勝者の責任
ー緊急通達ー
『アルネア王国勝利!!ゼルハイム魔導国滅亡す』
ゼルハイム魔導国は、先の合戦に於いて、我がアルネア王国軍に対し完全降伏し、その領土はアルネア王国のものとなった。国王陛下のお言葉..........
そっか。勝ったか。
タケシはポイと紙をほおると、ゴロリと寝転んだ。
でも...まだ帰ってけえへん。
天井を眺めてため息をついた。
「ターケシー。ただいまー」
ルークの明るい声。
「お、おかえり。お前...相変わらずやな......」
こっちは心配で.......
「お土産だよー」
「ん。ありがとう......王都クッキー?」
「うん。新発売なの。王家の紋章入り」
「.......お茶いれるわ.......」
「ほんであの国どうなるんや」
「うちのものだよ」ポリポリ
「あの子は?えーっと」
「あぁ、リシュアは一応領主ってことで、5分の1位の領土」
「後は?」ボリッ
「国領。いる?今なら...」
「いらんって」
「これ意外と美味しいね」モグモグ
「意外とって、お前が持ってきたんやろ」ズズッ
「んで、今度送ることになりましたー」
「何を?」
「復興支援隊」
湯呑みを置くタケシ。
「悪い予感しかない」
「デヘヘ」
「デヘヘやないわ」
「近々、父から連絡来ると思うからね。伯爵のお勤めです」
テーブルに突っ伏すタケシ。
「ディオラムさんとこも呼ばれるはず。良かったね、お友達がいて」
「友達ちゃうわ」
「海があるんだ、あそこ」
「ふーん」
「お塩安く手に入るから、作ってよね、おトーフ」
「ニガリ作ってくれ」
「わかったー。お鍋混ぜ係だね。やるやる」
「若布あるかな?」
「ワカメ?」
「豆腐と若布の味噌汁.......」
「行くよね」
「まあ、行ってもいいかな」
ーー何でこうなるねん.......
「でもね、リシュア大変だよ?側近も誰もいない。当分は王都から事務官派遣してバックアップするんだけどさ」
「魔道士どないしたんや」
「あれはねー。中央にいた奴らは、みんな隷属の首輪で、一生公共事業に従事させるの。あそこさ、魔道化が進んじゃって、維持が厄介なんだ」
「隷属の首輪?」
「大昔の奴隷制度で使ってた奴。今はあんなイカツイ物使わないんだけど、まあ見せしめだよ」
「死ぬよりマシか」
「どうかな?死んだ方が楽かも。あれ見たら、他の魔道士はビビって何もできないよねー」
「エグいなー」
「でも、次なにかやらかしたら一生詠唱できなくする」
「?」
「声帯を取るんだよ」
「マジか」
「うん。魔道士の処刑ってだいたいそうなんだ。腕を落とすとか」
「えっ」
「魔法陣書けなくするの」
「すご」
「命取られるよりマシでしょ」
「そうやけど」
「魔道士は、普通とは罰し方が違う。特殊能力だからね、正しく使わない奴はそれくらい当然なんだ」
「.......」
「なに。ビビった?」
「いや、やっぱ異世界やなーって」
「ほんとに要らないよ.......魔法なんて」
「そうか?」
「タケシ達は無くても便利に暮らしてるじゃん」
「まあな」
「僕も魔力使いすぎた。お鍋混ぜてる方がいいや」
「わかった。残ってるニガリで豆腐作ったろ」
「やったー♪」
スキップして帰って行くルークを見ながら、タケシは実はホッとしていた。
やっぱ違うな。王家やもんな。
普段ヘラヘラしているルークの裏側の重さに、タケシは身震いする。
そや。チャリンコ出来たら乗っけたろ。
さてそのチャリンコ。
タケシがいなくても、どうもアキラに聞きながらやっているらしく、もうカタチになっていた。
「バルザ、もっとゆっくりやれや」
「いやー。久々で面白くて」
ニヤつきながら頭を掻くバルザ。
「ちょっと乗ってみます?」
「おう」
サドルにまたがり、フンッと漕ぎ出す。
「お、行けて.......」
ガション
「なかったな......」
「外れましたな」
「直そか」
「ですね」
と言いながら、2人は笑っている。
その横で悔しがるヒューイ。
「こんなもんよ。そんな簡単やないから、おもろいんや」
と、タケシがヒューイの頭をガシガシした。
王都から書状が届いた。
あー。行っとる間にできてまうかもー。
しゃあないけど......
しょんぼりや......
王都アルネシアの王城、大会議室には、総勢30名ほどが集まっている。
タケシはテーブルに置かれた名札を見て席につく。
「何で上座やねん......」ブツブツ文句を言っていると、隣にアルベルクが座った。
「コンドウ殿。どうやら貴族は我々だけのようですな」
「何で上座やねん......」
「コンドウ殿は伯爵ですので。わたくし子爵です」
「クソっ」
タケシの向かい側にリゥトス。その横は国軍の司令官らしい。
他は殆どが文官のようだ。
テーブルの一番上座にカイルが立った。一同が起立し礼をした。
しんと静まる中、カイルの声が部屋に響く。
「ご苦労。アルカディウスへの復興支援についてだが、今回はまず調査だ。手元の資料を見てくれ」
地図と資料を広げる。
それぞれの担当地域に印が入れられていた。
「密偵からの報告を元にした資料だーー」
アルカディウスは、3男リシュア以外の王族は処刑されて誰もいないが、貴族はまだ残っていて、自領をまとめていたようだ。ただそれも魔道士の言いなりだったようで、代替わりした領もあり、今回アルネアに統合された事により、一旦身分も剥奪する事になる。
カイルが下座の方を見る。
「それぞれ担当の領で、管理官として働いてもらうことになるのだが、まずその領の元貴族や統治関係者の洗い出しと人選を行ってくれ」
「元王都はリシュア=アルカディウスを領主として、既に立て直しを図っている。だが地方は食料自給もままならない状態だ。特に国境付近では、今後こちら側へ逃れるものが増えると思われる。早急に物資の配給を進め、とどめ置く必要がある」
「コンドウ公爵、ディオラム子爵。物資は来ているか」
「はい」2人の返事が重なる。
「よし。では第1班は物資を受け取り次第、出発してくれ」
「はっ!」立ち上がり、5人が退出した。
「国軍はアルカディウスの残存兵力の確認と指揮系統を。カイエンタイは沿岸地域で海軍を押さえてくれ」
「はっ!」敬礼する2人。
「コンドウ公爵とディオラム子爵は経済の立て直し。商業誘致と運輸整備だ」
「承知いたしました」とタケシが答えた。
「では、準備が整い次第、班ごとに出発の事」
カイルが立ち上がる。
「タケシ、アルベルク、来い」




