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高嶺さんのWEB恋愛小説は実話です。ークラスメイトの美少女が俺との日常をWEBに投稿している件ー  作者: 朝霧いお


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だってそれは、嘘をつかない。

「高嶺さん! 今日は一緒に移動しようね!」


 翌日、内田さんと姫野さんを中心に、女子たちは高嶺さんを守るように取り囲んでいた。


「あ、あの。私のために、こんな……。ご迷惑ではありませんか?」

「何言ってるの。同じクラスの仲間でしょ?」

「そう仲間! だから気にしないで」


 昨日、グループLIMEに参加した高嶺さんは、まだクラスメイトたちに囲まれることに慣れていないのか戸惑いを隠せないようだ。

 ただ、内田さんの陽の基質はやはり高嶺さん特効になりうるのか、彼女は何気なく内田さんが口にした言葉にほおを染めていた。

 俺は、昨日のグループLIMEの内容を思い出しながら、彼女たちを観察していた。


■1年A組■

(晴人さんが琴乃さんを招待しました。)

(琴乃さんが入室しました。)


【高嶺さんこんにちは!】

【いらっしゃーい!】

【これで、クラス全員揃ったね】


 俺が招待すると、クラスメイトたちは高嶺さんを歓迎していた。だが、高嶺さんはその書き込みを見て、少し思うところがあったようだ。


【琴乃:もしかして、私以外は全員いらっしゃったのでしょうか?】

【大路:ごめんね。高嶺さん、LIME始めたばっかりだって聞いてたから、とりあえず瀬崎に連絡頼んで、慣れた頃に入ってもらおうと思ってたんだ】


 大路がすかさずフォローを入れる。


【琴乃 そうだったんですね。】

【琴乃 みなさん、改めまして宜しくお願いします。】


 最後に「。」を打つあたりが、高嶺さんらしくて俺は笑ってしまったのは秘密だ。

 「。」があると圧を感じてしまうのに、彼女が使うときだけ真面目だなあと思ってしまうことに気づく。

 イメージの違いだろうか。高嶺さんの文章は、そっと万年筆でさらさらと書かれた文字に見える瞬間がある。


 昨日のグループLIMEで、高嶺さんを守るため、学校では基本女子が彼女を囲んで守ることになった。俺を含めた男は、その輪から少し距離を取って見守っている。

 ……というか、一応写真では俺も狙われているようだったので、俺は高嶺さんほど取り囲まれているわけではないが、近くには大路がいてくれた。


「高嶺さん、少し元気でたみたいでよかったね」

「ああ」


 窓の手すりに寄りかかりながら、大路が俺に尋ねる。俺たちのその視線は、高嶺さんとそれを取り囲む女子に向けられていた。


「この件、瀬崎はどう思う? 少しは相手の見当はついた?」

「――全く」


 俺は小さく首を振った。


「そもそも、高嶺さんは俺以外とはあまり話していない。それに、何かおかしいなと思ったのは、割と最近のことなんだ」

「それは、遠足よりあと……だよね?」


 俺は頷いて腕組みした。


「時期的には、部活が決まったあとだな。もっと言えば、部長に頼まれて、写真を撮影しに行ったあとだ」

「うーん……。でもそうなると、人数は多くない? かなり撮っていたよね?」

「そうだな。……だから、しぼれずに悩んでいるんだ」


 はあ、と溜め息をついて俺が机に顔をつけると、大路が俺の頭の上にちょこんと何かを置いた。


「……なんだこれ」

「チョコレート。疲れたときは甘いものっていうでしょ?」


 にっと、大路が明るく笑う。あまり気にしていなかったけれど、もしかしたらこういう時、明るく笑って周囲を和ませられるのが、大路の魅力のひとつなのかもしれない。


 キャンディーのようにくるまれた四角いチョコレートを、俺は口のなかに放り込んだ。

 ……甘い。

 やはり、甘味というのはよいものだ。


「ありがとな。高嶺さんと俺のために動いてくれて」

 これまで、俺はどこか心の何処かで大路に苦手意識があったけれど、ここまで心を砕いてくれている相手に同じ態度を続けるわけには行かない。

 俺がぼそっと言うと、大路は目を丸くしていた。


「え……?」

「大路には、結構これでも感謝してるんだ。言葉にするのは少し恥ずかしいけど、LIMEや部活見学のことも含め――いつも、手を貸してもらってるしさ」


 素直に感謝を口にする。

 いつもどこか自信たっぷりで、飄々とさえしているように感じる王子なら、俺のような凡人にこんな事言われても嬉しくないかもしれないけれど。


「いつも周り見てるっていうか、気遣いができるっていうか……優しいよな。相手に寄り添って言葉を選べるとこ、凄いなって尊敬してる」


 だが、俺の予想に反して、大路は明らかな動揺を見せた。


「べ、別に、瀬崎のことが心配ってわけじゃないんだからねっ!」

「なんで慌ててるんだ」


 おい大路。なんでお前は、ツンデレみたいな反応をしてるんだ? 


