第6話:宣戦布告と「御前試合」
「海藤よ。貴様、負けた癖に『フレームの計算が甘い』などと理屈を並べおって。計算で勝てるなら、魔王軍は苦労せんわ」
ゲーセンでの激闘から一夜明け、剛と誠は放課後の廊下を並んで歩いていた。 傍目には「背の高いワイルドな転校生」と「秀才な眼鏡君」という異色のコンビだが、その会話の内容は常軌を逸している。
「剛、声が大きいよ。……それに、あれはただの野試合だ。本気で僕に勝ちたいなら、もっと現代の理論を学ぶべきだね。君の動きは、あまりにも直感的すぎる」 「フン、直感ではない。覇王の嗅覚と言え。……だが、確かにこの『盤面』、もっと広い戦場で試してみたいものだ」
二人が駅前の雑踏を歩いていると、剛の鋭い視線がある一点で止まった。 大型ビジョンに映し出された、燃え上がるような真っ赤なロゴ。
『STREET FIGHTER 6 公式大会:ルーキーズ・チャレンジ開催!』
「……ほう。誠、見ろ。この世界にも『御前試合』があるようだ。賞金という名の戦利品まで用意されているとは、気が利いているではないか」
画面には、全国から猛者が集う様子が映し出されていた。 剛は不敵な笑みを浮かべ、その巨大な手でスマホを取り出し、迷うことなくエントリーボタンを叩いた。
「佐藤剛、エントリー完了だ。海藤、貴様はどうする? 観客席で指をくわえて、俺が頂点に立つのを見ているか?」 「……やれやれ。君を一人で放り出したら、大会の運営ごと乗っ取りかねないからね。僕も出るよ。今度は『運』で負けたりしない」
二人の視線がぶつかり合い、静かな火花が散る。 魔王と勇者。二人の戦いは、放課後のゲーセンという狭い檻を飛び出し、公式という名の「表舞台」へと引きずり出されようとしていた。




