........」
ブツブツ言いながらタケシが去っていく。
「ゴミなんて箒があれば済むのに.....」
ピアーナにはやっぱり理解できないようだった。
タケシは、黒馬車の幌を横に開いて日陰を作ると、座り込んで作業を始めた。
チラチラと通りすがりに目を向けられる中、タケシは木を削っている。
「お父さま、何を作るんですか?」
「ん?お楽しみや」
「あ、師匠はこういう時はほおっておいてください」レオンがリシェルを連れて行った。
「タケシさん、今度は何ですか?」商会の職員だ。
「お、どうや行商」
商会は近くの街へ、ミナセから持ってきている商品を積んで、行商していた。基本日帰りだ。
「まぁまぁですねぇ。興味はあるようですが......」
「そっか。納豆はどうや。売れるか?」
「いやー。あれはなかなか......やっぱり匂いですかね。ノマドはボチボチ出ますけど」
「んー。試食販売するか.....あ。そうや、キッチンカーや。ちょっと2日程待ってて」
タケシはサッと手元を片付けると、工房へ行った。
「これ、魔道コンロですか」
「うん。ピアーナに作ってもろた」
「これでノマドラーメン作れるやん。ほんでここにスライムゼリーいれて、納豆ここ。ほんで、このさじで試食させたれ」
「試食ですか」
「うん。食べてみんとわからんやん。他のもんもちょっとずつな。人寄せにもなるし。ただし、ほんのちょっとや」
「売り子いりますね」
「売り子2人はいる。街の子連れて行ったって。商会の馬車ピッタリ並べて、キッチンカーは、そこで食うもんだけにし。他は商会の馬車で買ってもらえ。自然と商品に目が行く」
「わかりました」
「籠とかな、ええのんできてる。商品並べるのに使ってもええ、カートや小物も出来てるからな」
「はい。見せ方ちょっと変えてみます」
国軍が帰って、サラディアの街はわずかに静かになった。
だがまたミナセから職人達と材料の便が着き、材木も届いて、賑やかさが増していく。
タケシは作業の手配を確認すると、冒険者と共にミナセに帰って行った。
留守を任されているレオンが、ゆっくりと街を巡回してる。いつもの装備は変わることはない。
街道から街へ歩いて来る3人......武器はない、冒険者ではなさそうだが.......農民?帰郷者か?
その時、街の境界柱から、すぅーっと細い光が天に昇った。
侵入を告げる合図だ。
「魔道士ですね」
レオンの後ろにピアーナがいた。
「服装をわざと変えてますね」
「ピアーナ、リシェルを頼む」
そう言うと、ポケットからカメスラボールを出した。
カツミ特製激辛激臭必殺ボールだ。
巡回の冒険者も光に気づいてやって来た。
「レオンさん......それって......」
手のひらで転がるカメスラボールは、いかにもヤバそうな色が透けて見えていた。
レオンが振り被り.....力いっぱい投げた!
ビシューン!尾を引いて飛ぶスライムボール。
バシャン!
冒険者がダッシュしてふん縛ると、引きずって戻って来た。
「あ、あの私達はこの街の農民で.....ヘッキュシュン」
「ゴホッゴホッ。ワシら帰って来たんでゴホッ」
「いいえ。ここのものではありません」後ろからローデリックだ。
「その襟の模様はここのものではない。近隣でもない。おそらくかなり遠くでしょう。歩いて来るなどありえませんな」
その時、縛られた男の口が音もなく動いた。
ーー詠唱?
その瞬間、レオンが踏み込んだ。カメセンイアイヌキが炸裂し、男はふっ飛ばされた。
「詠唱出来んように口をふさいでおけ」
ピアーナが戻って来た。
「ギルドで絞ってくれ。ピアーナ。頼むな」
「はーい♪」ウインクしたピアーナを無視して、レオンはリシェルの元へ向かう。
ーー来たな。
「カエルー」
リシェルが泥だらけの手を振る。
城趾に花壇を作っているのだ。
「手伝ってー」
ーーリシェルは....私が守る。
一方。ミナセに帰ったタケシ。
「只今。お土産や」
「おかえりー。やぁ、可愛い籠やん」
「森の蔦で編むんやて」
「へぇー。ええやん。ちょっと珍しい編み方やなぁ。タケシ、これひと工夫したら、化けるで」
「化ける?」
「うん。このままでも可愛いけど、ちょっとこの横糸とかにな、リボン編み込んだりしたら、女子受けする」
「マジ」
「うん。なんか模様決めて、サラディアブランド作っちゃえばええ」
「出た!勝手にブランド」
「言うたもん勝ちや」
「やっぱお前には勝てん」
「任せて。商会の女の子と相談してくるな。やっぱトートバッグがええかなー......」
ブツブツ言いながらカツミが出ていく。
取り残されたタケシ。仕方なく自分でお茶を入れて、縁側に座った。
「タケシ帰ってたんだ」
「あぁ、ルークか。うん今しがたな」
「あの馬に魔法さ、だいたいわかったみたい」
「え?」
「やっぱ貴族だった。ただ魔道士捕まってないんだ。だからまだ泳がせてる」
「そっか」
「うん。言い逃れできないようにしないと、処分できないから。でもまた動くよ。ああいう奴らって、ホントおバカだからね」
「サラディアにも、手は打っといたから」
「そっか。まあ気をつけといてね」
と言いつつ、タケシの顔を覗き込むルーク。
「んで、貴族馬車作るって?」
「お前ら.....筒抜けやな」
「父が楽しみにしてるって」
「はいはい。任せなさい。これでガッポリやし」