「わかってる。つまり、全部高嶺さんのためだってことだよな?」

 ここまで丁寧に男が男のためにというのは珍しいと思うから、やはり高嶺さんのためということだろう。

 でも、大路なら別に女子の好感度を稼ぐ必要はないと思うし、そう否定しなくてもいいじゃないか、とも思う。


「……そうとはいってないけど」

「? なんか言ったか?」

「何でもない」

「そうか?」

「……瀬崎って、よく気がつくようで鈍感だよね。別にいいけど」

「何だよ。悪口か?」

「別に」

 

 ぷい、と顔を背けられて俺は大路の感情がわからず眉をひそめた。

 ……? なんでこいつは、女子みたいな反応をして拗ねてるんだ???



 その後も、高嶺さんは女子に包囲されながらの学校生活を送った。

 どこに行くにしても彼女の周りには女子がいて、結果、俺は以前のように彼女と話す機会がなくなった。

 それが少し寂しい気もしたけれど、沢山の女子に囲まれて、一生懸命話す彼女を眺めるのも、俺は案外嫌いではなかった。


「こ・と・のちゃーん!」


 移動教室の途中である。

 高嶺さんが廊下を歩いていると、前方から叫びながら長身の女性が走ってきた。


「きゃあっ!」


 その女性――こと、高橋先輩は、高嶺さんに抱きついてご満悦だ。


「えっ? なに?」

「誰? 先輩???」


 女子たちは困惑していた。

 でも、なんでまた高橋先輩が、いきなり高嶺さんに抱きついているんだ!?


「春姉! 高嶺さんに急に抱きつかないで!」

「もう。学校では、高橋先輩って呼ぶよう言ったでしょ。メッ」


 怒る内田さんに対して、高橋先輩は無敵だった。


「ねーちゃん……」

「春子!」


 高橋が呆然としてつぶやいたかと思うと、亀田先輩が遅れて到着する。


「ごめんね、高橋さん。春子が困らせてしまって……」

 やっぱり亀田先輩と高橋先輩は、知り合いだったらしい。


「いえ、大丈夫です……」

 部長の言葉に、高嶺さんは苦笑いして答える。


「可愛いね。みんなで教室移動してるの? 一年生は仲良しさんかな?」


 高嶺さんを抱きしめたまま、高橋先輩は俺たちに尋ねた。

 そんな、小学一年生に対する発言みたいなことされましても。

 ……確かに、今のうちのクラスの団結具合は、普通の高校生とは毛色が違う気がするのは確かだけど。

 だってみんな、高嶺さんに対して過保護なのだ。


「いや、それが……」


 俺は、本当に困った。


「? もしかして、何かあったの?」

「……瀬崎くん。春子が聞いてるけど、本当に何か問題でもおきた?」


 高橋先輩と亀田先輩が二人して俺に尋ねる。こたえていいものか悩んで高嶺さんを見ると、彼女は『答えて大丈夫です』と言うように、俺に向かってコクンと頷いた。


「それが――どうやら高嶺さんのことつけてるやつがいるみたいで」


 俺の返事に、先輩2人は大きく目を見開く。


「ええ!?」

「琴乃ちゃん、そんなことになってたの? 大丈夫!? 先輩がギューってしてあげるからね」

「きゃっ!」


 亀田先輩より身長の高い高橋先輩に抱きしめられ、高嶺さんが高い声を漏らす。


「春姉!」

「やめろってば姉ちゃん! 恥ずかしい」


 内田さんと高橋が高橋先輩に対して怒ったが、高橋先輩は今日もどこ吹く風だ。


「それで、具体的には?」

「これが、高嶺さんの下駄箱に入ってて」


 (おそらく幼馴染の)三人を置いて、亀田先輩は俺に再び質問してきた。

 俺が写真を渡せば、亀田先輩は一瞬驚いたあと、眉間に皺を作って、そっと親指で俺につけられたバツをなぞった。

 写真部の部長ということもあってか、いつもの温厚な彼とは違う、静かな怒りが俺にも目に見える気がした。


「なるほどね……それで、これはいつから?」

「多分、この間部活動を撮影したあとからだと思います。表情が暗くなったのがその後だったから」

「――わかった」


 亀田先輩はそう言うと、高嶺さんに視線を移した。


「亀田先輩?」

「高嶺さん、瀬崎くん。良ければ1日、僕に時間をくれるかな? もしかしたら僕なら、犯人が誰なのかわかるかもしれない」

「それは、どういう……?」

 俺の問いに、亀田先輩はすっと目を細めて呟いた。


「――だって、写真は嘘はつかない」


 不思議なことに、高嶺さんを抱きしめていた高橋先輩は、そんな亀田先輩を見て楽しそうに静かに笑った。




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