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縁側の設計図

コンドウ家の縁側。カツミがタケシの薄い髪を、器用に切っている。

「いでっ」

「あ、ごめん、手ぇ当たった?」

タケシの額には薬紙が貼ってある。

「べっちょない」

「毛がないのに怪我したねぇ」

「うるさい」

「もー。中途半端にあるの面倒や」

「すまんな。俺かて嫌じゃ」

足元にはらっと落ちた短い毛を、スライムがモニョっと食べている。

「便利よねースライム」

「ほんまな」

「掃除機みたいに出来んかと思って」

「ほう」

「棒にくくりつけてみた」

「やったんかい」

「ビヨーンと伸びてアカンかった」

「うわー」

「自走式も試したで」

「走るか」

「めっちゃ遅いし食べんでええもんまでいってまう」

タケシが笑いながら、肩の毛を払う。

「まぁでも、そのうち掃除機出来るんちゃう」 「やっぱ?」 「風魔法使えるやつおるやろ。吸わせて、スライムで回収したら」 「おぉー……」 カツミの目がキラーンと光った。

「うわっゴミパックいらん」「うん」 「先っちょ交換式」 「うんうん」 「カーペット用とか」 「お前どこ目指してんねん」

カツミは真顔で答えた。

「ラクしたい」

「職人の原点やな……」



「今朝ルーク来てたけど、何やったん?」

「あー。あれなぁ......」


ルークが持ってきた袋には、小さな赤い石がたくさんはいっていた。

「これね。タケシ達も持ってるでしょ」ルークがタケシの胸を指差す。

「あぁ。これか」

タケシが胸もとから出したペンダント。王家の紋章の中心に、赤い魔石がはめられている。国王カイルから贈られたものだ。

「うん。赤い石。これは守りの魔石なんだ」

「あぁ。前にカツミもこれで助かったんや」

「うん。魔法も魔石もそれぞれに力はあるけど、組み合わすとより複雑に作用する。馬の件も多分そう。魔道士が石を使って魔法をかけた。まぁ胡椒玉食らって、石は落っことしたんだと思う」

「カースケのお手柄やな」

「うん。証拠だからね。魔法ってさ、流派があってね、使う石も詠唱や魔法陣もちょっとずつクセが違うんだ。だからすぐに見つかると思うよ」

「お前詳しいな」

「僕ねー。実は使えるんだよ。フッフーン」

と言うと、ルークは指先に小さな火を灯した。

「うっそー。すっげー」

「今は使わないようにしてる。色々あってね。まぁここじゃいらないし」

「もったいなー」

「でもその代わり、防御系だけはこっそり強くしたんだ」

「防御系?」

「うん。この魔石さ、ミナセの森のダンジョンで良く出るんだよ」

袋のなかの石を、ジャラっと1握り。

「これ、買ってよ。魔法を防御する魔法、かけてあげる。お安くするよー」

「これと一緒?」ペンダントを手のひらに置くタケシ。

「あぁ、そっちのは王家の特別製。小さいけど再結晶で密度上げてるんだ。そこまでしなくても、馬とか馬車に付けるならこれでいいんじゃない?」

「人にも使える.....」

「もちろん」

「.......買う。全部買う」



「へー。ルークって魔法使えたんや」

「内緒やて」

「あー。それこそめんどくさいことになりそうやもんねぇ」

「ほんでその石、こっそり加工してくれてるから、できてきたらな.......」

ーー

「よっしゃ。任せて」




「コンドウ殿ー」

縁側でお茶を飲んでいるタケシのところに、走ってきたのは

「あ。アルベルクやんけ」

ディオラム商業領、領主アルベルクだ。

「いやぁ、コンドウ殿、この度は子爵になられたとか。おめでとうございます」

タケシはこの男、ちょっと苦手だ。

「拝領されたと聞きましたが」

「うん。サラディア」

「ドラゴン災害があったという?」

「うん。そう」

「それではまだ街は.....」

「うん。今からボチボチ」

「あー。アルベルクさん。いらっしゃい、こんなとこでもう、タケシ、上がってもらい」

「はぁー。はいはい、どうぞ」


「ほっほー、それは大変でしたな。まぁコンドウ殿らしいというか」

「そらあんたならほったらかすわな」

「商売にはなりませんので」

「だろなー。でも。俺、貸しあるよな」

「えっ」

「返して」

「......何を?」

「そやなー。姉妹都市とか。この先、あの領は、ものづくりに特化したいねん。コンドウ商会ベースにして。そやから、な。商売の匂いするやろ」

「ほっほー。悪くないですな」

「まぁ直ぐは無理やで、まだぜーんぜん。生活できるようにするのが先やし。でも3年後。あそこを工房の第2拠点にするんや」

「流通。ですな」

「そや。その時はこっちから繋ぎにいくから」

「分かりました。お手伝いできるでしょう」


「ごめんくださいー」

「誰やろ......」

「タケシ、セルディオさんよ」

グレイス領の領主セルディオが顔を出した。

「この度はおめでとうございます.....あ.....」

「セルディー、この人ディオラム領のアルベルク」

「あ、セルディオ=グレイスです」

「君がグレイス領の。ふむ、よろしく」と、アルベルクが、値踏みする目を向けた。

「おいおい、その根性悪そうな顔やめや」

「いやいや。コンドウ商会が出店した領ですからな、要チェックでしょう」

「どうや、セルディー」

「はい。おかげさまで、だいぶ落ち着きました」

「そっか」

「グレイス領と言うと、豆ですなぁ」アルベルクがニヤリと笑った。

「はい。グレイスビーンズです」

「是非、直接お取引を」


「そうだったんですか、私も復興のお手伝いしたいところですが」

「いや、セルディーは自分とこちゃんとやるのが先や。でもこの先、また協力し合えるやろ。な、アルベルク」

「さようですな。それぞれ得意分野が違いまから」



「何か楽しそうやったね」

「あの2人、案外ええ感じやった。2人でルークのとこに行くんやて」

「セルディオさんにしたら、アルベルクさんのとこって大先輩って感じやもんね」

「あぁ。ええ繋がりできたんちゃうか」

「ほんでどないすんの、サラディア行き」

「先にアキラ行かせて.....」

「一緒に行かへんの?」

「いや。なんかあった時のためにな、バラバラの方がええと思う」

「そっか」

「明日ギルドにいってくるわ。護衛も考えんとな」

「ほんで、お客さんの時ぐらい帽子脱ぎ」

「いや、心配するやろし」

「ええけど。今さらやし」


「タケシさん。バクっとだけど。地図見て」

「ほーほー」

「まあ実際の地形確認いるっすよ」

「明後日位。行けるか」

「うん。段取りはしてる。明日の夜例会するから、もう1回確認できるし」

「俺、ずらして行くわ。御者と護衛の冒険者付ける」

「了解っす。ひさびさにカエルと遊ぼ」

「あれ、おもちゃか」

「真面目過ぎて、逆に面白いっす」





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