備えの旅路
久しぶりやー。
タケシは、ミナセの街をぶらぶらしている。
取引している店に顔を出すと、もうみんな、タケシが子爵になった事を知っていたが、以前と同じように接してくれる。
町役のところで、ミナセの総代も降ろしてもらった。
相変わらず子供たちは、ボスだのハゲだの言って絡んでくるし、屋台のおっさんが串焼きをくれたりする。
サラディアも、こんな街にしたいなぁ......
テラのところで近況報告して、冒険者ギルドに向かった。
「お前のところの護衛なら、選び放題だぞ」
「え?なんで?」
「飯がいいから人気が高くてな。みんな空き待ちだ」
「そんな事で?」
「馬車に保冷箱積んでて、色々食わせて貰えるってな」
「あー。カツミが遠征パック作っとったな」
「で、今度はサラディアか?」
「そうやけど、向こうで活動出来る奴が欲しいねんなー」
「最初に行った奴らは?」
「よう頑張ってくれてるで。ギルド作ってアイツらにまとめてもらうんやけど、ちょい足らんしな」
「行くだろ。すぐ募集してやろう」
「明日とりあえず2人、で残りは1週間後でええ。で、魔道士欲しいんや」
「魔道士は......ミナセは魔道士少ないからなぁ......防御系なら.....」
「それでええ。てか、それがええ」
「わかった。1人しか出せんが」
「あぁ助かる」
最後に商業ギルドに寄って、募集をかける。サラディア移住を前提に、石工や家具職人、陶工、お針子などの専門技能職人、そして、医師と薬剤師。
川沿いの道を帰っていると、公園でリザードマンが、花の手入れをしている。
そうや、並木も花もいるな.........
苗、買い付けよ。
リシェルに似合う、可愛い街に......
「ねえタケシ。こんな感じでどない?」
「お。ええやん」
ミルナの木に車輪、コンドウ商会のマークの中央に赤い石が縫い付けられている。
「これ、馬用」と出したのはタスキ状。
「んで、馬車用は、これボンドで貼る」と、ワッペンタイプ。
「こっち人用」ピンに付けてある。
「サンキュー。早速アキラの便に使お。残りの石もやっといてな」
「オッケー。元のマークあるし、そんなに時間かからへん」
午後からは、工房を見て回る。
ホンマ俺おらんでも、しっかり回しとるなぁ。
お、カメキチやん。
スライム槽にプカプカしているカメキチをつつくと、ビシュ!っと水を掛けられた。
ふふーん。タケシがポケットから干し肉を出してカメキチの目の前でユラユラさせると、パクっと食らいついた。
「へへっ。カメキチ釣れたどー」
釣り上げられ、ブランブランのカメキチが、職人達の笑いを誘った。
翌日。アキラはサラディアに発った。
ポンプ工房の馬車ではなく、2頭立て幌付き荷馬車。馬の首にはタスキが掛けられ、馬車にはワッペン。御者や冒険者にもピンを付けさせた。
「タケシってさ、案外慎重なんだよね」とルークが笑う。
「いや......俺は......子供の頃めっちゃビビリやったから......」
「えー。全然みえなーい」
「不安要素は先に必死で消すんや。特にこっち来てからは、分からんこと多すぎたからな」
「道理でね。以前から打つ手が早いとは思ってたんだけど」
「まぁ絶対の安全なんてないけど、出来るだけな」
タケシは額の傷に、そっと触れた。
翌日からは、ヒューイと一緒に自分の黒馬車を2頭立てに改造し、入念に手を入れた。
「タケシさん、鼻歌歌ってました?」
「うわっ聞こえたか。俺は、やっぱり車触っとる時が一番楽しいわ。ヒューイは何が楽しい?」
「僕は......まだ良くわかんないです。覚える事多すぎて。でも、色んな事教えて貰えて楽しいです」
「そっか。ええこっちゃ」
「それにしても、中、凄いですね」
「へへっ。キャンピングカーや」
「これ、もうここで暮らせるレベル」
「うん。俺の別宅や」
数日後、ギルドから冒険者がやってきた。
男4人に女が1人。パーティーらしい。
「で、魔道士は.......」
「私です。ピアーナです。よろしくお願いしまぁす」
どう見ても子供にしか見えない......
「大丈夫かなぁ.......」つぶやくタケシ。
「タケシさん。こいつこう見えて、30超えてるんで。大丈夫ですぜ」
「マジで」
「えへっ♪」っと握った手を頬に添えるピアーナ。
「.......ぶりっ子やんけ!」
「いやん♪」上目遣いに切り替えた!
「.......」
「.......」
「うん。明日出発な......」
「カツミ。当面は向こうとこっち、半々にするわ。月1で行き来する」
「うん。そうして。無理せんようにな」
「そやな。ボチボチやる」
翌朝、母屋の前に2台の馬車が並んだ。
タケシの黒馬車と、資材の荷馬車。どちらも2頭立てだ。
その前に冒険者達。
タケシが装備を見て割り振る。
「夜がけするから、交代で御者してな。ピアーナは......」
「私、苦手ですぅ」
「やっぱりな。ええよ。とりあえず後ろの御者脇におって」
「はーい。それにしても守りの硬い馬車ですねぇ」
「お。わかるか」
「魔石のパワーが凄いですね。私、要らないんじゃ?」
「あんたは、サラディアにいるの。向こうで頑張って」
「わかりましたぁ」と、ヒラヒラスカートを振りながら後ろ馬車に乗り込んだ。
「......」
「タケシさん。大丈夫ですって」と、いかついリザードマン。
「パーティーじゃ、完全防御のピアーナって言ってるんです」
「マジか」
「まず見た目でみんな避けます」
「そっちかい」
「腕も確かです。たまに魔力漏らす位強いんで」
「漏れるんや......魔力って」
カースケがタケシの肩に止まる。
「よっしゃ。行こか」
ひと山越えて、昼食。
タケシが保冷箱から遠征パックを出して、ちゃちゃっと作ると、5人が寄ってきた。
「うわー。うまそー」
「俺、これが楽しみで」
「やったぁー。カレーや」
「やだぁ。スライムゼリーもあるぅ」
「お前ら......食いもん目当てか」
「そんな事ないですよ。いや.....はい」
「もー。ええわ。食えや。てかもう食ってるんかい」
「旨いっすー」
ガツガツガツガツ
ーー早ういかんと食い尽くされそうや。
タケシが黒馬車の荷台で寝ていると、急に馬車が止まった。
ーーん?
バタバタと走る音。
起きて、様子を見ようと外に出ると、冒険者達の真ん中に転げ回る数人の男達。
「あ、タケシさん」
「お。さすがやなぁ」
「いや、ワシらは何にも.......」
「カースケ君が胡椒玉で.......」
見ると、ピアーナの胸にカースケが抱かれていた。
頭を撫でられ、ウットリしている。
「カースケ.......お前なにデレてるねん」
「カ?」
「褒めたろ思たのに」
「カァ......」




