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⚔️伝説の剣。福引きしたら、ドラゴンスレイヤーだったらしい……。  作者: 黒武者
第7章:選定の儀

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第83話 重なる連携

 街道には、朝の風が吹いていた。


 王都へ続く石畳の道を、六人は並んで歩いている。


 グレースランドを発ってから半日。

 ストーリアが加わってから、初めて本格的に連携を試す旅路だった。


 空は晴れている。

 だが、旅人の数は明らかに少ない。


「王都の布告、かなり広がってるみたいね」


 前を歩きながら、リフルが言う。


「まあ、“キラー所有者決定戦”なんて聞けばな」


 ルシアが肩をすくめた。


「腕自慢も来るだろうし、物好きも集まるだろ」


「それだけなら、まだいいのだけれど」


 ロゼリアは少し険しい顔をする。


 エルドも静かに頷いた。


「ドラゴン討伐を名目にすれば、“力”に飢えた者も動きますぞ」


「……嫌な言い方ね」


 ストーリアが眉をひそめる。


「ですが事実です」


 エルドの声は落ち着いていた。


「キラーが本当にドラゴンへ通じるなら、“手にしたい”と思う者は必ず現れる」


 空気が、少しだけ重くなる。


 その時だった。


 ピタリ、と。


 ロゼリアの足が止まる。


「……来るわ」


 風が止む。


 森のざわめき。

 鳥の羽音。


 その奥から。


 低い唸り声が響いた。


 ガサガサガサッ!!


 木々が大きく揺れる。


 次の瞬間。


 ドォン!!


 巨大な影が、街道へ飛び出した。


「っ!?」


 地面が揺れる。

 土煙が舞い上がる。


 その奥にいたのは――


 四足。

 分厚い鱗。

 長い尾。

 そして、裂けるように開いた牙だらけの口。


「リザードドラゴン……!」


 エルドが目を見開く。


 通常種より、一回り大きい。

 しかも、その全身には無数の傷痕が走っていた。


 古い斬撃。

 焼け焦げた鱗。

 折れた角。


 何度も戦場を潜り抜けてきた個体。


 ただの魔物ではない。


「グルルルルル……!!」


 唸り声だけで、空気が震える。


「リールーさん! 岩陰へ!」


 ロゼリアが即座に叫ぶ。


「は、はいっ!」


 リールーが慌てて街道脇へ駆け込む。

 大岩の裏へ身を隠した。


「なんでこんなのが街道近くに……!」


 リフルが距離を取る。


 その瞬間。


 ルシアの手の中で。


 ドクン。


 スレイヤーが脈打った。


(……またか)


 前より強い。


 いや、それだけじゃない。


 熱い。


 右腕の奥が、じわじわと熱を帯びていく。


「ルシア!」


 ロゼリアの声。


「来るわ!」


 リザードドラゴンが地を蹴った。


 巨体とは思えない速度。

 真っ直ぐ突っ込んでくる。


「ヴァニシングウォール!」


 エルドが即座に詠唱する。


 空気が歪み、透明な障壁が展開された。


 ドガァァン!!


 衝撃。


 障壁越しに、大気が震える。


 周囲の木々が大きくしなった。


「くっ……!」


 エルドが歯を食いしばる。


「重いですな……!」


 だが、その隙を待っていたように。


(……まずは電撃で動きを止める!)


 ストーリアが矢を放つ。


「ライトニング・ニードル!」


 蒼白い魔力の矢が一直線に走る。


 リザードドラゴンの目元を掠めた瞬間――


 バチィッ!!


 青白い電流が弾けた。


「ギャアアッ!!」


 巨体がわずかによろめく。


「今よ!」


 ロゼリアが踏み込む。


 銀閃。


 高速剣。


 幾重もの斬撃が鱗へ叩き込まれる。


 ギギギギィン!!


 火花が散る。


 だが浅い。


「鱗が厚い……!」


 その横を、リフルが駆け抜けた。


「これでも喰らいなさい!」


 蹴り。

 手刀。

 膝。


 嵐のような連撃が脇腹へ炸裂する。


 ガガガガガッ!!


 だが――


「っ、硬っ……!」


 鱗が攻撃を弾く。


 リザードドラゴンが咆哮した。


 口内が赤く染まる。


「ブレス来る! 避けて!」


 ストーリアが叫ぶ。


 その瞬間。


 ルシアの身体が、わずかによろめいた。


「……くっ」


「ルシア! 危ない!」


 ロゼリアが叫ぶ。


 だが次の瞬間。


 ルシアは、前へ出ていた。


「みんな下がって!!」


 スレイヤーを振るう。


 黒い刀身が熱を裂いた。


 ゴォォォォッ!!


 火炎が散る。


 完全には防げない。


 だが、軌道を逸らした。


 爆ぜた炎が森を焼き、熱風が吹き抜ける。


 その中心で。


 ルシアだけが立っていた。


(……見える)


 呼吸。


 筋肉の動き。


 重心。


 次に踏み込む位置まで。


 全部。


(――そこだ)


 地を蹴る。


 速い。


 自分でも分かるほどに。


「ルシア!?」


 ロゼリアが目を見開く。


(今の動きは……何?)


 一瞬で懐へ潜り込む。


 リザードドラゴンが尾を振るう。


 だが。


 “遅い”。


 身体が勝手に避ける。


(今なら――斬れる)


 スレイヤーを振り抜く。


 ズバァッ!!


 鱗が裂けた。


 深い。


 今までとは違う。


「グギャアアアアア!!」


 悲鳴。


 血飛沫。


 その瞬間。


 ドクン。


 剣のコアが脈打つ。


 黒い刀身に、赤い筋が一瞬だけ走った。


「……っ!?」


 視界が揺れる。


 頭の奥で、“何か”が吠えた。


 ――殺せ。


 低い声。


 獣ではない。


 もっと巨大な、何か。


「……ぁ」


 息が漏れる。


 次の瞬間。


 ルシアの姿が消えた。

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