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⚔️伝説の剣。福引きしたら、ドラゴンスレイヤーだったらしい……。  作者: 黒武者
第7章:選定の儀

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第101話 四つの刃

「あら、残念だわ」


 エクレールは肩をすくめ、小さく笑った。


「私は、まるで蚊帳の外ね」


 その表情に悔しさはない。


 むしろ、どこか楽しそうですらある。


「でも、こうして見るだけというのも悪くないわ」


「……興味深いもの」


 腕を組み、静かに闘技場へ視線を向ける。


 その横顔を見ながら、ルシアがぽつりと呟いた。


「エクレールさん、なんだか嬉しそうだね」


 隣にいたエルドが小さく笑う。


「そうでしょうな」


「あのお方、本当はリズベル殿とも手合わせしてみたいのでしょう」


「でも、先ほどダーレンさんとも戦ってたよね」


「ええ。それでも、まだ底が見えませぬ」


 エルドの眼差しは真剣だった。


「あのお二人……そしてジークレッド殿も含め、メルディナの武力は実に強大ですな」


 ルシアも静かに頷く。


「近隣諸国に囲まれているからかな」


「それもあるでしょう」


「しかし、あのお二人が健在である限り、メルディナは容易には揺るがぬでしょうな」


 そう言ってから、エルドは穏やかに微笑んだ。


「……ですが」


「我がグレースランドも、引けは取りませぬ」


 ルシアが首を傾げる。


「そういえば……グレースランドって、どんな軍なんだろう」


「俺、全然知らないや」


 エルドは「ほう」と眉を上げた。


「確かに、お話ししたことはありませんでしたな」


 少し考え、ゆっくりと口を開く。


「我がグレースランドは、古くより四つの隊を柱としております」


「国王直属、『キングスエッジ』」


「『エメラルドエッジ』」


「『クリムゾンエッジ』」


「そして、『クリスタルエッジ』」


 ルシアは思わず聞き返した。


「じゃあ、ヴァルガスさんとロゼリアさんは?」


「当然、キングスエッジですな」


 エルドは誇らしげに頷く。


「やっぱり、一番上ってこと?」


「……表向きは、そのように見えます」


 意味深な返答だった。


「表向き?」


「ええ」


「各隊には、それぞれ君主がおり、参謀がおり、そして隊を率いる者がおります」


「守るものも違えば、戦い方も違う」


「求められる強さも違う」


「だからこそ、どの隊が最強かなど、簡単には決められませぬ」


 エルドは少し笑った。


「隊員たちも皆、自分たちの隊こそが一番だと胸を張っております」


「希望する隊へ志願し、自らの価値を示す」


「その積み重ねが、今のグレースランドなのです」


 ルシアは静かに息を漏らす。


「……面白い国なんだね」


「ええ」


 そう答えたエルドは、ふと観客席の一角へ視線を向けた。


「ルシア殿、あちらをご覧ください」


 つられて視線を向ける。


 そこには、年若い男女が整然と並び、真剣な眼差しで闘技場を見つめていた。


 身に纏う外套は、それぞれ色が異なる。


 深い翠。


 鮮やかな紅。


 そして、透き通るような淡い青。


「あの人たちは?」


「各隊の見習いたちです」


「若いうちから他国の強者の戦いを見ることも、大切な鍛錬なのですよ」


「なるほど……」


 ルシアは感心したように頷く。


「もちろん」


 エルドは微笑んだ。


「ロゼリア殿が来られると知れば、なおさらです」


「ああ……」


「やっぱりロゼリアさんって、すごい人なんだ」


「ええ」


「若い隊士たちにとっては、憧れの存在ですからな」


 遠くでは、見習いたちがロゼリアへ尊敬の眼差しを向け、何やら小声で語り合っている。


 当の本人は、そんな視線など気にも留めず、静かに闘技場を見つめていた。


「もっとも……」


 エルドは口元を緩める。


「見られているのは、ロゼリア殿だけではありませぬ」


「……え?」


「ルシア殿、お主もです」


 思わず周囲を見回す。


 すると、数人の見習いと目が合った。


 彼らは慌てたように視線を逸らし、何事もなかったかのように姿勢を正す。


「……俺?」


 ルシアは目を丸くした。


「ドラゴンスレイヤーを手にした御仁」


「しかも、福引の特賞」


「今や各国で話題となっておりますからな」


 ルシアは苦笑を浮かべる。


「そんなに広まってるの?」


 エルドは堪えきれず、小さく笑った。


「皆、黙っておりますまい」


 その言葉に、ルシアも思わず苦笑する。


 その時だった。


 闘技場の中央で、大剣を構えるジークレッドがゆっくりと前へ出る。


 対するリズベルもまた、静かに刀へ手を添えた。


 二人の間を、一陣の風が吹き抜ける。


 観客席から、自然と物音が消えていく。


 誰もが、この一戦の始まりを見届けようとしていた。

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