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⚔️伝説の剣。福引きしたら、ドラゴンスレイヤーだったらしい……。  作者: 黒武者
第5章:新たなる火種

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第57話 空を裂く影と、奪う剣

 ルシアたちが息を整える間もなかった。


 ――ドォン!!


 腹の奥を叩く爆音。

 反射的に、全員が振り向く。


 渓谷の岩肌が、内側から弾けるように崩れていた。

 砕けた岩が転がり落ち、その上空を赤黒い影が旋回している。


「……あれ、まさか――」


 言い終わる前に、影が口を開いた。


「伏せろ!!」


 吐き出されたのは炎ではない。


 圧を持った塊が一直線に落ち、森に叩きつけられた瞬間――爆ぜた。


 地面が跳ねる。

 木々がしなる。

 熱と衝撃が、遅れて押し寄せる。


「ヤバいだろ、あれ……!」


「ねぇ、あれってドラゴン?じゃないよね?」


 リフルが声を上げる


「ええ、おそらく飛竜ね。いわゆるワイバーンじゃないかしら」


 ロゼリアは即剣を抜き身構える。


 ワイバーンが急降下する。


 着地と同時に、距離が一気に潰れた。


「散開!」


 尾が木々を薙ぎ倒す。


 さっきまでいた場所が、簡単に抉れる。


 風圧だけで体勢が持っていかれそうになる。


「速い!」


「しかも硬いわね……!」


 リフルが踏み込み、連撃を叩き込む。


「――ミスティック・ストーム!」


 確かに当たっている。

 だが、手応えが浅い。


 鱗が、衝撃を滑らせている。


「全部流してる!」


 ロゼリアがすぐに間合いへ入る。


 鱗の噛み合うわずかな隙を狙って斬り込むが――

 刃は弾かれないまま、“通らない”。


「……決定打にならない」


「抑える!」


 エルドが杖を打つ。


「――グラビティ・バインド!」


 空気が沈む。

 ワイバーンの動きが、一瞬鈍る。


「今よ!」


 ロゼリアが連撃を重ねる。


 だが浅い。

 どうしても、“届かない”。


 その横で、ルシアは歯を食いしばる。


(当たらねえ……!)


 振るたびに、ほんのわずかにズレる。


 その“わずか”が、致命的に遠い。


 ワイバーンが首を振る。


 来る。


 一瞬、踏み込みが遅れる。


 振り下ろされた爪が迫り、咄嗟に体を引く。

 風圧で膝が揺れる。


「ルシア!」


(くそ……このままじゃ何もできねえ!)


「ルシア殿、力を借りなさい!」


 エルドの詠唱が重なる。


「――ブレッシング・リンク!」


 光が一直線に伸びる。


 触れた瞬間――消えた。


 弾けたんじゃない。

 散ったんでもない。


 そのまま、剣に吸い込まれた。


「……は?」


 手の中で、剣が脈打つ。


「今の、何……?」


 リフルの声が、わずかに揺れる。


「……吸収された」


 エルドが低く言う。


「はあ!? 味方の魔法だぞ!?」


 もう一度、光が飛ぶ。


 同じだ。


 触れた瞬間、何事もなかったように剣へ沈む。


 じわりと、刀身の奥が熱を持つ。


 理解は追いつかない。


 だが――敵は待たない。


 ワイバーンが突っ込んでくる。


 地面を削りながら、一直線。


 逃げるか――


 いや、違う。


(当てるしかない)


 踏み込む。


 振る。


 外れる。

 かすめる。

 届かない。


 それでも、止めない。


 ここで引けば、もう入れないと分かっている。


 歯を食いしばる。


 無理やり、もう一歩。


 さらに半歩。


 ぶつかる寸前まで距離を潰し――

 体ごと押し込むように、剣を振り抜く。


 その刹那。


 刃が、確かに触れた。


 「――キィィィン」


 剣の奥で、澄んだ音が鳴る。


 目のような紋章が形を変え、刀身の色がわずかに変わる。だが誰も気づかない。ルシアさえも。


 黒の中に、赤が滲む。


「グウォオオォ!」

 魂の叫びのようだった。


 ワイバーンの動きが止まる。


 ほんの一瞬。止まる。


(今だ!)


 同じ場所へ、迷わずもう一度叩き込む。


 今度は違う。


 鱗が動かない。

 逃げない。


 刃がそのまま食い込み、深く抉る。


「入った!」


「そこよ!」


 ロゼリアが即座に踏み込み、同一点を突き崩す。


「リフル!」


「任せなさい!」


 連撃が重なる。


 今度は流れない。


 衝撃がすべて、一点に集まる。


「エルド!」


「承知!」


「――グラビティ・バインド!」


 重圧が押し潰す。


 もはやワイバーンに、逃げ場はない。


「お姉様!」


「任せて! ……ソード・オリヴィア・クレスタ!」


 一閃。


 ワイバーンの咆哮とともに――


 巨体が傾く。


 その首が、静かに胴体から離れた。


 そして――地面へと叩きつけられた。


 衝撃が、足元から跳ね返る。


 動かない。


 完全に、止まった。


「……倒した、のか」


 ルシアが息を吐く。


 誰も、すぐには答えない。


 ただ分かるのは一つ。


 通らなかった相手に、

 “通る一点”が生まれた。


 それを作ったのが――自分の剣だったということ。


 ルシアは、手の中の剣を見る。


 さっき一瞬だけ変わった刀身は、もう元に戻っている。


 だが、あの感触だけが残っている。


 触れた瞬間――確かに“何かを捉えた”。


「……なんだよ、この剣」


 答えはない。


 ただ一つだけ、はっきりしている。


 この剣は――

 与えられて強くなるものじゃない。


 奪って、成立する。


 それだけが、残った。


 何かとんでもないことが……


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