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第13話 砕ける音

 白閃が幾千の巨大虫を一刀に切り伏した。そのあと――魔物たちの襲撃はとまらなかった。

 ニードルズという強大な脅威からは、確かに逃れることができた。

 けれど、その直後、フィオーナの姿を見失ったのだ。そして、それに付き従う巨漢騎士の姿は、そもそもニードルズが襲ってくる前から見当たらなかった。


 トトも戻ってこない。アイリも行方不明のまま――。


「くそっ――!!」


 そんな精神的にも体力的にも不安定な状況で、ぼくたちが相対するのはフェン・リッパーだ。数は四体。三体がそれぞれぼくたちを一対一の構図で戦闘をし、最後の一体が少し離れた上空から、泥による奇襲の好機を伺い続けている。


 幸い、ぼくの左腕はロゼッタさんの治癒魔法で、しっかりと武器を握って扱えるほど回復していたため、両腕で直剣を握る事でなんとかフェン・リッパーに対抗することができていた。そして、ロゼッタさんやバルザックさんたちは、言うまでもなく、むしろフェン・リッパーに手傷を負わせていた。けれど……やはり、タフさが厄介だった。特に、バルザックさんは様子を伺っている一体のフェン・リッパーにも特に目をつけられており、なかなかフェン・リッパーに決定打をくだすことができない。


『フィアアアアアアア~~~!!』


「っ……!!!!」


 という、現状を把握するのすら、ぼくはギリギリだ。

 目の前で雄たけびをあげ、嘴を振ってくるフェン・リッパーに、ぼくは直剣を切り結びながらとにかく均衡を保つ。もちろん、チャンスがあれば一気に倒す気合はあるつもりだけが、どうにもぼくの力じゃ決定打を与えられない。泥塊の鎧の方が、ぼくの直剣を砕いてしまいそうな勢いだった。


「くそう……埒があかん!!ジリ貧じゃな……!!」


「……!!フォグモスの群れも来るわ……!!」


 ロゼッタさんたちから上がる、現状報告と襲撃警告。

 ぼくは、もはや目の前の翼竜型モンスターから目を離すことができない。意識の一片すら、周囲から迫ってくる危険に向けることができない。


 迫りくる嘴に、切り結ぶ、切り結ぶ、切り結ぶ、切り結ぶ、切り結ぶ――。


「っ――――!!!???」


 突如、激痛が走った。

 走り抜ける強烈な風切り音。

 何が起きたのか分からず……

 ただ中空を舞ったぼくの左腕が、ズタズタに引き裂かれまくったその肘から先が――ボトリと音を立てて底なし沼に落ちた瞬間、この戦場の均衡が崩れ去ったのを否応なく思い知った。


「うあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ―――――――!!!!」


 味わったことのない激痛を叫ぶことで意識外に飛ばし、残った右腕で必死にフェン・リッパーからの猛攻を防ぎきる。失った左腕からは絶え間なく多量の血液が流れ出し、ジットリと衣服が濡れて重みを増していく。


(ああ、そうか……。さっきの風切り音。一瞬で切り刻まれた、無数の切り傷。きっと、ぼくの腕を奪ったのは、ブレイダーだ……)


 そう理解した、次の瞬間――。


 猛烈な風切り音が、再び響いて――。


 ぼくが最後の希望のともしびとばかりに握りしめていた直剣の剣身が――音を立てて粉々に砕け散っていた。

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