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第四十五話「壊れて、壊して作るって話」


「ただいまー!」


俺は村の門番のおっさんに挨拶しながら村の門をじっくり見る。


ちょっとしたお出かけから帰ってきたが、さっそくイメージが湧いてきたぜ。


「おう、おかえり。……後ろの二人顔色悪いが大丈夫か? ちなみにここはホロンダ村だ」


門番のおっさんは、俺の後ろに続くブライトとロトンドに心配そうに声をかける。


「お心遣い、滅相もございやせん。お気になさらず、どうかお手を煩わせぬよう……」


そう言いながらも、ブライトは明らかに意気消沈しているのを隠しきれていない。


「でさぁ」


ロトンドに至っては俯いたまま顔も上げない。


全く二人とも問題ないって言ってるのに、信じないんだから。


「ほら! 二人ともジジイのところに、形だけの許可をとりに行くぞ!」


のろのろと顔をあげるブライト。


「なぁ、兄貴。今からでも遅くないから、元に戻しに行こうぜぇ?」


ブライトの不安そうな顔なんてレアだったが、ここ最近はずっとこの顔だ。


「心配すんなって。問題ないから。壊せるってことは、とっていいってことなの」


サンドボックスの基本だよ? とっちゃダメなのは不思議な力で壊せないんだから。


「壊したことがバチ当たりだって話してんだぜぇ」


もう何度目かわからない会話にうんざりしながら俺は答える。


「バチが当たるなら、とっくに女神に指ちぎられてるから」


なんと言っても、女神様が常に監視してるからな。


「その女神様の像を壊したのが問題なんだぜぇ!」


ブライトがヤケクソ気味に天に向かって叫ぶ。


「大丈夫、大丈夫。俺がかっこよく門のアクセントに使ってやるから」


「あーーーーーーーーー!」


ブライトが頭を抱えて叫び出した。


作業台を手に入れた神殿の、床やら壁やら女神像やらを破壊して手に入れたのがよっぽど効いてるらしい。


前回行った時はアイテムボックスがなくて全部回収できなかったからなぁ。


しかし、思いの外二人とも信心深かったんだなぁ。


「何度も言ってるだろ、今の時点で神殿系のブロックはあそこでしか手に入らないの。だから、かっこいい門を作るにはあそこから手に入れるしかない。OK?」


「……そうか。兄貴、最初から言ってくれよ。その神殿系で門を作ることで、村の防衛力が物凄く上がるんだな? そうだろぉ?」


やっと腑に落ちたといった顔でブライトが聞いてくる。


そう思うことでブライトが納得するなら、そういう事でいいんだけど、防衛に関する事だからなぁ。


勘違いされたままだと困るので、ちゃんと答えよう。


「ううん。かっこいいから」


「あーーーーーーーーー!」


もういいや。ジジイに城門を作る許可をもらいに行こう。


完成した城門を見れば納得するだろう。


俺は二人を放っておいてジジイの家に向かった。


「じゃまするでぇ。じゃますんなら帰ってぇ。あいよぉ」


ドアをノックして返事が返ってくる前に中に入る。


「む。シヤか。よく戻ったな」


ジジイはもうこれぐらいでは突っ込んでこなくなった。


ツッコミ放棄はDVじゃないかと思う。


「して、今回は村の入り口を強化する素材をとりに行くという事だったが、万事うまくいったのか?」


「おう。きちんと1ブロックの取りこぼしもなく更地にしてきたぜ」


普通だったら現段階では手に入らない、大切なブロック達だからな。


「更地というのが何やら不穏に聞こえるが、大事ないならよかった」


「んじゃ、一応村長様に許可を取るってことで、城門作っていいよな?」


否と言われるわけもないが、手続きは大事だからな。


ジジイに許可を求める。


「うむ。この村で初めての『建築』この目で見せてもらうぞ」


うきうきした顔をしながら、頷くジジイ。


出かける前に建築について説明しといたから、巨大なものを作るという行為に興味津々なのだろう。


「んじゃ、早速始めてくから」


「む。帰ってきたばかりではないか。それに残りの二人はどうした? 休んだ方が良いのではないか?」


うきうきながらも、こちらを心配するジジイはできた大人だね。


でも俺はできた大人じゃないから、早く建築がしたいんだなぁ。


「問題ない。二人も問題ない。じゃ、作ってるところ見たけりゃ、後できなよ」


「あ、おい。……ん。城門?」


後ろからジジイの声が聞こえるが、この世界で初めての建築に心が逸っている俺はもうオール無視っング。


門に着くと同時に、木の門をスコップで叩いてはアイテム化する。


「ああ! 門がなくなった! これじゃあ、俺は___」


門番がここに立ってると邪魔なので、適当に離れた場所に木の門を立ててどかす。


門の周りの柵も壊して、広さを確保して、石ブロックで5マスごとに目印をして、入り口部分は偶数で開けるか、床を地面に敷くので一段下げて___


「あ! 俺だけじゃダメじゃん!」


地面を半分くらい掘ったところで思い出す。


ちゃんと、二人にも建築を体験してもらわなきゃ。


「おーい! 二人ともこっちきて一緒に建築するぞ!」


俺は門番の近くで体育座りでこちらを遠巻きに見ているブライトとロトンドに声をかける。


二人とも電気が走ったのかというくらいビクッと体が跳ねていたが、観念したのかトボトボとこちらに歩いてくる。


「まずは床を先に敷いちまうから地面を掘ってくれ。目印の中を四角く全部一段下げる感じで」


俺はアイテムボックスから木のスコップを二人に押し付けて、強引に作業場所まで連れて行く。


