第二十四話「アドレスでリマインドするって話」
タイトル変えました。
第二十四話「アドレスでリマインドするって話」
「はぁ、のどかだねぇ。水も気持ちいいや」
俺は、降り注ぐ優しい太陽の光を受け止めながら、川のせせらぎに耳を傾けていた。
「おっと」
足の間を何かが通り過ぎていった。
きっと魚だろう。
この辺の川魚は警戒心が薄いからな。
「なぁ、シヤよ」
釣り人がいないからな、無関心なのだ。
もしかしたら、手づかみで行けるかもしれない。
「それ何しとんの?」
鳥の囀りに混じって、老人の声がするか瑣末なことだ。
俺は魚を刺激しないように、そっと石ブロックを置く。
川底はゴツゴツとしていたが、染み込むようにブロックは水平に置かれる。
ここはロジカルな事なしに、ゲームの都合に合わせた感じだな。
どんなブロックも並べられるし、重ねられる。
サンドボックスゲームの根幹をなす要素だな。
「ねぇ、なんかワシのこと囲んでない?」
だがこの作業は角が肝心なんだ。角が。
キチンと全部のブロックが隣同士くっついてなきゃダメなのだ。
そうしないと部屋にならない。
「ねぇってば、無視しないでよ」
「なんだよもう。今俺は自然を感じながら、実験の準備をしてんの! 邪魔しないでよ」
さっきから小うるさいのは、どこにでもいる、川の流れを見ながら村の行く末を案じる老人だ。ひとゲームに二人は居る。
見た目は爺さん。それ以上でもそれ以下でもない。
「ワシの案じの結果教えるから、あんまり激しいのはやめて?」
行く末爺さんがクネクネしてる。
キモい。
まだ何かをすると決まってないのに、受け入れてるのもキモい。
「あのねぇ、この村はずっと安全という結果が出たんだよねぇ、これが」
得意げに胸を張る、行く末案ジジイ。
こいつの目は節穴だ。
なんてったって、一番最初に滅ぶ村だぞここは。
ハズレもハズレ大外れだ。
このジジイはリハクと呼ぼう。
相応しい名だ。
俺はそんなシックスセンスが皆無の爺さんを、定位置から動かさないように気を配りつつブロックを置いていく。
「さて、扉はちゃんと機能するのかな?」
俺は高さx1 の横x10 奥行x10の四角の囲いを作り、一箇所だけ開けておいたところにドアを置いてみる。
するとどうだろう。
カチッとハマるかのように、ドアがブロックにくっついた。
「おお! ちゃんとドアとしての機能をはたしてる!」
ドアを開けたり閉めたりしてみるが、ブロックはドアの半分の高さしかないというのに、安定して開け閉めができる。
「おい、じいさん。これを見てどう思う?」
俺はドアを開け閉めしながら、行く末爺さんに聞いてみる。
「どうって、いきなりドアが出てきてびっくり?」
「いや、それもそうなんだけども! ドアの挙動について思うところはないかって!」
目が節穴な上に察しも悪い。
だというのになぜ、川の流れを見ながら村の行く末を案じる仕事を選んだのか?
昼は川を見て、夜は家に帰って寝る。そんなワーキングだからか?
「スムーズに開け閉めできてるから、建て付けがいいんだね」
「不自然な点は?」
俺が聞くと、ちょっと考えて行く末ジジイが答える。
「普通?」
そうそう、その答えが欲しかった。
つまり、この世界の人間には、上半分が固定されていないドアとしてではなく、ちゃんとドアとして認識されているということだ。
「ということは、俺の仮説が正しければ……」
俺は旅の途中でアイテムボックスの整理がてら、余った材料でいろいろ作っていたので、その中で使わない家具を使用しよう。
「藁のベットと椅子とちっちゃいテーブル、テーブルの上に蝋燭。皿の上に栄養棒。これで、『普通のお部屋』の完成だ!」
何げに俺がこの世界で初めて作った建築物となる!
はずだ。
ちゃんと部屋判定になっているかは、爺さんの挙動を見ていればわかる。
「んー? わしいつの間に部屋に戻ったんじゃろ? まぁいいか」
爺さんは首を傾げながらも、椅子に座って栄養棒を食い出す。
「そうだ、シヤ。コレをやろう。川上から、どんぶらこっこと流れてきたけど、わしそれが何かわからんし、いらんから」
いらん物を寄越すなと言いたいが、この場合はグッジョブ、案ジジイ!
このアイテムは1日一回、家にいるこの爺さんに話しかけるともらえる、ぱやぱやの桃!
使用すると移動速度があがる、神アイテムだ。
特定のモンスターからしかドロップしないので、RTAではコレをどこで使うかでタイムが変わるくらいに重要アイテム!
今回はRTAしないが、こんなもん、なんぼあってもいいですからね!
俺がいそいそと、アイテムボックスに桃をしまっていると、行く末案ジジイがベッドで眠り始めた。
っ! 成功だ!
自分がいる場所によって行動が変わるタイプのNPCは、無理やり居場所を変えた時に、役割を優先する!
まだ検証すべきはあるが、『部屋』がつくれたことと、NPCの行動スケジュールに誤認を起こせたのは大収穫だ。
そしてぇ?
「ふんふんふんぬ!」
俺ドアを破壊して、部屋判定を消滅させる。
ドアがないと部屋判定にならないのだ。
「んー? ワシは今まで何を? ともかく、行く末を案じなければ」
部屋判定が無くなったことで、川辺にいる事を思い出した爺さんは、また行く末を案じ出した。
これが役割なので、前後不覚に陥っても整合性なしで続きを始めるらしい。
整合性か。そう思ったところで一つのひらめきが降りてくる。
___これもう一回ドアをつけたら、また栄養棒食い出すかな?
「いやいや、いかん!そんな非人道的な! 無理やりいくつも栄養棒を食わせるなんて! あまつさえ桃を何度も貰おうなんて!」
俺は自分の良心が働いてくれたことに感謝する。
人体実験みたいのは良くないよな。
本当そう。いやーよかった。
まだ俺の心はまともなんだと、胸を撫で下ろしドアを設置する。
そして、そっと栄養棒を皿の上に乗せる。
一本じゃお腹いっぱいにならないもんな?
でも、これ以上はちょっと、やりすぎだよな?
そして俺は計十回栄養棒を皿の上に乗せた後、桃をアイテムボックスにしまいながら村の中央へと歩きだした。
さて、ブライトとロトンドは楽しんでくれたかな?
随分と楽しませてもらったが、次はいよいよ村長にあって、農業の段取りスタート。もっと楽しくなるぞぉ!
俺は期待に胸を膨らませながら、一応村の入り口に門を戻すのであった。
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