血の通う地図
「アキラ、セルディオから連絡来た?」
「うん。ディオラムにも送ったっす。アルベルクさんからいつでもどうぞって返信ありましたよ」
「あっちの調べは?」
「ポンプ隊情報と照らし合わせても、問題ないと思ったんで、商会の準備部隊行かせてます」
「そっか」
「タケシさん、いよいよですね」
「あぁ。繋げよ。丸うに」
「アキラ、任せっぱなしで悪いな」
「へへっ。こっちはお任せあれ」
「助かる。こっちの執事は軽いけど有能や」
「??」
ディオラム商業領。
アルベルクの執務室には、タケシとグレイス領主セルディオが来ていた。
「タケシ殿、国から通達がありましたぞ。災害復興モデル領とか。一度サラディアにも行かねばなりませんな」とアルベルク。
「私も近いうちに参ります」とセルディオ。
「まあ今日はその話は置いといて」
「置くんですか」
「うん。これ見て」
タケシの広げた紙束は、寝台貴族馬車の絵。
「これは?」
「夜でも寝たままで走らせられる馬車」
アルベルクが身を乗り出す。
「あ。そう言うと噂が......国王陛下のところにあるという.....」
「うん。中こんなんや」
「私も欲しいですなー」
「もう予約いっぱいやから2年先な」
「えぇー」アルベルクががっくりと肩を落とす。
「ほんでこっちが幌タイプ」
更に紙をめくるタケシ。
「これが本命、一般向け寝台幌馬車」
アルベルクが姿勢を正してタケシを見る。
「なるほど、これですな。ハーケンフェルトと手を組んだと」
「お前、手を組むなんて言い方アカンやろ。あそこは運送業や、うちが馬車屋やねんから繋がって当然や」
「確かにそうですが」
タケシがアルベルクの鼻面に指を指す。
「輸送が変わるで。3日のとこが2日になる。お前、これに乗っからんと負けるぞ」
「.......」
「この馬車売り込んでくれ。出入りの商会に声かけて。古い馬車の改造もできる。グレイスでやる準備も出来てるから」
セルディオが顔を上げた。
「それでベルディさんたちが......」
「そうや。セルディー。お前も頑張りどころやで」
「はい」
「ここディオラムとグレイスを繋ぐ」
タケシがもう一枚紙をめくると、そこには地図があった。
「ここが王都、で、ミナセ。サラディア」順に丸印を入れる。
「ディオラム、グレイス、ハーケンフェルト」
丸印を繋いで線を引いていく。
「ほんで今度、うちはここに商会を置く」
もう一つの丸印。そして......線。
「どうや、アルベルク」
「タケシ殿、これは......国内全てが繋がる.....」
タケシが2人の顔を見て、ニヤリと笑う。
「大動脈や」
アルベルクが息をのんだ。
タケシが線を足していく。
「網......ですね.....」
セルディオがゴクリと唾を飲み込んだ。
「タケシ殿。私をハーケンフェルトに紹介して頂きたい」
「ええよ」
「馬車は、まずうちのを改造していただいて」
「グレイスに持っていってな」
「すぐに商人達にも広まります」
「うん。後な、ハーケンフェルトの方にも頼んでるんやけど、ゆくゆくはな、街繋ぐ定期便出して欲しい。人が動くようにな」
「西と東から.......」
「そう。中央にも繋げるようにな」
「なんと.......タケシ殿......あっさり言われますが、それはもう国家事業ですぞ」
「ん?ならカイルにもちょっと金出して貰えばええ」
「国王陛下に?いやーそれはー」
首を振るアルベルク。
「なんでや、カイルやったら乗ってくるぞ」
「そうなんですか?」
ちょっとついていけないセルディオ。
「だってな、国民のためになることやんか」
「......もう......なんか商売の話じゃないです......」
セルディオが机に突っ伏した。
「こうも自信満々で言われるとは.....だがセルディオ殿、こんなこと、誰も考えもしなかった。乗るしかなさそうだ」
タケシがもう一度、ゆっくり地図を見る。
「そうや......道整備してもらお」
「リゥトス、タケシからの手紙だ」
「ん?」
読み始めるリゥトス。
「参ったよ。こんな事まで始めてしまった」
「カイル、これって.......」
「国が強くなる。商人達が動いて、人と金が回る。軍だってそうだろ」
「タケシは多分、この重大さをわかってないだろう。手紙で言うことじゃないぞ」
カイルが肩をすくめる。
「また来るとは書いてあるけどさ。手を貸さないわけには行かない」
「アイツ.....大丈夫なのか?こんなに動いて....」
「ルークの報告によるとね、小さなトラブルは日常茶飯時だってさ。嫌がらせとか、野盗に襲われたりとか」
「あー。偽物騒ぎも全然気にしてないな」
「もうさ、工房の人達なんて、タケシ慣れしてるんだろうね」
「あそこには、タケシとカツミさん、アキラ君。3人いるんだ転移者が。父の時のように1人の力じゃない」
「うん。リョーマの時代よりも進んでたみたいだしね」
「彼らにとっては当たり前なんだろうな」
カイルが手紙を封筒に戻す。
「街道を整備しよう」
「そうだな」
「ついでにさ、タケシ......伯爵にしちゃおう」
「嫌がるぞ」
「いいんだ。嫌がらせだ」




