静かなまなざし
はぁ.....めんどくさい。けど、我慢我慢.......ガッポガッポや......
貴族達とのお茶会。タケシにとっては最もお仲間になりたくないものだ。豪華な茶菓子と、高級な茶器には香りの良い茶。ずらりと並んで座る円卓で、タケシは下座でリゥトスの横に座った。
ーーうっほー。カモやー。いや上客や上客♪
「コンドウ殿、素晴らしい馬車ですな」
「あの馬車ならば、夜間の移動も出来るということか.......」
「我が家にもぜひ1台作っていただきたい」
タケシは鞄を出すと、なかの紙束を出してカイルの方へ。
「これはデザイン画です。ご用途に対応して一つ一つ手作りいたしますので。どうぞご覧ください」
カイルが一枚一枚めくりながら、横の貴族に手渡しする。
「へー。すごいじゃないか。好きな物を選べるんだね」
「はい。お好みに合わせてお作りします」
貴族達が回し見ながら、あれこれ好き勝手に話し始めた。
「私はこの形がいい」
「家紋が入るのか....こっちの屋根飾りが......」
「子爵。これは楽なだけではない。時間が変わる」
「移動に縛られぬな.....」
「はい。そうでございます」
タケシがニッコリ笑う。
「私は長距離が多いゆえ、是非に頂きたい」
「コンドウ殿、うちは滞在用にしたいですな」
ーー
「この馬車はミナセで全て受注生産いたします。なにぶん手の込んだものですので、1台づつ仕上げます。順にお作りしますが、少々お時間を頂くことになりましょう」
「そうか.....順番にか」
「いや、待つ価値のある馬車だ」
「数を作らんと言うことは、それだけ価値も上がるということよのう」
タケシがゆっくりと頷く。
「ご注文はミナセで承ります。ゆっくりとお考えいただけるように準備いたしておりますので、是非ミナセにお越しになってください。商会の商品なども一緒にご覧に頂けますので......きっと、退屈はさせません」
「そ、そうだな。コンドウ商会の商品も一度見ておきたい」
「個別取引は出来るのか」
「そこはご相談の上で。サラディアの商品も展示してございます」
「おぉ、サラディアはもうそこまで復興しておるのか」
「まだまだこれからですが、皆頑張っております」
「タケシ、これは?」カイルが絵を指差した。
「こちらは従者用の幌タイプで、ソファーを増やせば4人以上、折り畳み補助ベッドをつければ6人程度はお休みいただけます」
「ふむ。余はこれにするぞ。先に押さえておこう」
カイルが絵をトントンと叩いた。
「従者にも必要だからな。これで地方視察の日程が短縮できる」
「さようでございます」
「うん。じゃあコンドウ子爵、細かい仕様を詰めよう」
と言うと、カイルがコトリとカップを置いて、席を立つ。
タケシは絵を集め、カイルの後に従った。
国王カイルの私室。
リゥトスの笑い声がやけに軽く響いている。
「笑うな」
「いやー。よくやった、タケシ」
「ほんま疲れた」
カイルが微笑む。
「いい反応だったね。あれならすぐに注文してくるよ」
「あぁ。で、幌どないする?」
「あー。任せる。僕の好みも分かってるだろうし」
「じゃあ程々頂くとしよう」
「いいよ。で、サラディアはどうだい?」
「まだ更地の方が多いし、人も半分も戻ってないけどな」
「タケシもだいぶ私財つぎ込んだろ。無理させたね」
「あぁ。これで回収させて貰う」
「災害復興にあれ以上国費は回せないんだ。悪いね」
「いや、瓦礫整理助かった。あれが一番助かるんや。ほんま酷かったから」
「きっとまた面白いもの作ってるんだろうなー」
「あー。センタクキとかベビーカーとか。まあお前が使うもんやないけどな」
「へー。じゃあさ、リゥトス。幌のが出来たら一緒に視察に行こう。復興現場の視察」
「あぁ、いいんじゃないか」
「おい、まだ宿舎も俺の家も無いぞ」
「馬車があれば平気だろ。そういう物を作ったんだろ。な、リゥトス」
「そうだな。馬より楽でいい」
「.......」
「タケシ、領民は喜ぶよ、きっと」
「そうか......そやな、うん。来てくれ。みんなで歓迎するわ」
「領主だね」
「ああ」
サラディアを思い出す。
更地に建つ小屋。まだ新しい木の匂い。
そこには、確かな暮らしが回り始めている。
「よおけ買うてって」
ミナセに帰ると早速問い合わせの使者が来た。
タケシのミナセ滞在に合わせて、順に面会スケジュールを組む。
そろそろサラディアに戻ろうか......と思っていると、1人の貴族が現れた。
ーーアポなしで突撃かよ.......
