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第15話 冒険者としての始まり


 ぼくが冒険者を志した理由は――


『お前ならきっと、〇〇〇〇〇〇〇〇〇……』――


 思考に靄がかかる。機会音のような雑音が彼の声音を覆い隠し、容姿さえもグニャグニャに変貌しまくって形にならない。うまく思い出せないなんて生易しいものじゃない。歪すぎて、不確かな記憶。


 きっと、その思い出は気のせいだ。夢で見たりしためちゃくちゃな光景を、何故か心の奥底に残してしまっていたのだろう……。


 ぼくが冒険者を志した理由は――


『お前ならきっと、〇〇〇〇〇〇〇〇〇……』――


 ――思考に靄がかかって、かき消されて……その思考をすること自体をロックされた、気がした。


   ~~~


 遥か空に向かってそびえる、灰色の外壁。そして、それらに取り囲まれた見渡す限りの建物群。


 ぼくは弾む足取りで、別名『要塞街』の名で知られるドゥーン・ロゥの石畳の街並みを歩いていた。


「すごいなぁ~!これが、駆け出し冒険者御用達でもある『要塞街(ドゥーン・ロゥ)』!!」


 宿屋、武器屋、防具屋、道具屋、冒険者にとって必要な建物がズラリと立ち並ぶ。甲高く響く、鍛冶師たちが打つ鉄の音が、建物の間を駆け抜けては、反射するように逆方向からも響いてくる。


 ワクワクして、ドキドキして、今すぐ駆け走って、その勢いのまま天へと――などという、浮かれ切った妄想が頭いっぱいを埋め尽くすぐらいには、完全に浮足だっていた。


「まずは、冒険者登録だな!そして、一旦、今日泊まる宿屋を探そう!!」


 ぼくが13歳になった時こそ、ぼくの人生が始まった瞬間と言って相違ない。なにせ、憧れの冒険者になれるのだ!10歳の時にやっとできた人生の目標であり、唯一の生きがいであり、ぼくが一生やっていく仕事。他の職業になることなんて、これっぽっちも考えられない。

 ぼくは、右腕を引き絞り、二の腕にお粗末な力こぶを作って鼻を鳴らす。


「なんたって……!ぼくは、この日のために3年、鍛えてきたからな!男子、三日合わざれば、龍となる?とかなんとかいうけど、ぼくの場合、3年だからね……!きっと、一気に冒険者の成功者街道をつき走っちゃうぞぉ!!」


 そんなお調子者なセリフを言って、馬車やら人やらの往来が留まらない通りを陽気に歩いてはいたが、まあ、ぶっちゃけそこまで甘い世界じゃないことを知っていた。甘い世界じゃないことをしっていた上で――自分はいつか強くなれると信じていた。まあ、結局、甘く見ていたのである。


 そしてから、ちょっと頬を染め、モジモジと人差し指を合わせながら、ぼくは不審者の如き独り言を続ける。


「きょ…今日は無理かもしれないけどさ……!明日にはパーティ―メンバーになる仲間も探さないとな!一人での冒険なんて、無茶すぎるし、危険すぎる。まさに大冒険!になっちゃう。だから、まずは、相棒となる腕の立つ戦士だろう。それから、魔法を使える可愛いエルフの女の子とかも仲間にしちゃって……ウフフフフ……」


 うん、不審者だっただろう。周囲から見たら、体をくねくねさせながら、頬を染め、独り言を言い続ける様は不審者以外の何者でもなかっただろう。


「それで立派な冒険者となったある日――『冒険者さん、実は前からお慕いしていて……!!』なんて告白されちゃったりしてぇ……!!」


 うん、ごめん……始まりのぼくの頭の中は、あまりにもお花畑すぎた。甘く見てないつもりでも、舐めてないつもりでも、楽観視しすぎていた、舐め腐っていた。


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