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月夜の迷い子  作者:
第二章 広がる神話
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第14話 深夜の池と、意外な情報の連続

皆が寝静まった真夜中の裏庭。

ミナトは、真っ暗な池を前に、手をかざして、能力を発動した。

「【水鏡の真実】、俺に強い感情を持つ者を順番に映してくれ」


昼間は、曖昧な指定で、大量の情報が出てきたからな。

正直、昼間に垣間見た情報は、ほぼほぼいらない情報だった。

領主館の秘宝とか知って、どうしろと?


ふわり、と池の湖面から、蛍の光のような淡い光が散った。

その幻想的な光の流れを目で追って、目線を水面に再び戻す。

そこに表示されたのは、まず神々の情報だった。

神々の情報はそれほど多くない。というより、なんかメールみたいな画面が出てきた。


まず、太陽神・ディアナから。

『可愛い可愛い私の弟へ

地上で遊ぶのはいいけれど、それならお姉ちゃんの本神殿にも、顔を出してほしいわ。

でも、無口だったあなたが、最近はよく話してて、お姉ちゃん嬉しい。

そうそう。あなたが記憶をなくしているから、直接話せなくて寂しかったけど、いいことを思いついたの!

もちろん、そのことを責めてる訳じゃないのよ。そんなドジっ子なところも、お姉ちゃんは愛してます。

それでね、いいことっていうのは、私の巫女をそちらに行かせます。

直接は話せないけど、これで、仲良くお話しできるわね。

可愛いミナト、待っててね

あなたの片割れ、太陽のお姉ちゃんより』


色々ツッコミどころあるけど、まず弟ってなんのことだ?

ミナトって俺のこと、か?

いや、月の神様が、太陽神と双子で、神話では、ミナトって名前らしいから。

きっと、きっと違う。

私信を覗き見ちゃったんだろう。申し訳ない。

っていうか、神々ってこんな感じなんだな。


で、次。創造神からだった。意外だ。

寵愛、親愛、敬愛、畏怖って称号だったから、神々が実在するなら、創造神が一番俺に強い感情を持っていると思っていたけど、太陽神のが強い感情を持ってるんだな。

『我の自慢の息子へ

そろそろ薄々気づいてるのではないか?

ちなみに、我は、お主に力など与えておらぬ。

濡れ衣を着せずに、少しは人の子を信じなさい』

・・・。


次は、水神と、地母神。

これらもそんなに長くない。

『あなた様の旅路を守ります』とか、『微力ながら御身のお力になりとうございます』とか、『眷属のものが過剰に反応してしまうのを、お許しください』とかだった。


で、神々からはこれらだけではなかった。

風神雷神に始まり、様々な神が俺に何かしらの感情を持っていたらしい。

それらが、加護として表れなかったのは、加護になるほどではないからか?

省略されてる可能性もあるな。

ま、放っておいていいだろう。


神々のコメントリストを流し見て、次に表示されたのは、これも人ならざるものたち。

いわゆる精霊とか、妖精、世界樹や聖獣など神聖なるものたち。魔物とか、魔獣などからも。

ちなみに、魔物や魔獣などは、この世界では、邪なるものでもなんでもなく、「夜の生き物たち」というらしい。

単に夜行性が多いからというわけではなく、魔なるものは、夜の主人である月の神が司るある意味で神聖なものらしい。

いわゆる、聖獣が生を司るなら、魔なるものは死を司る。

この世界では、どちらも畏れられ、しかし時に命をいただくのだと。

それと、魔人と称される魔法が得意なツノ付きの人種はいるようだが、普通に人族の一員で、獣人や、エルフ、竜人、ドワーフといった多様な人種が世界には共存しているようだ。

まあ、地域によっては、人種差別はあるようだが。



そうこうして、疲れてきた頃に、人間のリストが出てきた。

神や人外の方が、俺に向ける感情が大きいとは思っていなかった。

そして、この人間のリストも、予想外に終わった。

一番初めに表示されたのは、知らない人物だった。

月光教の巫女・ルナ。

池の水面には、黒いレースの美しいドレスの黒髪の女性が映っていた。

「誰だ・・・?」

思えば、この世界の宗教もよく知らないな。

そう思い、そちらを調べていく。

この僅かの間に、基本的にこの水鏡の能力で調べられないことはあまりないだろうと、実感していた。

神々以外は、人ならざるものだろうと、本人たちも知らなそうなことまで記載されているのである。


調べてわかったのは、この世界の宗教は宗派違いと言った方が正しかった。

大元の神話はどれも同じ。

創造神が世界を作り、まず生み出されたのが、双子の神。太陽の女神・ディアナと、月の神・ミナト。その次が、水神と、地母神。

その下に、風神雷神など多様な神々が一律に並び、一番新しい神が、鍛治の神など技術系の神だった。

太陽の神と月の神は、宗派によって、姉弟か、兄妹か、伴侶か、分かれるらしい。

この教会の所属の太陽聖教は、太陽神を主神であり姉、月の神を弟と教義し、世界的な最大宗教。

対する月光教は、太陽神を妹、月の神を主神であり兄としていて、太陽聖教の勢いには多少劣るものの、ほぼ同程度の大きな宗教組織のようだ。

そのほかに、細々とだが、両者の神に序列を付けず、夫婦神としている宗派もあるようだが、基本的にこの二大宗派が世界を牛耳っているようだ。


で、人間リストの中で、出てきたのは、その巫女二人が、最初。

月の巫女の女性の後に、太陽の巫女が出てきたのだ。

太陽の巫女は、初老の女性で、金髪を白いベールに隠していた。名前はクラリス。

この人が、妄想激しいシスター・マルタの元上司。

優しそうだけど、同時にきっちりしてそうだ。柔和な笑みを浮かべている。

この人が、ここに来るかもしれないのか。

水鏡によると、俺に敵意はないというか、なんか神託に疲れてる?らしいけど。


とりあえず、疲れてきたので、敵対者がいないか、さらっと確認して、夜の情報収集を終えた。

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