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光VS了

 光があるから、影がある――誰しも、そうなのだろうか。明るい人には、暗い過去があるし、暗い人だからこそ、これからは明るく生きられるし――光が当たる部分があれば、その下に影ができる。うん? なにかおかしくはないだろうか。


 そもそも――高低差がなければ、影はできないだろう。浮き沈みがなければ、落ち込むことはない。言葉の矛盾だが、落ち込んだことがない人こそ、ずっと落ち込んでいるのかもしれない。自覚していないだけで、ずっと、落ち込んでいたのかもしれない。


 ――どんなに、底抜けに明るく表現する人間にも、高低差の波が、ないとは限らない。浮き沈みがない、ずっと落ち込んだ人間というのも――ずっと明るい人間というのも――それはそれで、つまらない生き方なのかもしれない。だからって、ずっと暗い生き方もどうかとは思うけれど。


 大切なものは目に見えない――という言葉を知っている人は多いと思う。サン=テグジュペリの著作、星の王子さまの言葉だが、その真意はどんなだったのだろう。光があるから目に見えるこの世界は――光と表裏一体の影もない、そんな世界のことを大切なものだと、暗示していたのだろうか。


 そこには、なにがあるのだろう。そんなの、だれにもわからないではないか。無をイメージしろとでもいうのか。ぼくには、どうしてもわからなかった。否、だれに訊いたってわからないだろう。


 ぼくは、光のことをなにも知らなかった。いつもそこにある、そいつのことを、いま、考えている。いつも、そこにあった。好きとか、嫌いとかの範疇を超えている。当たり前の概念がそこにあった。


 これは、勝てない。敗北だ。


「ん。なにか言った?」


 光は、こちらを向いた。


「いや、なんにも」

「そう? なにかブツブツ独りごとが聞こえたよ?」

「気のせいでしょ」

「そ」


 素っ気ない返事だった。これは勝てない。ぼくの負けだ――どんなに、言葉を尽くしても、敵わない。巫山戯たおしゃべりが延々と続くだけだ。


 ――因みに光は男だ。と、思わせて、実は女だった。だから、ヒカリなのだ。ヒカルではない。光っているわけではない、そのものが、光なのだ。光っているから、光るわけだけれど、光は、光があるというイメージそのものなのだ。光だって、光っているけど、光っているから、光なんだけど、光るから、光なのではなく、光は、そのものが光なのだ。


「ところで、影くんは、どこにいったの?」


 そんなキャラはいる。だけど、目に見えない。

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