表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
⚔️伝説の剣。福引きしたら、ドラゴンスレイヤーだったらしい……。  作者: 黒武者
第5章:新たなる火種

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

51/75

第51話:観測者の証明

すみません。最後、途中で消えてました。加筆してます!

 酒場でルミナス、ティアと合流し、五人で盛り上がったせいか――


 アルコールが回り、全員が酔い潰れ、そのまま宿屋に泊まることとなった。


 宿屋の一角。

 消えかけたランプの灯りの下。


 ストーリアは、まだ酒が抜けきっていない頭で、

 それでも一つの違和感に引きずられるように、地下の記憶を繋ぎ合わせていた。


 ――役人は言った。

 五階までは清掃区域。六階は禁忌だと。


 しかし。


 もし「五階」という階層そのものが、

 侵食された結晶によって既に曖昧になっていたとするなら……。


 【DRAGON KILL ERRORの正体】


(あの文字……キラー『KILL ERROR』。あれは警告じゃなかった)


 ストーリアの指が、ペンを強く握りしめる。


 通常の「システム」であれば、

 竜を殺す者は『KILLER』として定義される。


 しかし。


 あの扉の奥にあったのは――

 システムの枠から溢れ出した、定義不能なバグ。


 【選定された器】


 ストーリアの脳裏に、

 扉の前で耳栓を外そうとしたフェリオスの虚ろな瞳が蘇る。


(なぜフェリオスだったの?

 ユシャーンの方が、武人としての格は上だったはず……)


(……いいえ、逆ね)


 思考が、静かに結論へと収束する。


(ユシャーンは『勇者』という強固な自意識がある。

 だからシステムに干渉しにくい)


(でもフェリオスは……)


 ――空白。


 まだ何の色にも染まっていない、空の器。


(だからこそ『KILL ERROR』は、

 最も書き換えやすい器として、彼を選んだ)


 【影の変質】


(……最後、階段を上がる時に見た、あの影)


 一瞬だけ見えた、竜の輪郭。


 あれは――幻視ではない。


 ストーリアは震える手で、ランプの灯りに自分の影をかざす。


 そこに映るのは、ただの少女の影。


(フェリオス。

 貴方はもう、ただの少年じゃない)


(貴方の魂の奥底には――

 あの地下五階そのものが)


(ドラゴンキラーの成れの果てが、

 ERRORとして書き込まれてしまった)


「……ストーリアさん?

 どうしたの、そんなに難しい顔して」


 不意に、背後から声。


 振り返ると――

 そこには、いつもの屈託のない笑顔を浮かべたフェリオスが立っていた。


「オレ、疲れたから先に寝るね!

 おやすみ、ストーリアさん!」


「ええ、おやすみなさい。ゆっくり休んで」


 穏やかな返答。


 だが。


 ストーリアの赤い瞳は――見てしまった。


 フェリオスが歩くたび、

 その足元の影が「重い粘液」のように床へ貼り付き、


 本来の動きから、コンマ数秒遅れて動いていることを。


(……手遅れなの?)


(……もう、観測これを止める術はないわ)


 ストーリアは椅子に座り直し、

 手帳の「5」という数字に、大きく×印をつけた。


(……計算が合わない。どうしても、合わないのよ)


 一階から二階へ。

 二階から三階へ――


(四階の『霧』……あそこが分岐点だった)


 視界を奪われ、感覚を狂わされたあの場所。


(あそこで私たちは、長い階段を降りた)


(つまり――)


(私たちは五階へ降りただけなのだ……)


「眠れないのか?」


 低い声。


 ユシャーンが歩み寄ってくる。


「ああ……あの地下が、どうしても引っかかってな」


「そう。じゃあ、少し付き合ってくれない?」


「望むところだ」


 ストーリアは手帳を差し出す。


「ここよ。……ユシャーン、どうしても計算が合わないの」


 指し示すのは――

 不自然に長く描かれた、一本の階段。


「四層の『霧』……あれが全ての元凶よ」


「あそこで私たちの感覚は、完全に“ハッキング”されていた」


 ユシャーンは椅子に深く沈み、眉間に皺を寄せる。


「……ああ。視界を奪われた。それは確かだ」


 一拍。


「だが、それだけじゃない」


 思考が繋がる。


「……待てよ。あの霧の階段――

 他より明らかに長くなかったか?」


 その瞬間。


 ストーリアの目が、鋭く見開かれた。


「やっぱり……!」


「貴方も、そう感じたのね――」



【消失した五層のトリック】


 「……長すぎた」


 ユシャーンが、ぽつりと呟く。


 「何が?」


 「階段だ。四層のあれ……あんな長さは、構造的にありえない」


 ストーリアの指が止まる。


 「……やっぱり、貴方もそう感じたのね」


 一拍。


 「私たち、五層に“降りてない”のよ」


【フェリオスという『攪乱』】


 「それに……」


 ストーリアの声がわずかに揺れる。


 「あの時、フェリオスだけ、霧に“見られていた”」


 ユシャーンが目を細める。


 「……ああ。俺も見た。あれは、霧じゃない」


 「目、だった」


 沈黙。


 「私たち、あの子から目を離せなかった」


 「だから、足元を数えなかった」


 言葉が、静かに落ちる。


【導き出された『ERROR』】


 「……あの扉」


 ストーリアが、ゆっくりと口を開く。


 「“KILLER”じゃなかった」


 「“KILL ERROR”」


 ユシャーンは何も言わない。


 ただ、隣の部屋を見る。


 「……あいつ、五層に行ったつもりでいる」


 「ええ」


 「だが実際は」


 「六層よ」


 ストーリアは、手帳に「5」と書き――


 ゆっくりと、線で消した。


【ERRORの侵食ルート】


 1. 四層の霧


 視界が消えた。


 感覚も、曖昧になった。


 「階段」は見えていた。


 ――見えている“気がしていた”。


 2. 五層


 「ない」


 あるいは、


 最初から“通っていない”。


 3. 選定


 扉の前で、終わっていた。


 開ける必要すらなかった。


 (……あの青い森)


 (あれ、五層じゃない)


 (もっと下から、溢れてきてる)


 隣の部屋。


 フェリオスは、静かに眠っている。


 何も知らずに。


 何も変わっていない顔で。


 だが。


 その影だけが、


 わずかに遅れて動いている。


 (……もう、戻ってない)


 ストーリアは、手帳を閉じた。


 ユシャーンも、何も言わない。


 言葉にした瞬間、


 それが“確定”してしまう気がした。


 「どこにも地層の表示はない」


 あの言葉が、頭の奥で反響する。


 (……違う)


 (表示がないんじゃない)


 (決めさせてるのよ)


 自分が、


 今どこにいるのかを。


 (……やられたわ)


 地下六層は、


 もう閉じていない。


 地上に戻ってもなお、


 彼らの中で、開いたままだった。

何かがおかしい⁉︎

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