第3話:開拓都市への道と、打ち捨てられた鉱石
ルークスの街に入る直前の街道沿い。
そこには、崩落して久しい古い採掘場の跡地が広がっていた。
「ふぅ……少し足を休めさせてくれ」
足を痛めている商人トーマスが、街道脇の石に腰を下ろす。
その間、手持ち無沙汰になったイノリは、周囲に散らばる壊れた採掘カゴや古びた掘削道具の残骸へと気まぐれに視線を向けた。
「……ん? これは……」
瓦礫の隙間に、淡く赤く発光する親指大の小石がいくつか転がっている。
拾い上げてみると、微かにぬくもりのような熱を帯びていた。
まるで石そのものが生きているかのような、微弱な脈動感すら伝わってくる。
「ああ、それは『爆裂石』の欠片だよ」
イノリの手元を見たトーマスが、呆れたように教えてくれた。
「昔、鉱夫たちが固い岩盤を吹き飛ばすのに使っていたんだがね。強い衝撃を与えるだけで簡単に爆発する危険物でねぇ……扱いが難しくて事故が相次いだせいで、今じゃ誰も使いやしないのさ」
「爆発する石……ですか」
イノリは少し考え込んだ。
そして、泥で汚れた皮袋の奥底に、その赤く輝く小石を三つほど丁寧に布で包んむ。
(今の俺には火魔法も、強烈な攻撃手段もない。不発弾みたいな危険物でも、持っておけば何かの足しになるかもしれない……)
この何気ない慎重な選択が、のちに己の命を左右する伏線になるとは——
この時のイノリは、まだ知る由もなかった。
*
開拓都市ルークスに到着し、助け合ったトーマスと礼を言って別れたイノリは、手に入れたわずかな銅貨を使って安宿の狭い相部屋を確保した。
傷口を冷たい水で洗い流し、沁みる激痛に歯を食いしばる。
破れた服を針と糸で縫い合わせ、濡れた体を拭った。
「まずは……冒険者ギルドだ。金を稼がなきゃ、明日食べる飯にも困る」
生きるための稼ぎ口を得るため、ギルドの重い木製の扉を開く。
中には昼間から安酒をあおり、大声で下品に笑う厳つい冒険者たちが溢れていた。
「おいおい、新人か? 随分と汚ねぇ面してんなぁ!」
「血生臭ぇぞ、どこから紛れ込んできた野良犬だ?」
浴びせられる嘲笑を完全に無視し、受付カウンターへ進む。
受付嬢のミリアに冒険者登録の用紙を手渡した。
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【名前】アサギリ・イノリ
【属性】なし
【スキル】『ワン・ミニッツ・リワインド』
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ミリアは用紙に目を通すと、申し訳なさそうに視線を落とした。
「……イノリ様。属性なし、スキルも戦闘向きではないようですね。冒険者登録自体は可能ですが……登録前の実技テストで、重傷を負われる方が非常に多いです。本当に受けられますか?」
「受けます。稼がなきゃ、生きていけない」
「けっ、ハズレスキルかよ」
「すぐ死ぬな、あのガキ」
背中に突き刺さる蔑みの視線と嘲笑を無視し、イノリは覚悟を固めて地下の訓練場へと足を進めた。




