第四十八話「仕事と、責務と、責任とって話」
5.5話が新たに追加されています。ストーリー展開に変更はありません。
「あー! なんでこんなことにぃ!」
現在俺は採掘場所の山をあっちに行ったり、こっちに行ったり。
土を踏み締め根っこを飛び越え。
「シヤー! こっち溜まったぞー!」
「はい! ただいまー!」
呼ばれればダッシュで向かい。
「おーい! こっちもだー!」
「喜んでー!」
そして呼ばれればダッシュで向かう。
目的は住民がブロック化して採取してくれた素材だ。
「このゲームスタミナの概念ないよね……? なんで息が切れるの?」
住民からブロックを受け取った俺は、膝に手をつき息を整える。
脳を占めるのは、疲れたと辞めたいと変なところだけリアルなこの世界への怨嗟だ。
「シーヤー! たまったぜー!」
「ばぎゃあ! 今まいりますぁあああ!」
もはや、頑張ってくれている村のみんなを呪いそう。
山を更地に変えようキャンペーンは今日で三日目。
もうずっと走りっぱなしだ。
その原因を作ったアイテムの蓋を俺は蹴って開ける。
「くそ……なんで、収納箱使えへんねん。いいやん。そこもリアルでいいやん」
口から延々と愚痴を垂れ流す事で精神を保つ高等テクニックを駆使しても気分は晴れない。
収納箱に原木ブロックと葉っぱをしまいながら、何か解決策はないかと考える。
まず、住民が木や地面をブロック化する作業は問題なく行えた。
とてもいい事で喜ばしい。
おかげで、作業員を増員できた。
これも効率が上がって素晴らしい。
ちゃんとブライトとロトンドに見回りをさせて、異変がないかも常時監視中。
ぬかりはない。
計画は順調だ。
住民が収納箱を使えない事を除けば。
「開けるだけじゃん! この蓋をこう! 上にこう!」
俺は収納箱の蓋を何度も開け閉めしてそのスムーズさを確認する。
こんなに簡単に開くのに、住民にはこの蓋が開けられないらしい、だから採取した素材をしまうのは収納箱を開けられる人間がやらなきゃならん。
ブライトとロトンドは巡回の重要任務だからだめ。
流石にジジイにこの作業をさせるのは虐待の可能性が浮上する。
結果このクソ広い山を走り回って、住民が採取してくれた素材をこのクソッタレた箱に打ち込むのは俺の仕事になったわけだ!
「広いんだよ! 山! あと木! 多い! 見積もってた数の数倍!」
俺は山に指を突きつけ文句を言い、木に指を突きつけ文句を言う。
確かに私は3000ブロックとか言いましたよ?
でも、さすがの俺でもこの山が何ブロックで作られているのか、数までは覚えているわけではないです。
整地してる時はブロック放置するので数えていないからです。
だからって、それがそんなに罪な事でしょうか?
こんなに過酷な労働をしいられるほどでしょうか?!
「おーい!シヤー」
「みぎゃあああああ!」
俺は耳を塞いで地面に頭を打ちつける。
このまま埋まってしまおう。
それがいい。
そう思い頭を地面にグリグリ埋め込んでいると、腰の辺りを軽く叩かれた。
「兄貴ぃ。少し休憩しなよ。視界が開けてきたから、少しの間くらいならロトンドだけでも見て回れるからよぉ。俺が代わるぜぇ」
その人物のモヒカンから眩しい後光が見える。
ブライト……お前はなんていいやつなんだ。
俺は地面に埋まるのをやめて地面に座り込む。
「じゃぁ、俺はちっと行ってくるぜぇ」
ブライトはそう言うと、先ほどの住民のところに走って行った。
足場の悪さなど気にさせない軽快な走りだ。
……そう言えば、あいつもしーぷんでレベル上げさせてたな。
レベルが上がるとあんなにも身体能力上がるんだな、普通は。
俺はブライトの走りに感心しながら、改めて自分の腕を見てみる。
なんとも、貧弱で細っこい腕だ。
レベルが上がった恩恵など微塵も感じない。
「なんで、わざわざこんなに弱い体に転生させたのかねぇ。女神様は」
どうせキャラクターIDが1番だったとかそんな理由だろうけど。
俺は答えの出ない疑問を考えながら、空を見上げる。
周辺の木はもう伐採されて、抜けるような青空が見えた。
「シヤじゃなかったら、グリーヴァに辛い思いをさせずにすんだのかね? どう思うよ女神様」
俺の問いかけは空に消え、答えは返ってこない。
俺はアイテムボックスから水を取り出し、一気に飲み干してから立ち上がる。
「さて、続きを頑張りましょうかね」
ブライトがたまに手伝ってくれるとして、いつ頃更地にできることやら。
やはりジジイにも駆けずり回ってもらうべきか?