馬車から降り立ったのは初老の紳士。
「先日はどうも。コンドウ子爵」
ん?この男、確かあんまり反応なかったよな......
「えっと.......ハーケンフェルト公爵。ようこそいらっしゃいました」
「ハッハ。覚えていてくださいましたか。はい。オルディス=ハーケンフェルトです。突然伺いまして、失礼いたします」
「ほっほー。変わったお宅ですな」
「あ。むさ苦しいとこですみません。カツミー。お茶入れてー」
「ほっほ。お構いなく」
「で、馬車のご注文で?」
「まぁそれもですが、まずはきちんとお会いしておきたかったものでね」
タケシを見る目には老獪な笑みがあった。
「どうぞ」
カツミがハーブティーと干し果物を出す。
「妻のカツミです。こちらハーケンフェルト公爵」
「始めまして、カツミと申します」
「ほぉ。貴方があのカレーやノマドをお作りになられた。そうですか」
頷くオルディス。
「いやぁ、久しぶりにアルネシアに参りましてな、コンドウ子爵にお会いできるとは思ってもおりませんでした。貴方がたのことは、噂で耳にしておりました」
「はぁ」
「この度は災害復興にもご尽力されたそうですな。どんな方なのか興味がわきまして」
お茶を一口飲んだ。
「是非お見せ頂きたいのです。商品を」
タケシに笑いかける。
「このお茶、美味しいですな」
「それはミナセ産のハーブティーです。干し果物はサラディア産のもので」
「ほう。これは旨い。柔らかくて......何か干し方に秘密がありそうですな」
「ハハハ......じゃあ商会にご案内しましょう。」
そこに......
「タケシー。お客さん?」と入ってきたのはルーク。
「あ。オル爺じゃん。久しぶりだねー」
「おぉ、ルーク殿下。お久しゅうございます」
「どうしたの?ふふーん。商談?」
「いえいえ、まずは見せて頂こうかと」
「今から商会で見てもらうんや」
「そっかー。じゃあ終わったらうちに寄りなよ。ここんちの美味しいものは、全部うちにもあるんだよー」
「そうですか、では後ほど参ります」
「じゃあ後でねー」
「コンドウ殿。ルーク殿下はここの領主でしたな」
「はい」
「まるで家族のようですな」
「ハハハ......」
商会でじっくりと商品の説明を受け、寝台馬車の注文をしたオルディスは、またコンドウ宅に戻ってきた。
「馬車の方は急ぎませんがね」
「はぁ」
「まあ使いもなしに来たのでね、3番目位で結構ですよ」
「承知いたしました」
「コンドウ殿のお作りになるものは、何というか.......庶民の生活が豊かになるものばかりですな」
「あー。そうですね、取り立てて変わったものはありませんが」
「いえ。目の付け所が......その上魔道具を全くお使いにならない」
「あー。魔法苦手なもんで」
「誰でも作れそうなのに、誰も気づかなかった物をカタチにされる。これはなかなかできることではありません」
オルディスがニヤッと笑う。
「陛下が肩入れされるはずですわ。ハッハ」
「?」
「コンドウ殿、私今日はこの辺で失礼致しますが、また良い話を致しましょう」
「タケシ、帰った?」
「ああ、ルークのとこに行った」
「緊張したー。公爵様やで」
「まじな。王族つながりやもんな」
「何か応接室いるかな」
「いや、今度からルークんとこの迎賓館借りよ」
「あー。それがええかも」
「ほんで後はルークに丸投げや」




