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『転生魔王の経済征服 〜魔法はないけど金とゲームで世界は獲れる〜』   作者: たい丸
第2章:起業、デモンズ・ゲート

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第18話:魔王、大企業を『買収(城落とし)』する

「……誠よ。この国の『会社』というやつは、面白い構造をしているな。土地を奪い、城を焼かずとも、この『株』という名の紙飛礫かみつぶてを過半数集めるだけで、主権をまるごと奪い取れるとは」

デモンズ・ゲート社の新オフィス。窓の外に広がる東京の夜景を見下ろしながら、剛は不敵な笑みを浮かべていた。 彼の前には、複数のモニターが配置され、そこには「大日本ITソリューションズ(DJIS)」の株価チャートが不気味に脈動していた。

「剛、言葉が物騒だよ。……でも、理論上はその通りだ。昨日の技術検証での大敗を受け、DJISの株価は急落している。市場は、彼らの『過去の遺産』よりも、僕らの『未来の先読み』に価値を感じ始めているんだ」 副社長の誠は、眼鏡のブリッジを押し上げながら、膨大な財務データを高速で処理していた。 彼の指先がキーボードを叩く音は、まるで戦場を駆け抜ける軍馬の蹄の音のように正確で、淀みがない。

「チャンスは今しかないわ。……佐藤くんが言った通り、DJISの内部はもうボロボロ。古い体質の役員たちが責任を押し付け合って、現場の優秀なエンジニアたちは愛想を尽かしかけてる」 リンは、コーヒーを一口飲み、鋭い視線をモニターに向けた。 彼女の手元では、DJISのセキュリティ網を逆手に取った、合法的な「企業価値の再評価プログラム」が走っている。 「私が解析したところ、彼らが隠し持っていた休眠特許の中には、私のアルゴリズムと組み合わせれば化けるお宝がいくつも眠っている。……これを腐らせておくのは、技術者として許せない」

「ガハハ! 良い目だ、リン! 貴様がそう言うのなら、あの城にはまだ略奪する価値があるということだな。……よし、誠! 溜め込んだ軍資金をすべて解き放て。市場という名の戦場に、デモンズ・ゲートの旗を立てるぞ!」

「……了解。公開買付け(TOB)の準備は整ったよ。彼らが守ってきた『権威』という名の脆い城壁を、魔王の資金力で押し潰そう」 誠の言葉と共に、数億円規模の資金が電子の海へと投下された。

翌朝、経済ニュースは一つの衝撃的な見出しで埋め尽くされた。 『新興IT企業デモンズ・ゲート、業界最大手DJISに対し敵対的買収を仕掛ける』。

事態を重く見たDJIS側は、剛たちを本社ビルへと呼び出した。 かつて見本市で彼らを見下した高層ビルの最上階。重厚な扉の向こうには、日本のIT界を牛耳ってきた老練な役員たちが居並んでいた。

「……佐藤代表と言ったか。大学生の分際で、少々調子に乗りすぎではないかね?」 中央に座る白髪の老役員が、威圧的な視線を剛に向ける。だが、剛はその重圧を、心地よい風でも浴びるかのように受け流した。

「調子に乗っている? 否。俺はただ、機能不全に陥った城の主を、適材適所に挿げ替えに来ただけだ。貴様らが大事そうに抱えているその椅子は、もはや腐り落ちているぞ」

「無礼な……! 我が社が積み上げてきた信頼と実績を、格ゲー上がりのガキが理解できるはずもない!」

「信頼? 実績? ガハハ! 貴様らが誇るのは『過去の戦功報告書』ばかりではないか。……見ろ、これが現実だ」 剛が合図を送ると、誠がタブレットを役員たちの前に滑らせた。 そこには、DJISの主要株主たちが次々とデモンズ・ゲート側の提案に賛同し、株を手放しているリアルタイムのデータが表示されていた。

「な……!? 筆頭株主の銀行までもが……!?」

「彼らは『勝てる将』につく。……それだけのことだ。貴様らがビッグデータに溺れている間に、俺は彼らの『欲望』と『恐怖』を直接買い叩いたのだ」 剛は立ち上がり、巨大な窓から見える景色を背に両腕を広げた。 「今日から、このビルはデモンズ・ゲートの第二拠点となる。……誠、リン! 敗残兵の中から、使える奴だけを選別せよ。無能な老将どもは、退職金という名の路銀を持たせて追放だ!」

「剛、だから言い方が乱暴だって……。でも、確かに経営権の掌握は完了したね。これで、僕らのインフラは一気に全国規模になる」 誠は冷静に書類の束を整理し、役員たちに退任届を突きつけた。

「……。信じられない。本当に、この巨大な城を一日で落としちゃうなんて」 リンは、かつて自分が憧れ、そして失望した大企業のオフィスを見渡し、複雑な、しかし晴れやかな表情を浮かべた。 「佐藤くん。……いえ、魔王様。次の命令は?」

「決まっている。略奪した資源を使い、世界を驚かせる『真の娯楽』を創造するのだ。……まずは、このビルの社員食堂を改革せよ! あの半額コロッケを超える旨い飯を、俺の配下たちに食わせるのが先決だ!」

「……やっぱりそこなのね」 リンと誠の溜息が重なる中、剛の豪快な笑い声が、征服されたばかりのオフィスに高らかに響き渡った。

魔王による『城落とし』。それは、日本のIT業界の勢力図を根底から覆す、歴史的な転換点となったのである。


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