表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
15/28

優しさの仕組み

城趾周辺の道沿いに、住民達が並んで手を振っている。

街道からゆっくりと馬車が入ってくる。

「国王陛下ー!」「カイル国王ー!」

城址公園前に止まると、歓声が一段と大きくなった。

後部ドアが開けられ、カイルがゆっくりと降りたつ。

手を振ると、子供達は跳びはね、老人達は目元を押さえた。


「ようこそ、サラディアへ」

タケシが歩み寄る。

正装したタケシの後にドレス姿のカツミ。その横のリシェルも今日はドレスだ。

「ゆっくり見せて貰うよ、タケシ」

そう言うと、カイルはリシェルの前へ立つ。

「よ、ようこそいらっしゃいました、国王陛下」

リシェルが裾をつまんで丁寧にお辞儀する。

「リシェル、よく頑張ったね。タケシから聞いているよ」

優しく頭を撫でられ、リシェルが少し顔を上げた。

「カツミさん、久しぶりだね」

「はい、陛下もご健勝で何よりです」

と言いつつ、カツミも一応ドレスをつまんでお辞儀する。

カイルがくるりと住民たちに向き直る。

一瞬にして静まるざわめき。

カイルが声を張った。

「みんな、よく頑張った。サラディアの街は、君たちの努力の成果だ。......今日は私に、その働きを見せてくれ」

住民の歓声が、波のように広がっていった。


城址公園にしつらえたテントの中。堅い緊張感の中に、カイルの軽い笑い声が響く。

「だってタケシ、正装だもん」

「うるさいわ」小さな声で返すタケシ。

「まさかカツミさんまでドレスとは」とリゥトスも笑う。

「うるさい奴がおるんや」

タケシが横目でローデリックを刺すと、2人は顔を見合わせて、また笑った。

「いいじゃない。有能な執事がいて」

「はいはい」

タケシが地図を広げる。

「おほん。本日のルートでございます」

「やめて、普通にして」

「......ほんで今日の順路やけどな」

「うんうん」

「まあとりあえず街中見るか」

「先にのど乾いた」

「もー。ちょっと待ってて。カツミー。飲み物」

後ろで、ローデリックがポカンと立ち尽くしていた。


「まずは......ここ役場」

カイルの横にタケシ。後ろにリゥトス。ローデリックとレオンが続く。

「住民係と街づくり係と子供係かな、今のとこ」

「子供係?」

「あー。おいおいわかるわ」

メインロード沿いには、ずらりと小屋が並んでいる。

コンドウ商会をはじめ、店舗や工房、空き地には露天や屋台が店を開いていた。

キックボードの後ろに籠をつけた子供が、干しキノコを持ってくる。

カートを押して来た親子が、野菜を並べる。

肉屋の前には、干し肉がクルクル回る。

その隣、子供が店番している露天には、干し果物のクルクル。

カイルが足を止めると、店のものたちがヒョイと試食を差し出した。

「タケシー。面白ーい」

「なんや夜店みたいやな.....」

籠工房からは、賑やかな声が外に漏れている。

「あ、あれは?」

作業中の女の横、時々手を止めて何か揺らす。

「あれはベビーカー。赤ん坊寝かすやつ。役所で申請したらレンタルできるんや」

「レンタル?」

「サイズによって月いくらって決めてる」

「へー......」

「隣は食堂や。給食もやってる」

「キュウショク......」

中から子供が袋を抱えて出てきた。キックボードの籠に乗せてピューっと走り出す。

「工事現場とか工房とかに配達してるねん。子供らの小遣い稼ぎやわ」

中に入ると、老人達が静かに食事していた。

「みんな仕事してるやろ。そやからこういうのあったら助かるんや」

カイルが老人に近づいて声をかける。

「おじいちゃん、おいしい?」

「は、はい.......あ、ありがとうございます」

カイルがニッコリと笑うと、老人は何度も頭を下げた。


住宅エリア。小屋と長屋が立ち並ぶ。

「ちゃんとした家は...まだやけどな」

「タケシ、あれ何してるの?」

井戸の横で、女が足踏みしている。

「あれはセンタクキ。足で踏んで回すんや」

カイルが近づいてしげしげと見つめる。

クルッと振り向いた。「タケシ、すごーい」


「あの杭は何?」

「あれは防火水槽作るとこ」

「ボーカスイソー......」

「川から水路作っててな。ところどころで貯めるんや、排水もスライムで浄化してな。火事怖いやろ」

「......そんな事まで考えてるのか」

「更地やん、今なら掘り放題やからな」

「......」カイルはしばらく杭を見つめていた。


一旦メインロードに戻ると、子供が数人役所に入っていく。

「あれな、ローデリックの寺子屋」

「テラコヤ?」

「子供らに、読み書き計算教えてる。ちょこっとやけどな。保育所もあるで。まだやりだしたとこやけど」

「ホイクショ........」




「タケシ、君の街は優しいね」

「そうか?めっちゃ働かしてるで」

「いや、そういうことじゃなくて.......」

タケシは前を向いたまま言う。

「安心して働いてもらうためや。ここはまだ、今からの街やからな」

カイルが小さく頷いた。

「僕ね、今日は知らない言葉ばかりだった。なぁリゥトス」

「そうだな。ちょっと.....すまんな、理解が追いつかん」

「君のいた世界が、進んでいたことはわかってたけれど、仕組みが......驚くことばかりだ」

「そう.....かなぁ」

「あぁ。.......なんて言えばいいんだろう......」

カイルが街の方を見た。

「でも.......今、タケシがここでやっていることは、僕達にもできることばかりだ」

ふっと息をつく。

「もう一日、ゆっくり見せてくれ」

「うん。ええよ。そう言うと、ルークもベビーカーレンタルやりたい言うとったな」

「だろ。僕も詳しく聞きたい」



翌日も、カイルは街を歩き、住民達に声をかける。

タケシには、散々質問攻めをする。後ろでリゥトスが、必死でメモを取っていた。


馬車に乗り込む直前になって、カイルはタケシに告げた。

「タケシ。サラディアを、災害復興モデルとして、全ての領主に通達する。視察見学の対応、お願いするよ」

「えぇー」

「逃げられないよ。国王命令だ」

「うぐぐ.......」

「儲かるよ」

「......ほんま?」

「うん、ほんと」

「承知いたしました」




「ローデリック、さっきの話、頼むわな」

「タケシ殿。貴族対応は領主の務めでしょう」

「苦手や」

「国王陛下と、あれで?」

「だって......」

「紹介冊子位は作っておきましょう。宿泊施設も必要ですな。まぁここまでは私の仕事ですから」

「レオンに.....」

「タケシ殿。儲かるんですよ」

「......わかったわ!」

「よろしい」



一方馬車の中では.......

「リゥトス、どう思う?」

「そうだな......タケシにここまで自治の力があったとはな」

「僕らは上から下。力で全てを動かしてきた。タケシは逆だ。弱いところに手を差し伸べて、結果みんなが強くなる。弱さを弱みにしないんだ」

「あぁ、金があるだけではああはならん。回す仕組み...だな」

「うん。使い所が全く違うんだよ。反省したよ.......タケシが王様やれば、もっと良くなるかも」

「おいおい」

「ジョークだよ。でも......僕はそれくらいショックだったー!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