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⚔️伝説の剣。福引きしたら、ドラゴンスレイヤーだったらしい……。  作者: 黒武者
第6章:襲来

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第67話 交錯する刃、均衡の軋み

 石畳の終わりで、王都の道が断絶していた。


 崩落したのではない。

 そこにあったはずの重厚な石造りの地面が、バターをナイフで掬ったかのように、滑らかに「消し飛ばされて」いる。


「何かしらね……この切れ方」


 ティアが縁を覗き込み、背筋を凍らせて身を引く。


「自然じゃないわね。ここだけ世界が“消されてる”感じ」


 ルミナスが目を細め、陽炎のように揺らぐ前方の空間を見据える。


「二人とも下がれ。落ちたら、どこへ行くかも分からん」


 ユシャーンが剣に手をかけ、仲間を制するように間に入る。


「……あそこ」


 ストーリアが一点を指差し、震える声で呟いた。


「空間が捻れてる。形はないけど……確実にいるわね」


 見えない。だが、確かに“在る”。


「見えねぇが……肌が焼けるような圧力を感じるな」


 ユシャーンが低く構える。


「やばいやつ?」


 ティアの問いに、ルミナスが短く、冷徹に返した。


「やばくないわけがないでしょ。存在そのものが災厄よ」


 その時。


 空気が、不自然に擦れた。


 ガリ、と。


 音とも言えない感覚のあと、目の前の石畳が円形に消失する。


 一拍遅れて、猛烈な真空の風が吹き荒れた。


「伏せて!!」


 ルミナスの絶叫。


 全員が石畳に身を投げ出す。


 直後――


 背後の時計塔の一部が、音もなく円筒形に削り取られた。


 崩落の音は、遅れてやってくる。


 現実が、追いついていない。


「……今の、なに。何が起きたの」


 ティアが青ざめた顔で顔を上げる。


「物質を削り取ってるのか?」


 ユシャーンが歪みの中心を睨みつける。


 だがそこには、ただ透明な“絶望”が鎮座しているだけだった。


 その横で、フェリオスがゆっくりと立ち上がる。


 右腕に沈んだキラーが、狂ったように脈打つ。


 ドクン。

 ドクン。


 殺戮の思念が、血管を通じて“敵”を指し示していた。


「……そこだろ」


 虚空を見つめたまま、呟く。


「待って、フェリオス!」


 ストーリアが制止の声を上げる。


 だが――


「止める理由、あるのか?」


 ユシャーンがそれを遮った。


「あるわよ、死ぬわ! 物理的な干渉が通用する相手じゃない!」


「でも、何もしなきゃ削り取られて終わりだ。……やらせてみろ」


 短い沈黙。


 そして。


 フェリオスは迷うことなく、断絶された道の縁へと一歩踏み出した。


 足元の石が空白へ転がり、そのまま虚空に飲まれて消える。


「行くの……?」


 ティアが息を呑む。


「触れるなら、触る」


 キラーを構える。


「無茶よ、それ!」


 ルミナスの叫び。


 フェリオスは一拍置いて、無機質に答えた。


「ああ、分かってる」


 刹那。


 腕が、視認できない速度で横に振り抜かれる。


 何もないはずの空間。


 だが――


 キラーの黒紫の刀身が、確かに“何か”に衝突した。


 ガキィィィィィィィン!!


 世界そのものが悲鳴を上げたかのような、硬質な衝撃音。


「……当たった!?」


 ティアが目を見開く。


 衝撃の起点から、景色がひび割れるように歪む。


 そして。


 巨大な影が、一瞬だけ露わになる。


 雲を裂くような翼の広がり。

 その中央にある、“虚無の穴”のような瞳。


 それが、明確な敵意を持ってフェリオスを射抜いた。


「……見えたわね、正体が」


 ストーリアが弓を強く握りしめる。


「いいえ――見られた、だろ」


 ユシャーンが前に出る。


 キラーが、これまでにないほど強く脈動する。


 黒い血管が、フェリオスの右腕を侵食するように浮かび上がる。


 透明な影が、わずかに向きを変えた。


 そして――


 明確に、フェリオスへと距離を詰める。


「来るわよ……!」


 ルミナスが息を詰める。


「いいね」


 フェリオスが一歩、空虚の際へ踏み出す。


「来いよ」


 口元が、わずかに歪む。


「……お前を、俺の『エサ』に書き換えてやる」


 その声に応えるように。


 空間を削り取る“死の歪み”が、猛然とフェリオスへと襲いかかった。

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