「おい」
俺が作業場に戻ろうとすると後ろから声がかかる。
振り向くと、いつからそこにいたのか、険しい顔で立つグリーヴァだった。
「……グリーヴァ?」
思いもよらない再会に頭が真っ白になる。
___なんて話そう
___あいさつした方が
___なんでここに
___えーと、うんと
「元気?」
咄嗟に出た言葉は我ながら間の抜けたものだった。
見てみろ、微動だにしないグリーヴァの表情を。
当然返答はない。
俺を睨みつけたまま黙るのみだ。
だが、俺を睨みつけているということは、俺に用事があるということか?
でも、違ったらまた気まずいし、どうしよう。
また、思考がぐるぐるし出したところでグリーヴァの口が開く。
「ファムに言われて来た」
それだけ言うとまたむっつりと口を結ぶ。
「ファム?」
なんでファムが出てくるんだ?
ファムといえば、あれか料理のお礼とか?
いや___あるわけない。
それだけでグリーヴァは俺のところには来ない。
じゃあ、なんだ?
「村の防衛のために総出で作業をしてるんだろ」
ますます疑問を深めていた俺に、グリーヴァが聞いてくる。
「あ、あぁ。防壁を作るのに素材が必要だから、この山をちょっと更地にするんだ」
俺が答えると、グリーヴァの表情がますます険しくなる。
「更地……」
なんだ、グリーヴァ的に更地はまずかったか?
そんな設定は寡聞にして知らんが、そうなのか?
「まぁ、いい。村の防衛の事なら、次期村長候補の俺も参加するべきだと言われた。もっともだと思ったから来た」
あぁ、そうか俺に会いに来たんじゃなくて、俺のやっていることに用事があったのか。
自分の責務を全うすべく、顔も合わせたくないであろう俺に声をかけたと。
うん。立派に次期村長候補として育ってるんだな。
俺が嫌になってもちゃんと勤勉に励んでくれているんだな。
俺はなんだかそれが嬉しく思った。
「チッ。なにニヤけてんだ。勘違いすんなよ、アンタを許したわけじゃねぇ」
グリーヴァは歯を剥き出して威嚇するように言う。
___うん。それでもいい。
だって、許されようがないから。
俺にはシヤを返してあげる事はできないんだから。
でも……
「それでも、手伝いに来てくれて助かるよ。ありがとう」
素直に感謝の言葉がでた。
それすらも嬉しかったから。
「チッ。やる事を教えろよ」
ぶっきらぼうに言ってくるグリーヴァは、少なくとも睨んではこなかった。
真面目に仕事をしようという姿勢を感じる。
ならば俺も感傷を抜きにして、ビジネスマンとしてキチンと仕事を回しますか。
「まず、やってもらうのは、この辺の木を……」
説明のために木を指さそうと振り返った視線の端に収納箱が映る。
……。
「すまない。グリーヴァまずは、この箱を開けてみてくれないか?」
俺はさっきまでとは違う意味でドキドキしていた。
「はぁ? なんだそれ。馬鹿にしてんのか?」
そう言いながら収納箱に手をかけるグリーヴァ。
根は素直ないい子なんだ。
「ほら、開いたぞ。これでどうすんだ?」
ッ!
そうだよな? 勇者御一行のメンバーなら開けられるよな。
開けられないと、攻略進まねぇもんなぁ……
グリーヴァとまた友達になりたい。
紛れもない俺の本心だ。
嘘偽りない本音だ。
でも、それはそれ、これはこれだ。
俺は垂直ジャンプして空中で足を折りたたむと、そのまま地面に着地し額を擦り付ける。
「明日からも毎日来てください!」
俺は渾身の土下座でお願い申し上げた。
効率的に作業を進めて、さっさと城壁を建築すんだ、俺は。
お読みいただきまして誠にありがとうございます!
あのねー。僕ねー。感想もらったんだー。
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嬉しいんだなぁこれが。
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