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⚔️伝説の剣。福引きしたら、ドラゴンスレイヤーだったらしい……。  作者: 黒武者
第7章:選定の儀

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第93話 剛刃、あるいは届こうとする者

 片膝をつきながらも、エレノアはまだ剣を離していなかった。


 呼吸は荒い。


 腕は痺れ、指先の感覚も薄い。


 それでも――立つ。


 観客席から、どよめき混じりの歓声が上がる。


「すげぇ……」


「まだ戦う気か……!」


 ジークレッドは静かに大剣を構え直した。


「……まだ立てるか」


 低い声。


 試すような声音。


 エレノアはゆっくり息を吸った。


「……はい」


 立ち上がる。


 膝が震える。


 キラーから流れ込んでくる感覚は、ますます強くなっていた。


 重い。


 熱い。


 まるで、剣そのものが鼓動しているようだった。


(……飲まれるな)


 自分に言い聞かせる。


 その時だった。


 ふと。


 視線の片隅。


 観客席ではない。


 試験場の端。


 そこに立つ、黒装束の女。


 東洋とも西洋ともつかない衣装。


 半分だけ顔を隠す仮面。


 その女と――目が合った。


「……!」


 女は静かに微笑んでいた。


 まるで。


 ――見ている。


 値踏みするように。


 その一瞬。


 ほんの僅かに、エレノアの意識が逸れる。


 そして。


 その隙を、ジークレッドは見逃さなかった。


 ゴォォン!!


 重い斬撃。


 空気ごと叩き潰すような一撃が、真正面からキラーへ激突する。


「うっ……!!」


 衝撃。


 骨が軋む。


 足元が沈む。


 だが――


 その瞬間だった。


 ドクン。


 キラーが脈打つ。


 黒い刀身から、熱が駆け上がる。


(……っ!?)


 身体が軽い。


 視界が鋭くなる。


 恐怖が消える。


 代わりに、高揚が湧き上がる。


 アドレナリン。


 闘争本能。


 もっと前へ行けと、剣が囁いてくる。


「――ぁぁッ!!」


 エレノアが踏み込む。


 さっきまでより速い。


 観客席がざわめく。


「まだ速くなるのか!?」


 一直線。


 真正面から、ジークレッドへ飛び込む。


 キィィィン!!


 鋭い斬撃。


 ジークレッドが受け流す。


 だが――


 ギッ――。


 その切っ先が、わずかに鎧を掠めた。


 火花が散る。


 黒銀の甲冑に、細い傷が走った。


 一瞬。


 空気が止まる。


 そして。


 ジークレッドが初めて口元を緩めた。


「……ほぉ」


 低く。


 確かに感心した声音。


「やるな」


 次の瞬間。


 ゴォン!!


 豪剣が振り抜かれる。


 圧倒的な力。


 エレノアのキラーごと、弾き飛ばした。


「きゃっ――!」


 地面を滑る。


 砂煙が舞う。


 それでも、エレノアは剣を離さなかった。


 だが――。


「そこまで!!」


 鋭い声が響く。


 エクレールだった。


 雷を纏うような気配のまま、中央へ歩み出る。


「はい終了ー!」


 軽く手を振る。


 エレノアがエクレールとジークレッドを交互に見る。


「ハァハァ」


 手の中にあるキラーをゆっくりと見つめる。


「どうだった? ジーク」


 観客席が静まり返る。


 ジークレッドは、ゆっくり自分の鎧へ視線を落とした。


 そして。


 傷の入った鎧の一部を指で軽く叩く。


「……これを見ろ」


 観客席がざわつく。


 鎧に、確かに残る一筋の斬痕。


「合格だ」


 その瞬間。


 闘技場が揺れた。


 歓声。


 拍手。


 どよめき。


 エレノアは呆然としたまま呼吸を整えていた。


 そして、少し遅れて。


 ようやく実感したように、小さく笑った。


 キラーを握る手は、まだ震えていた。

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