「はぁ。もうこうなったらヤケクソだぜぇ。せいぜい兄貴の言う通りかっこよくして許しを乞うしかないぜぇ」


「でさぁ」


「うんうん。かっこよくしような」


三人がかりなのであっという間に地面が掘れたので床を張る。


「中央の4マスはこの神殿の床を使うから、その外側はこの神殿の石床で埋めてくれ」


「神殿神殿言うのやめようぜぇ……」


まだ言ってる。


こちとら建築のためなら魔王城だって更地にするつもりなのに。


「あ、そうだ今度あそこを更地にしに行こう……」


壁掛け系のアイテムが多い場所があった事を思い出し、次の候補に入れる。


「大兄貴ぃ。物作りと言いながら破壊活動をしてるんでさぁ」


ロトンドが素っ頓狂な事を言う。


「何言ってんだロトンド。作る前には壊さないと。常識だぞ?」


シーケンスブレイクでは作れないアイテムとかが発生するからな。


元々ある建材は全て破壊して、建築に使うのだ。


「大兄貴の世界は恐ろしい常識が蔓延ってるんでさぁ」


ロトンドが渋面を浮かべながら言ってくる。


「ゲームの中だけだよ、ゲームの中だけ」


俺は石の床ふちで道に立体感を出してのっぺり感を消しながら答える。


「よし、床はこれでよし。次はがいへきだけど……」


そこで俺は、はたと気づく。


___二人にどうやって作業してもらおう?


ゲームだと建築レシピを作って、それを使い住民に建築を手伝ってもらうのだが、俺は勇者ではないので建築レシピを作れない。


「どうしよう?」


いちいち置く場所を指示してたら面倒だし、何より一人でやってても1マスズレるのが建築の宿命だ。人数が増えれば増えるほど口頭でやってたらズレるだろう。


「兄貴、どうしたんだい? 問題かい?」


ブライトが床を作ったことで吹っ切れたのか、いつもの調子で聞いてくる。


「いや、この後どうやってお前らに指示を出しながら作業しようかなって」


「紙に書けば良いとおもうぜぇ」


ブライトがもっともな事を言うが、それには致命的な構造上の問題がある。


「俺、絵が下手なんだよ」


なんでだろうね?


建築なら自分でもイカしてると思える物が作れるのに絵には起こせないんだよなあ。


「それなら、兄貴が口で説明するのを俺が絵にしてやろうかぁ?」


え……?


お前、絵まで描けるの?


脛ツルツルなのに。


あと絵画って物作りじゃないんだ……


「じゃあ、俺がどこになんのブロックを置くかの図面を書く……あぁ、方眼紙がないと分かりにくいな」


この世界には必要ないので方眼紙なんてないからなぁ。


歪んだ線で書くと、マジで分かりにくいんだよ。


「方眼紙用の板木でも作って刷るか? いやインクねぇや」


俺は面倒臭さに頭を掻く。


早く建築したいのに!


「大兄貴、方眼紙ってのはなんでさぁ?」


俺が苛立っているとロトンドが聞いてくる。


「寸分の狂いもなく、等間隔で直線を引いて沢山マス目を作った紙」


ちょっと八つ当たり気味に言ってしまったが、ロトンドが提案してくる。


「それなら、俺が作りまさぁ」


「はぁ? そりゃ、時間をかければ誰でもできるけど、大量に必要なんだぞ?」


俺だって、定規でチマチマやれば流石に作れるが、その手間が惜しいって話なんだぜ。


「まぁまぁ、やらせてもらいたいんでさぁ」


ロトンドが珍しく押してくるので、テーブルを用意し紙と鉛筆を渡す。


「今回はそうだな縦横50マスあればいいけど、めっちゃ細かいぞ?」


俺は定規を渡しながらいう。


「わかったんでさぁ」


言うが早いがロトンドが定規をつかわず紙に線を引き始める。


「あ、おい……」


あまりの無謀に止めようとするが、ロトンドが恐るべきスピードで手を動かす。


それはまさに、刺さった針を正確に抜き、弾丸をつかむほど精密な動きだった。


みるみるうちに線が引かれ正確なマス目が増えていく。


ロトンド……。


お前波紋使いだったのか。


お腹が邪魔で靴履くの苦労してるのに。


「さぁ、兄貴。こっちはこっちで完成図を描いちまおうぜぇ」


「あ、ああ」


俺は動揺しながら、城門の完成イメージを口頭で伝えると、ブライトが線を引く。


俺が訂正して、またブライトが線を描くを繰り返しイメージ通りの絵を描き上げる。


「よし完成だぜぇ」


「こっちもでさぁ」


「ねぇ、何でお前たちならず者なの?」


俺は久しぶりの疑問を心の底から二人にぶつける。


「さぁてね。ゲームの駒だからじゃねぇか?」


ニヤリとサマになる笑みでブラックジョークを言うブライト。


「だけど、俺らの人生じゃぁこの程度余裕で身につくんでさぁ」


自信たっぷりに自分の力で手に入れたと言外にいうロトンド。


「んじゃ、俺のゲーマーとしての力もみせるとしようかね?」


俺はテーブルの上に広がった方眼紙のマス目を塗りつぶしていく。


誰が見ても完璧に建築できるように。


「あ、そうだ規模感を見るために女神像だけ出しておこう。大まかな大きさがわかるだろ」


門の上に飾る女神像をアイテムボックスから取り出しちょっと離れたところに設置する。


「シヤよ、見に来たぞわぁああああああ!!」


タイミングよく来たジジイが泡を吹いて倒れたが、椅子に座り直して方眼紙のマス目を埋める。


これで、門が完成するなら、この方法で住民にも建築してもらえるはずだ。


ただ、方眼紙で指示された場所にブロックを置くだけだからな。


俺は城門を作れる喜びと、その先の建築に期待で胸をいっぱいにするのだった。

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