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⚔️伝説の剣。福引きしたら、ドラゴンスレイヤーだったらしい……。  作者: 黒武者
第7章:選定の儀

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第97話 氷雷激突 続

 雷光と氷結が激しくぶつかり合う。


 ドガァァァァン!!


 轟音とともに衝撃波が闘技場を駆け抜けた。


 砂煙が舞い上がり、観客席から悲鳴にも似たどよめきが起こる。


 エクレールは軽やかに後方へ飛び退く。


 ダーレンも数歩だけ下がった。


 だが――。


 どちらの呼吸も乱れていない。


「……嘘でしょ」


 リフルが思わず呟く。


「今ので平気なの?」


 ルシアも言葉を失っていた。


 先ほどから続く激突は、もはや人の戦いには見えない。


 雷鳴。


 氷結。


 常人なら一撃で戦闘不能になるような攻撃を、二人は当然のように受け流していた。


 闘技場中央。


 エクレールは心から楽しそうに笑っている。


(強い)


 久しく味わっていなかった高揚感。


 間違いない。


 目の前の男は本物だ。


 だからこそ面白い。


 一方のダーレンは、最初から表情一つ変えない。


 静かな湖面のような瞳のまま、淡々と口を開いた。


「……いつまで続ける」


 低く響く声。


 エクレールが眉を上げる。


「ん?」


「こちらは属性的に分が悪い」


 言い訳ではない。


 ただ事実を述べただけだった。


「決着までは望んでいないのだろう」


 観客席がざわつく。


 ストーリアが静かに頷いた。


「確かに……」


「ダーレンさんからすれば、目的は十分果たしているわね」


 エルドも続ける。


「実力を測るという意味では、双方とも十分でしょうな」


 エクレールは数秒だけ黙り込み、やがて小さく笑った。


「そうね」


 肩へ剣を担ぐ。


 だが、その笑みは消えない。


 むしろ、どこか悪戯っぽく深まっていく。


「でも――」


 バチッ。


 青白い雷光が刃を走る。


「貴方、まだ隠してるでしょう?」


 静寂。


 会場中が息を呑んだ。


 エクレールは細めた瞳でダーレンを見据える。


「少しくらい本気を見せてくれたら、終わってあげてもいいわよ?」


 あからさまな挑発だった。


「煽ってる……」


 ルシアが苦笑する。


「煽ってるわねぇ」


 リフルはどこか嬉しそうだ。


 ロゼリアだけは黙ったまま二人を見つめている。


 ダーレンは何も答えない。


 沈黙が流れる。


 やがて、小さく息を吐いた。


「……本気、か」


 その瞬間だった。


 ピシッ――。


 足元の石畳に一本の氷の筋が走る。


 誰かが息を呑んだ。


 ピシッ。


 ピシシッ。


 次々と氷の亀裂が広がっていく。


 まるで巨大な氷の花が咲くように。


 最前列の観客が思わず後ずさる。


 寒い。


 いや、違う。


 熱そのものが奪われていく。


 生命まで凍りつくような感覚だった。


「……っ!」


 ルシアは無意識にスレイヤーへ手を添える。


 本能が警鐘を鳴らしていた。


 闘技場中央。


 ダーレンは動いていない。


 ただ立っているだけ。


 それだけで空気そのものが変質していく。


 漆黒の革手袋。


 その隙間から、淡い蒼い光が静かに漏れていた。


 絶対零度。


 十八歳の時に手にした代償と力。


 その片鱗。


 ほんの僅かに解放しただけで、会場全体が凍りつこうとしていた。


「へぇ……」


 エクレールが笑う。


 今度は明らかに嬉しそうだった。


「それよ」


 バチィッ!!


 雷光が弾ける。


「見たかったのは」


 その時だった。


「そこまでだ」


 重く響く声。


 ジークレッドだった。


 一瞬で会場の空気が止まる。


 エクレールが不満そうに振り返る。


「えぇ?」


 ジークレッドは真顔のまま答えた。


「これ以上やれば、試験場が使い物にならん」


 全員の視線が床へ向く。


 石畳の半分近くが白く凍り始めていた。


 数秒の沈黙。


 そして。


「あははっ!」


 エクレールが堪えきれず吹き出した。


「確かにね!」


 ダーレンも何も言わず、静かに剣を納める。


 途端に冷気は薄れ、凍結も止まった。


 だが。


 誰もが理解していた。


 今のは決着ではない。


 勝負ですらない。


 互いの力量を、ほんの少し見せ合っただけ。


 それだけで、この有様だった。


「……化け物だな」


 ルシアがぽつりと呟く。


 ロゼリアも静かに頷いた。


 否定できない。


 あの二人は間違いなく、この国の頂点に立つ剣士だった。


「合格でいいでしょ?」


 エクレールが振り返る。


 ジークレッドは即答した。


「ああ」


 短く。


 だが力強く。


「文句なしだ」


 闘技場が大きくどよめく。


 二人目の合格者。


 ダーレン・アイスィ・クレイル。


 しかし当の本人は、その宣言にも興味を示さなかった。


 静かにキラーを見つめる。


(やはり違うな)


 冷気と殺意。


 絶対零度と竜殺し。


 似ているようで、本質はまるで違う。


 これは、自分が求める力ではない。


 そして。


 この剣が求めている者も、自分ではない。


 そんな確信だけが残っていた。


 ふと、エクレールへ視線を向ける。


 エクレールも笑顔のまま見返した。


(……なるほど)


 短く納得したように頷く。


「また機会があったらやりましょうね」


 エクレールが気軽に声をかける。


 ダーレンは一瞬だけ立ち止まり、何かを確かめるように彼女を見る。


「ああ。いいだろう」


「約束よ」


 そのやり取りを見ていたジークレッドが、呆れたように口を開いた。


「どうした、エクレール。お前らしくない」


「別に」


 エクレールは肩をすくめる。


「ちょっと気に入っただけよ」


 そう言って、いつものように笑った。

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