動く世界
「やっぱり成るように成るんよなー」
「はいはい。カツミの感は凄いです」
「ほんでそれを何にするん」
「ブローチかな」
「分かった。宝石店で可愛いのに仕立てて来るわ」
「うん。任す」
そこへ、ルークが現れた。
「タケシ、ちょっといいかい」
外へ、と目で示す。
あー。来たか。
「おう」
「もう行くんか」
「うん。色々段取りがあるんだ」
「そっか.......」
「カメスラボールとマスクは王都に納品してるよね」
「あぁ。もう行ってる」
「王都で臨時講師ってことになってる。一応2カ月」
「うん。分かった」
「大丈夫だよ。カイエンタイの特殊部隊と入るんだから」
「うん。そうやろうけど」
「もー」
ルークは、森の奥の自分の家の方を見た。
「頼んだよ」
「あぁ」
タケシがルークの頭をガシッと掴んだ。
「死ぬな」
目を見て、静かに言う。
「分かってるって」
一見変わらないルーク。だがその目には揺らぎもない。
「........」
「じゃあね」
「あぁ」タケシはクルッと背を向けた。
ルークが帰っていく。
クソっ.......石ころを蹴飛ばす。
乾いた音が響いた。
「なんか国軍が動いてるって話っすよ」
「そうなん?」
「道の駅に軍馬車が増えたって」
「へー」
「ゼルハイムかなぁ」
嫌な話題や........
「お。アキラそれはそうと.....」
「はい?」
「お前、爵位断ったって?さっきカツミに聞いたんやけど」
「あー。あれね」
ルークが目を付けたのは、アキラが工房でやり始めたシールの印刷。
根掘り葉掘り聞かれるうちに、アキラが思いついたのは活版印刷だった。
それをルークが王都に持ち込んで、印刷所が王都に作られた。そして様々な印刷物が王都から地方へ発送されるようになった。1枚物の、国の広報誌のようなものだ。
その功績で、アキラに男爵位を、と言う話が来ていたのだ。
「だってめんどくさいでしょ。貴族って」
「いや、断れるもんなんか?」
「そんなことになったら、もうなーんも教えてやんないって言ってやったんす。ルークに」
「脅したんか」
「脅しやなんて、そんな大層な。笑ってましたよ」
「お前、俺以上に凄い」
「一応勲章だけは頂いたっす」
「マジかよ。それで断れるんや.......」
ーーやっぱりアキラは雑学持ってるしな。俺より知識多いんよなー。
「あ、今ね、タイプライター作ってるっす。遊びやけど」
「はぁ?」
「ここって漢字ないから簡単でしょ。昔の英文タイプ」
「?」
「和文タイプは難しいけど、ポチポチするだけやから」
「??」
「もうちょいなんで」
ーーあかん。タイプとか、俺わからん
「そっかそっか。まあ頑張れな」
確かに、動き始めていた。
ゼルハイム国境付近。国軍が集まりだした。軍の食料物資がそちらに流れている。
街はいつも通りなのに、小さな噂話が、スーッと駆け抜ける。
ミナセの街を歩いていると、主がいなくても、変わりなく人々の暮らしがあって、タケシは少し寂しくなった。
ーーあかん。他のこと.......
荷物を積んだ手押し車が、ゴトゴトと路地に入っていく。
キックボードの子供がスルリとかわす。
ーー
ん?なんで今まで思いつかんかったんやろ......
出来るやん。
家に帰って、早速絵を描き始める。
描き上がると馬車工房へ行き、バルザを呼び出した。
「今、忙しい?」
「いや、今落ち着いてますから」
「ほんならさー」
ニヤつきながら、絵を見せる。
「へへっ。こんなん作りたいんや」
「ほっほー」
「やる?久々に」
ニッと笑って頷くバルザ。
「やりましょ」
「ヒューイ入れたろ。最後になるし」
「そうですな。卒業試験で」
「ハハ。まあヒューイには、ここ、無理やろ」
「あー、これなんなんですか?」
「チェーン」
「?」
「明日な、納屋で打ち合わせな」
「ワシ、ワクワクしてきた」
「そやろ」
タケシがスキップして帰っていく。
「チャーリチャリチャリ♪チャリッチャリー♪」
「??」




