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高嶺さんのWEB恋愛小説は実話です。ークラスメイトの美少女が俺との日常をWEBに投稿している件ー  作者: 朝霧いお


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大路はやはり「王子」なのかもしれない

「高嶺さん。これ……」


 俺が、写真を手に彼女を見ると、高嶺さんはあからさまにバツが悪そうな顔をした。まるで、俺に怒られているとでも思っているみたいに――俺はそれが、何故か無性に腹立たしかった。


「どうしたの?」

 見つめ合うことしか出来ない俺たちの間に、後からやってきた、何も知らない大路が明るい声で尋ねてくる。

「瀬崎? 高嶺さん? なんで二人して――……って」

 大路は高嶺さんと俺、そして俺の手にある写真を見て、いつもは優しい表情しかしない綺麗な顔をゆがませた。

「なにこれ」

 俺の手から写真を取り上げて尋ねる。


「瀬崎。これは、一体どういうこと?」

「高嶺さんの下駄箱に入ってた」

「え……っ?」

 俺が答えると、大路の視線が高嶺さんへと移動する。

「そうなの? 高嶺さん」

「……」

 心配そうに、気遣うような声で大路が尋ねても、高嶺さんは返事をしなかった。


「もしかして、ずっと前から……?」

 身長の高い大路が、高嶺さんと視線を合わせるために少し膝を折って言う。だが高嶺さんは、ぐっと何かをこらえるような表情をして、大路の手から写真を奪い取った。

「わ、私は。私は大丈――」

 そしてまた、足をくじいた遠足の時のように、彼女は感情を自分の中に閉じ込めようとした。


「――『大丈夫』、じゃないだろ」


 俺は、低い声で呟いた。

 本当に腹立たしい。高嶺さんを怯えさせて、俺に怒りをぶつける奴も。そして俺を信じて、相談してくれない高嶺さんも。

 心の傷は目に見えない。だからこそ、目に見える傷よりも、言ってくれなきゃ分からないのに。


 ――あの時だって、少し触っただけで悲鳴を上げていたのに。

 

 その時、俺の苛立ちを感じ取ってか、とん、と大路が俺の肩を叩いた。はっと我に返って高嶺さんをみれば、彼女は小さく手を震わせていた。


「こらこら瀬崎。今の高嶺さんに、そういう言い方はおすすめしないよ」


 失敗した。精神的に萎縮していた相手に、強い言葉をぶつけ過ぎたかもしれない。

 大路は、そんな俺の後悔と彼女の怯えを全部なくす中和剤としてこの世界に生まれてきたかのように、俺たち二人を見て、いつもみたいに明るく綺麗に笑ってみせた。


「でもまあ、瀬崎の言う通り、困ってるなら相談してほしくはあるかな」


 高嶺さんは、その明るい大路の声音に、目を大きく見開いた。


「高嶺さんは周りのことを気にしてしまうタイプかもしれないけれど、高嶺さんのことを周りは気にしてるって、もっとちゃんと知っていてほしいな」

「……」

「君が悲しい顔をしてたら、悲しくなる人は多いと思うよ。君にはこの学校にてよかったって、そう思っていてほしい。それは、瀬崎もそうだよね?」

「……ああ」


 大路に話をふられて、俺は頷くしかなかった。


 悔しいが、大路はこういうときは実に『王子』らしかった。

 俺がうまく言葉にできないことを、大路は見事言語化して高嶺さんに笑いかける。

 女子に対する話し方は、やはり大路は慣れているようだ。俺にはわからない女心? を、大路はちゃんとわかっているような気がした。


「高嶺さん。このことだけど――僕に任せてくれるかな?」


 大路は高嶺さんにウィンクする。まるで少女漫画の王子様(偏見)みたいなキザな真似をした大路は、高嶺さんが驚きと圧に負けて頷いたのを見て、何故かスマホをいじりだした。


 ■1年A組■のクラスのグループに、×で消された俺と高嶺さんの写真と共に、大路のチャットが更新される。


【大路:高嶺さんがもしかしたらストーカーに遭ってるかもしれない。ついでに瀬崎も狙われてるかもしれない】


 大路の書き込みには、すぐに既読の文字が増えていく。


【姫野:どういうこと?】

【内田:なにそれありえないんだけど! 詳しく話聞かせて】

【高橋:え。瀬崎これ大丈夫なのか? 狙われてね?】

【内田:王子がすでに書いてるでしょ。二行も読めないの?】

【高橋:そこまで言わなくて良いだろ!】

 

 高嶺さんには優しい内田さんは、今日も高橋に対して遠慮が無かった。


「あの、先ほどからずっと音が鳴っているようなのですが、どうかされたんですか?」


 高嶺さんは最近LIMEを入れたばかりで、連絡先は俺だけで、グループに入ったことなんてない。

 俺は不思議そうな表情をしていた高嶺さんに、クラスのLIMEグループの画面を見せた。

 内田さんと高橋は相変わらず仲良く喧嘩しているが、その他のクラスメイトは、高嶺さんと俺を心配するチャットを送ってくれていた。


「これは……」

 高嶺さんは目を瞬かせて、俺の顔を見た。先ほどまでより明るい彼女の表情に、俺はつい、絆されて少し笑ってしまった。


 ――やっと、気付いてくれた。高嶺さんはみんなに好かれている。彼女はずっと、一人じゃないのだ。


【大路:高嶺さんと瀬崎のために、この件についてみんなで協力しない?】


 大路の最新チャットには、すぐに既読がついて好意的なスタンプが増えていく。


 高嶺さんが俺に懐いているからと距離を取って俺をややぼっちにしたり、高嶺さんに連絡が一気に行くのを防ぐために俺を防波堤にして彼女をクラスのLIMEグループに入れなかったり、冷めているのか優しいのかわからないうちのクラスメイトたちだが、高嶺さんのためなら団結してくれるチームワークと優しさはちゃんとあるらしかった。 


【【【【【【賛成!】】】】】】

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