突撃!写真部
放課後、亀田先輩に呼び出されて部室に向かうと、彼は俺と高嶺さんをにこっと笑顔で出迎えた。
彼は高嶺さんの前にカメラを置くと、真剣な顔つきで俺たちに言った。
「今日は一つお願いがある。二人には、部活動の写真を撮ってきてほしいんだ」
「? 写真部の仕事ですか?」
「うん。いい写真なら、卒業アルバムに使われるかもしれなくて」
こういうのって、本職の人がやるものだと思っていたんだけれど――この学校は、少し違うのかもしれない。
「元々僕一人に来てた話だったんだけど――瀬崎くんや高嶺さんがどういう写真を撮るのか見てみたくて」
亀田先輩は、そう言うと親指と人差し指でフレームを作ると、俺たち二人を画角に入れて楽しそうに笑った。
「それに二人なら、僕とは違う視点で撮影ができるかもしれないからね」
■
「――さて。まずは、どこに行くかな」
腕に『写真部』の腕章をつけた俺と高嶺さんは、早速部長に命じられた任務を遂行することにした。
放課後の学校は、違う意味で騒がしい。
ハンドボールに吹奏楽部、放送部の発声練習――弓道部は静かだが、黙々と訓練をしているところに静かな圧を感じる。
俺が腕組みして考えている間、高嶺さんはずっと無言で首からかけたカメラ――正確にはデジカメをじっと見ていた。
「高嶺さん」
「……」
珍しい。反応がない。
「……高嶺さん?」
少し顔を近付けてもう一度名前を呼ぶと、彼女は俺に気づいてビクッと体をはねさせた。
「ごめん。驚かせた?」
「い、いえ……!」
「名前呼んでたんだけど、反応がなかったから」
「すいません! 少し、考え事をしていて……」
高嶺さんはそう言うと、デジカメのふちをそっと撫でた。
「実は私、写真を撮った経験が、これまで殆ど無くて」
「……なるほど」
彼女が黙っていたのは、その不安からだろう。俺と同じ部活ということで(?)、彼女は写真部を選んだみたいだけれど、写真自体に今興味があるかと聞かれたら、そうではないのかもしれない。
まあ、高嶺さんは撮るより撮られる側のほうがよく似合う。被写体として優秀だし、家柄的にも立派な額縁に入った家族写真がありそうだ。
「大丈夫。写真ってのはさ、要はその瞬間の切り取りだから。高嶺さんが撮影するなら、きっとみんな良い表情をしてくれると思うよ」
「私が撮影するなら……ですか?」
俺の言葉に、高嶺さんはきょとんとした。
彼女と話すようになって、俺は意外とこの表情を近くでよく見ている気がする。
純粋というか、俗っぽさがないというか――子どもみたいで、どこか可愛い。
「うん。そうだな――それなら、高嶺さんがこれまで話したことがある人が多い所に、まずは行った方がいいかもしれないね」
なら、向かうべき候補は絞られる。
俺は頷いて、少しでも彼女が安心できるよう笑いかけた。
「じゃあ、早速行こうか。俺たちの部活のために」




