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⚔️伝説の剣。福引きしたら、ドラゴンスレイヤーだったらしい……。  作者: 黒武者
第7章:選定の儀

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第79話 召集、呼ばれる者たち

 穏やかな朝だった。


 グレースランドの空は、何事もなかったかのように澄み渡っている。


 市場には人が戻り、焼きたてのパンの香りが風に混じる。通りでは子どもたちが笑いながら駆け回り、先日までドラゴンが暴れていたとは、とても思えない景色が広がっていた。


「……平和だな」


 宿屋二階のラウンジ。


 名物料理が人気らしく、朝からテーブルはほとんど埋まっている。


 窓の外を眺めながら、ルシアがぽつりと呟いた。


 その横で、エルドが静かに返す。


「“見えている範囲”では、ですな」


 テーブルには食欲をそそる朝食が並んでいた。


 だが、誰もあまり手をつけていない。


 先日の戦いが、まだ頭から離れなかった。


「結局、あのドラゴンどうなったのよ」


 リフルがパンを指先でつつきながら言う。


「情報がなさすぎるわね」


 ロゼリアも静かに頷いた。


「王都が動いてるはずだけど……」


 その時だった。


 階段を上がってくる二人の女性の姿に、ロゼリアが目を見開く。


 鮮やかな真紅の髪。


 肩に背負った個性的な弓。


 そして、その隣には白を基調とした衣装に身を包み、知的な眼鏡をかけた女性。


「あ、いたいた! ロゼリア! リフル! エルド! ルシア!」


「え、ストーリアに……リールーまで?」


 ロゼリアは思わず立ち上がった。


「こっちよ」


 手招きすると、リフルも勢いよく立ち上がる。


「また会ったね。リールーも連れてきちゃった」


 ストーリアが笑う。


「皆様こんにちは。来てしまいました」


 リールーは少し照れたように、自身の白い衣装の袖をそっと摘まんだ。


「ようこそグレースランドへ。二人は初めて?」


「私は何度かあるのよね。この街、すごく綺麗で好きなの」


 ストーリアが周囲を見渡しながら言う。


「無性に散策したくなるのよ」


「私は初めて訪れました」


 リールーも微笑んだ。


「とても美しい街並みですね。ストーリアさんから聞いていた以上です」


「じゃあ明日、みんなで回りましょう!」


 リフルが勢いよくリールーの手を握る。


「美味しいもの、いっぱい案内します!」


「よろしいのですか?」


 リールーが少し嬉しそうに目を細めた。


「皆さん、お疲れでなければ……ぜひ」


「お姉様、大丈夫ですか?」


「ええ、もちろん」


 ロゼリアも笑顔で頷く。


「じゃあ決まりね!」


「……やっぱり俺には聞かねえのか?」


 ルシアが呆れたように言う。


「エルドもそれでいいのか?」


「ルシアは大丈夫でしょ」


「私は問題ありませんぞ」


 エルドまで穏やかに頷いた。


「なんだその雑な扱い……」


 ルシアがため息をつくと、リフルがくすっと笑う。


 張り詰めていた空気が、ほんの少しだけ和らいだ。


「それで?」


 ロゼリアが椅子を追加しながら尋ねる。


「何かあったの?」


 ストーリアの表情が、少しだけ真面目になる。


「……キラーのこと、聞いた?」


 その言葉で、空気が変わった。


「キラーって、この前“王都管理になった”って話?」


 ロゼリアがリールーを見る。


「そうよね?」


「はい。一時的に、メルディナ王都管理下へ移されました」


 リールーが静かに答える。


「ですが……」


 言いにくそうに口を閉ざした、その時だった。


 ――階下が急に騒がしくなる。


 誰かが大声で叫んでいる。


 ざわめきが、一階から一気に広がっていった。


「……なんだ?」


 ルシアが眉をひそめる。


 すると、宿の主人が興奮した様子で階段を駆け上がってきた。


「おい! お前らも聞いたか!?」


「何をですかな?」


 エルドが聞き返す。


「王都だよ王都! メルディナが、とんでもねえ告知を出してる!」


 主人は息を切らしながら、一枚の紙を広げた。


 王都の紋章入り。


 各街へ正式に配られている布告らしい。


 ルシアが紙を覗き込む。


 そこには、大きく記されていた。


【“DRAGON KILLER”所有者選定試合 開催決定】


「……は?なんだこれ」


 思わず、ルシアが声を漏らした。


 リフルも目を丸くする。


「ちょっと待って。所有者って……」


「まさか一般募集か?」


 宿の主人が興奮気味に頷いた。


「らしいぞ! 国中から強者を集めるって話だ!」


 エルドの眉がぴくりと動く。


「……正気ですかな」


「いや待て待て待て」


 ルシアが布告を掴んだ。


「なんだこれ。あんなヤバい剣を大会で決めるって?」


「段階試験方式みたいね」


 ロゼリアが布告を読み上げる。


「第一回試技。


 第二回選定。


 第三回実戦投入。


 第四回最終選抜……」


 リフルが吹き出した。


「なによそれ。お祭りじゃない」


 だが、エルドは笑っていない。


「……危険ですな」


「危険どころじゃないだろ」


 ルシアが顔をしかめる。


「フェリオス見ただろ。あれ、人が持っていいもんじゃねえ」


 脳裏に蘇る。


 錯乱。


 狂気。


 ドラゴンへ向かっていった、あの異常な執念。


「そんなもんを、“強者募集”で集めるってのか……?」


「王都の者は直接見てはおらぬから。仕方ないのかも知れぬ」


 ラウンジの空気が、静かに冷えていく。


「……もしかして2人が来たのって、これかしら?」


 リフルが、ストーリアとリールーを見る。


 二人は顔を見合わせ、小さく頷いた。


「そうなの」


 ストーリアが静かに言う。


「私たち、それを伝えに来たの」


 そして、そっとロゼリアを見る。


 ロゼリアは何も言わない。


 ただ、布告を見つめていた。


 “選ぶ”。


 誰が。


 何を基準に。


 そして――


 あの剣は、本当に“従う”のか。

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