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繋がる道

国王カイルの私室。タケシは幌型寝台馬車の納品に来ていた。

「これでサラディア視察に行けるね、リゥトス」

「そうだな、タケシ、予定を教えてくれ」

タケシは懐からスケジュール帳を出して、開いて見せる。

「.......なんかすごいね、これ」

「うん。マジ落ち着かん」

ページをめくるカイルの手が止まる。

「でもオルディスと組むのは正解だな」

「馬も替えた。御者2人つけて、俺荷台で寝てる」

「まぁそれも仕方ないか、これだけ移動があれば」

タケシが日程を指でなぞる。

「そやから、この辺かこの辺で」

「国王に日程指定できるのって君ぐらいだよ」

「しゃあないやん」

ククッとカイルが笑った。

「で、貴族達は行った?」

「あぁ。おもろかったで。変に張り合うんやな」

「ハハハ。そうだろうね」

「おかげさまで2年は安泰ですわ」

「まだ知らない貴族もいっぱいいるよ」

「こっからはボチボチでええわ」

リゥトスが咳払いした。

「で、軍の分だが」

「旧馬車に折り畳みベッドやろ。こっちの工房でできるようにした」

「早いな」

「アルナの方は商人向けや。もうちょいええやつ」

カイルがパタンと手帳を閉じる。

「なんかすごいね」

タケシがちょっと肩をすくめた。

「カイル。3日かかったとこが2日になる。人も物も金も早う動くようになる」

カイルの目が細く光る。

「あぁ。.......僕、君にもう一つ位領地あげたいよ」

「いらん」ーー即答だった。



その後、タケシはグレイス領へ向かった。

コンドウ商会グレイス支店。

支店長のビアントと、工房長ベルディが出迎える。

「でな。こっちでも馬車、作れるやろ。ベルディおるし、大丈夫やんな」

「はい。問題ありません。職人も増えておりますし」

タケシは設計図を広げた。

「幌型寝台馬車。一般向けや。ここで作りたい。西に流す分やな」

ベルディが身を乗り出す。

「寝台付き……走りながら休める……」

紙の端を指で押さえ、さらに目を細めた。

「あ、これは?」

「ライトや。夜道でも走れるようにした」

にやりと口角が上がる。

「……面白いですね」

「ベッドや備品、金物はミナセから入れる。基本は旧馬車の改造やけど、新造も出てくると思うで」

「西……となると」

「ディオラムや」

タケシの顔がふっと緩んだ。

「こことディオラム、繋ぐぞ。ええやろ? ビアント」

ビアントは少しだけ考えて、頷く。

「ええですね。あそこは商業都市です。人が動けば、勝手に物も金も動きます」

「せやろ。定期便も走らせたいんや。行き来が当たり前になるくらいに」

「サラディアは、どうですか?」

「はは。頑張っとるで」

タケシは軽く肩をすくめる。

「そのライトもサラディアや。他にも色々できとる。こっちにも回すからな」

ベルディが図面を叩く。

「……これ、すぐ取りかかれます」

「頼むわ。西は任せたで」

少し間を置いて、ビアントが笑う。

「タケシさん、子爵になって、余計忙しなったんと違います?」

「あー……まぁな」

頭をかきながら、タケシは天井を見上げた。

「貴族の繋がりも増えたしな。でも――」

視線を戻す。

「もう一息や」



ミナセに戻ったタケシ。

母屋の座敷で寝転んで、手帳を眺めている。

「ここでカイルが来るから.......やっぱディオラムはその後やなぁ。この辺かな......手紙....」

「タケシー。そろそろやで」

「おっと。ガッポリタイムや......」パタンと手帳を閉じた。



「馬車の方は、今のところ2年程先になりますが、よろしいでしょうか」

「はい。結構です」

ハーケンフェルト公爵から紹介を受けたという男は、若い貴族だった。飾りの少ない一番安い馬車を選んでいる。

「それで......」

「はい」

「コンドウ殿、我が領に、商会を置いて頂けませんか」

うわっ。直球や。

けどオルディス様が紹介ってことは、なんかある........

「急にそう仰られても、ね」

タケシが笑ってみせる。

「我が領は.....」

折り畳まれた地図を広げる。

「ここです」

何!ここかー。

そこは、タケシがまだ手つかずのエリア。

ーーここ取ったら......出来上がる?

ふぅと吐息をつき、まだあどけなさの残る男の目を見た。

あ、どっかで見た目......そうや、セルディオや。アイツがうちに駆け込んできた時の、あの目と同じ。希望を掴む目や......

「すぐにお返事は出来ません。こちらとしては......色々と調べさせて頂きますが。よろしいですか」

「はい。お願いします」


その後、必死で固辞する男を、ルークが無理やり屋敷に連れ帰った。


「タケシ、すごくいい子だったよ。緊張しきってたけど」

「そっか」

「親から受け継いだばかりだって。小さな領だけどね、内紛があって一時期荒れたんだ。力がいるんだよ、領主にも」

「そうやろな。なんか必死やったわ。でも直球でくるヤツ、俺嫌いやない」

「ハハ。前向き検討だね」

「そうやな」



「ターケーシー」

「ん?」

「へっへー。ひさびさの試食タイムでーっす」

「お。何作ったんや、今度は」

「ジャジャーン♪」

カツミの手には2つの皿。

「ん、春巻きと生春巻き?」

「うん。ピュアフローシートやからスライム巻き」

「へー」

パクリと生からかぶりつくタケシ。

「お。ええやん、これロックバードか。ハーブが効いとる」

「お野菜タップリでええやろ」

「手で持てるサラダや」モグモグ。

「揚げたんも食べて」

「こっちは.......中カレーやん。手で食えるカレーや」

「まあ中身は何でもええんやけど、給食にも屋台にも行けるやろ」

「うん。これは屋台ウケると思うわ」

「シートの厚みに苦労したけど、養殖してるとこ増えたから、色々やらんとな」

「そやなぁ。俺らの動いとるとこみんなやってるもんな」

「やっぱシートで売るんが一番やから。保存効くし」

「生やと限界あるもんな」

「うん。あとパウダー使ってタピオカドリンク試作中やねん」

「うわー。流行るぞ、それ」

「ツブツブ加工な。ちょいハーブエキスで風味つけて」

「ええなー。女喜ぶ奴や」

「知ってる?タケシ。食べもんって女性押さえたら勝ち」

「う......なるほど......」







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