第四十九話「楽しさと、発見と、実用性って話」
「たーたけ、たたけ、叩くが華よ〜」
俺は今ブロックを叩く楽しさを、久々に満喫している。
晴れ渡る空!
心なしか澄んだ空気!
何もない地面!
今日は存分に整地の喜びを噛み締める所存!
あたりには住民の雑踏も、ブロックを叩く音もしない。
何故なら、山を更地に変えようキャンペーンも5日が経ち、ブラック企業ではない我がグループは住民の皆様にお休みをしていただいているからだ。
だから、あちらから俺を呼ぶ声も、こちらから俺を呼ぶ声も聞こえない。
何も気にする事なく、地面を平らにできるのだ!
「おっと、壊れたか」
意気込んでツルハシを振り下ろした瞬間、前につんのめる。
ブロックを叩いた瞬間に持っていた、石のツルハシの耐久度が0になり消滅したのだ。
振りかぶって叩きつけた後に消えるので、微妙に危ない。
まぁ、壊れたツルハシのピックが顔面目掛けて飛んでくるよりは安全か。
俺はアイテムボックスを開き、次のツルハシを取り出そうとしたが、石のツルハシと鉄のツルハシがあるのを見て、どっちにしようか迷う。
「効率重視なら鉄のツルハシなんだけど、コスパは石なんだよなぁ」
いくら増殖バグがあるといっても、増殖させる作業があるわけで。
消耗品を増殖させるのって、なんかだるいんだよね。
なんでだろうね? 単純作業は嫌いじゃないけど、レアじゃないアイテムの増殖ってなんかときめかないんだよな。
快感がないっていうか。
この前のパーティの時は、時間的な問題があったから食材を増殖させて使ったけど、本来なら普通に農業やった方が楽だからね。
「あー。増殖はロトンドの負担もあるし、石使うかぁ」
うん。今日はロトンドもお休みだし、鉄ツルハシは明日増殖しよう。
俺はそう思い、石のツルハシを取り出す。
「スコップがアホほどうるさくなけりゃ、使うのにねぇ。女神様?」
いらぬリアルさをこの世界にもたらした、女神様に俺は文句を言ってやる。
お馴染みのスコップは耐久度無限だが、石を叩くと金属音が響いて鼓膜がダメージを負うので使うのをやめたのだ。
叩く回数が同じなら、俺は鼓膜のために石ピッケルを選ぶ。
「たたっくー、たたっくー、ナーンバーワーン」
俺は歌いながら作業を再開する。
ブロックを叩いて〜回収。
叩いて〜回収。
黙々と作業を続ける。
うん、作業を始めて一時間半くらい経った。
まだ整地の楽しさが勝っているが、腕と腰の筋肉がストライキを起こす予感がする。
俺は後ろを振り向いて、今日の作業の成果を確認する。
うーん。現実で見ると結構掘れてる。
でも、ゲームとして考えたら全然掘れてない。
理由はリアルだと時間がかかるからだ。
ゲームならブロックを三回叩くのなんか一瞬なのに。
「ここも不満ポイントですよ女神様〜!」
俺は空に向かって大声で叫ぶ。
ワンチャン願いが届く可能性があるので、不満は都度届けていこうと思う。
なんなら、今アップデートが入ったかもしれない。
俺はツルハシを振り下ろしブロックを叩く。
叩く。
叩く。
___おぉ!
腕が痛い、腰が痛い、背中が痛い、握力がきつい!
「変わってないんかーい!」
やっぱり鉄のツルハシにしよう。
叩くの二回で済むから。
スタミナ計算も大事ですわ。
俺は鉄のツルハシをアイテムボックスから取り出す。
「あ、でも先に石のツルハシ使い切ってからの方がいいか」
俺は右手に石、左手に鉄のツルハシを持って気づく。
俺は耐久度が残りちょっとまで減ってるアイテムが所持品の中にあるのが嫌いなタイプだ。
使い切るか、捨てるかしたい。
でも、捨てるのはもったいないので、大概は使い切る。
という事で、石のツルハシが壊れるまで多分あと数回。
ツルハシ二刀流でござる。
俺は石のツルハシをブロックに片手で叩きつける。
すると、きちんとブロックにヒビが入った。
「お! ツルハシの自重でも叩いた判定になるじゃん! 思い切り振り下ろさなくていいんだ、これライフハックじゃね?」
グリッチともバグとも言えない小技だが、非力な俺にはありがたい裏技だ。
久々の新仕様にウキウキしちゃう!
整地しながら新要素を検証できるなんて、いいじゃないの。
俺はもう一度腕を振り上げ、落とす感じでツルハシを叩きつける。
するとブロックが壊れた。
「ん?」
なんか、変だったような気がする。
俺は違和感の正体が掴めぬまま、もう一度石ツルハシを叩きつける。
楽ちんだ。
持ち上げて、もう一回叩きつける。
ブロックが___壊れた。
「おやおやおやおやおやおや〜?」
匂うぜぇ?
グリッチちゃんの香しい匂いがよぉ?
その後も石ツルハシでブロックを二回叩いて破壊を繰り返し、石ツルハシの耐久値がなくなったところで、鉄のツルハシの耐久値を見る。
減ってない。
鉄のツルハシを放り投げて、アイテムボックスから新しい石のツルハシを取り出して、ブロックに思いっきり叩きつける。
一回。
二回。
三回。
「おお! なんということだ、石のツルハシだと三回も叩かないといけない!」
俺は顔がニヤけるのを感じながら、放り投げた鉄のツルハシを拾い上げて握りしめる。
しっかりと左手に鉄のツルハシを握りましてぇ。
石のツルハシでぇ?
ブロックを二回叩くとぉ?
「おお! なんということだ! 二回で済んじゃうじゃないか! これはきましたよ? きましたよこれは!」
はいバグです!
見つけました。
多分だけど、採掘力は持っている道具の高い方を参照して、耐久値は実際に使った方だけ減っているといったところか。
ゲームだとツルハシを二刀流なんてできませんからね。
この世界バグですよ。
これこれぇ! 脳にクルゥ!
コスパの良い道具で、効率の高い効果!
しかも、効率いい方の耐久値は減らない!
革命!
レボリューション!
次からはみんなにツルハシ二刀流でいってもらおう!
なんてったって、三回が二回になるんだからな!
そう! 三回が……二回に。
数字をあらためて連呼して、俺は、はたと我に帰る。
一回叩く回数が減ることよりも、二本持つ鬱陶しさの方が勝るくね?
というか、素直に鉄ツルハシ使えば良くね?
そう思った俺は急速にテンサゲ。
いや、多分後半の硬い岩盤とかを壊す時には有用。
間違いない。
でも今は___
役に立たねぇ。
「うおおおぉぉぉぉおお! 女神ぃ! 贅沢は言わないからダイヤモンドのツルハシくれ! 金のツルハシでもいい! 素材でもいいから降ってきてぇ!」
俺の心からの叫びは虚しく青空に消えていき、雲一つない空からは何も降ってこないのであった。
お読みいただきまして誠にありがとうございます!
私、最近短い話しかけるようになってきたと思いませんか?
成長がうかがえませんか?
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