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⚔️伝説の剣。福引きしたら、ドラゴンスレイヤーだったらしい……。  作者: 黒武者
第7章:選定の儀

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第80話 メルディナの使者

「……やってくれましたな、メルディナは」


 エルドが、苦笑混じりに呟く。


「完全に“公開儀式”へ持っていくつもりですな」


「国が責任を持つ、ってことか」


 ルシアが腕を組む。


「それとも――責任を分散させるためかしら」


 ロゼリアが静かに言った。


「両方ね」


 ストーリアは、あっさり肯定する。


「誰が選ばれても、“国が選んだ”じゃなく、“剣が選んだ”って形にできる」


「……便利な言い方ね」


 リフルが顔をしかめる。


「でも、事実でもあるわ」


 ストーリアは真顔に戻った。


「今回ばかりは、本当に“人間が決める話じゃない”」


 沈黙。


 誰も、軽々しく言葉を返せなかった。


 その時だった。


 ストーリアが、意を決したように口を開く。


「……ねえ、ロゼリア」


 真っ直ぐな視線。


 逃げ場を与えない目だった。


「王から、直接お願いされてるの」


「推薦枠として、出てほしいって」


 空気が変わる。


「……推薦?」


 ロゼリアが、わずかに眉を寄せた。


「ええ」


 ストーリアは頷く。


「形式上は“参加者の一人”」


 一拍置き。


「でも最初から、“候補”として見られてる」


「……私が?」


 ロゼリアは目を見開き、ストーリアとリールーを交互に見る。


 だが、理解は早かった。


「つまり、“外部の正当性”ってことね」


「そう」


 ストーリアは迷わず答える。


「あなたは唯一、“キラー”を扱った」


「しかも、生きて戻った」


 リフルが思わず身を乗り出す。


「それって……ほぼ決まりじゃないの?」


「違いますな」


 エルドが即座に否定した。


 全員の視線が集まる。


「むしろ逆です」


「一度“触れている”からこそ、次は壊れる可能性が高い」


 空気が、冷えた。


 ロゼリアは、ゆっくり目を閉じる。


「なるほど……」


「だから二人が、わざわざ知らせに来てくれたのね」


「まぁ、そうなんだけど」


 ストーリアが肩をすくめる。


「まだ確定じゃないわ」


「それと、もう一つ重大な話があってね」


「え!? なになに!?」


 リフルがぱっと食いつく。


「気になるわね! ねぇ、ルシアも気になるでしょ?」


「そりゃ気になるな」


 ルシアも頷いた。


 その時だった。


 階下から、再びざわめきが広がる。


 ――ゴツ、ゴツ、ゴツ、ゴツ。


 誰かが、階段を上がってくる。


 ゆっくりと。


 だが、一歩ごとに重みを感じさせる足音。


 やがて。


 二階ラウンジへ、一人の男が姿を現した。


 整えられた装束。


 胸元には、メルディナ王都の紋章。


 その瞬間、周囲の空気がざわつく。


「……王都の使いか?」


 誰かが小さく呟いた。


 男は店内を見渡し。


 静かに、しかしよく通る声で告げた。


「――ここに、ロゼリア・ウォーハート殿はおられるか!」


 重厚な声が、ラウンジ全体に響く。


 一瞬。


 空気が止まった。


 視線が、一斉に動く。


「お姉さま!? 呼ばれてるわ!」


 リフルが、ぱっとロゼリアを見る。


「……ロゼリアだって?」


 ルシアも目を瞬かせる。


「ロゼリア、と聞こえましたな」


 エルドが静かに繰り返した。


 周囲の客たちも、ざわめき始める。


「ウォーハートって……」


「まさか、あの?」


「ドラゴン戦の……?」


 無数の視線が集まる中。


 ロゼリアは静かに立ち上がった。


 そして、ゆっくり振り返る。


「……私が、ロゼリアだけど」


 静かな声。


 だが、その瞬間。


 場の空気が完全に変わった。


 男は、恭しく一礼する。


「メルディナ王都よりの使者です」


 そして、一通の書簡を差し出した。


「王命により、貴殿を王都メルディナへ召集する」


「対象案件――“キラー選定”」


 リフルが、ぱっと顔を上げる。


「やっぱり、さっきの話ね!」


 ルシアも思わずロゼリアを見る。


 ロゼリアは無言で書簡を受け取り、封を切った。


 視線が走る。


 真剣な表情。


「……正式ね」


 短く呟く。


 内容は簡潔だった。


 ・指定日時までに王都へ出頭

 ・キラー選定候補者として参加

 ・王都推薦枠として招聘


「推薦枠……」


 エルドが小さく繰り返す。


 つまり。


 “やはり最初から候補として見られている”。


 リフルが、にやりと笑った。


「すごいわ、お姉さま!」


 だが。


 ロゼリアは、笑わなかった。


(……私が?)


 理由は分かる。


 “キラーを使ったから”。


 ただ、それだけ。


 だが。


(それだけで、選ばれるの?)


 胸の奥に、重い感覚が残る。


 使者は静かに頭を下げた。


「返答は、三日後正午までに」


「……分かったわ」


 男はそれ以上何も言わず、静かに階段を降りていった。


 残されたのは、ざわめきだけ。


 さっきまで、どこか遠い場所の話だったもの。


 それが、一気に現実へと変わっていた。


「お姉さま、どうするの?」


 リフルが、不安と期待の混じった声で尋ねる。


 ロゼリアは、すぐには答えなかった。


 窓の外を見る。


 遠く。


 王都の方角。


「……少し、考えさせて」


「とても、すぐには決められないわ」


 その声は、いつになく小さかった。


「……だよな」


 ルシアも、それ以上は言えない。


 ストーリアも。


 リールーも。


 ただ静かに、ロゼリアを見守るしかなかった。


 ――“選ばれる”ということは。


 同時に、“壊れる可能性”を受け入れることでもあるのだから。


その書簡だけが静かに主張している。

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