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高嶺さんのWEB恋愛小説は実話です。ークラスメイトの美少女が俺との日常をWEBに投稿している件ー  作者: 朝霧いお


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「匂わせかと思った」

「瀬崎と高嶺さんって付き合ってるの?」


 月曜の朝、大路にとんでもない質問をされた俺は、朝から咳込んでしまった。


「げほっげほ……は!?」


 何をどう思ってそうなったのか。

 俺が少しパニックになっていると、大路は俺に設定したばかりの高嶺さんのLIMEの画面を見せてきた。


「この写真。高嶺さん、こういうヘアピンつけなさそうだし、自分で買ったものならわざわざ写真撮らないんじゃないかと思って」


 目ざとい。

 探偵かこいつ。というか、他人のLIMEのアイコンをわざわざちゃんと見てるなんて、やっぱりモテる男にはそういう敏感さが必要なんだろうか?


「その顔を見ると、やっぱり瀬崎があげたものだったんだ? 高嶺さん、ああいうのも似合うとは思うけど、彼女の持ち物はシンプルめのものが多いと思ってたから」

「……よく見てるんだな」


 女子の持ち物なんか、俺はまともに見ていない。

 でも確かに、可愛らしいファンシーな消しゴムを、小学生の頃は使っていた女子がいたきもするけれど、高校生となった今はあまり女子の持ち物では見ない気がした。

 ……プレゼントとして間違っていたんだろうか。

 悩んだ俺が高嶺さんの席を見ると、何故かパチっと彼女と目が合って、彼女は俺に小さく手を振ってくれた。

 俺は、思わず机に顔を伏せた。


「何やってるの。瀬崎」

「……」


 頭上から、大路の呆れたような声が降ってくるが気にしないことにする。

 俺は目を瞑り、高嶺さんとの休日を思い出し――それから彼女の小説【仮】へのコメントを思い出した。


【実にいいデート回でしたね】

【夏祭りが楽しみですね!】

【ハルさん意地悪……? それとも甘いだけ!? どっちなんですかこれは】

【付き合ってないんですか? 本当に付き合ってないんですか!?】

【いい彼氏だなぁ。ハルさん】

【彼氏じゃないよ。ハルさん】

【私女だけど、眼中外の男にアクセ貰うとキモいだけだからやめておいたほうがいい。高いやつなら売れるけど、たぶん今回みたいなのは困る】

【『私女だけど』】

【それは本当に女なのかな……?】

【私も女だけど同意見。食べ物は怖いし、消えないものはそれはそれで困るんだよね。逆に言えば、コトノさんはハルさんの好感度が高いんだと思う。だから嬉しい。】


 コメントによると、女子に物を贈るのは難易度が高いらしい。つまり貰ってくれただけ好感度はあるのでは、ということだったが……正直、妹や母さん以外の異性に贈り物をしたのは初めてで、何が正解かは俺は全くわからなかった。


【ハルさん「いらなかったら妹にあげる」←妹の扱いェ……】

【まあ、ハルさんの妹ちゃんさらっと酷いし、リアルの兄妹感はある】

【妹って、兄に対して何やってもいいと思ってるよな】

【お兄ちゃんならここまでやっても怒られない、を学ぶのが妹※ガチで嫌われてたらやってこない。仲の良い証拠でもある】

【ある意味『お兄ちゃんに好きなぬいぐるみを買ってほしかった』とも言える】

【お兄ちゃんが一生懸命選んだ気持ちは無視ですか?】

【よほどキモかったんじゃね。そのぬいぐるみ】

【まあ……花の形のヘアピンなら失敗しないから!うん!】

【中学写真部ならセンスはいいと思うけど、女の可愛いと男の可愛いは違うことあるからなあ】

【妹『ポイント稼ぐためにお兄ちゃんにはお菓子作って渡すような女は認めません! なので(好物の激ウマ)アップルパイは私が全部食べます! お兄ちゃんもアップルパイも全部私のなんだからねっ!』】

【ハルさんの妹ブラコン説】

【ハルさんが兄で妹が嫌うはずがない】

【妹『お兄ちゃんのばーかばーか(大大大好き)』】

【ツンデレ妹説】

【妹といえばヤンデレなんだよなあ】

【いにしえのネタを持ち出すな】


 読者たちによると、天音はブラコンに見えるらしい。俺としては普通の妹だと思うんだけれど――世の兄は、そんなに兄に対して態度の悪い妹ばかり抱えているんだろうか?


【まあ、オウジは男の筈だから気にしなくていいはずなんだけどね】

【え。これあだ名とかじゃなくてガチで男なの?? お料理系男子なの??? コトノさん嫉妬してるみたいだったから女なのかと思った】

【嫉妬してる描写なんてないだろ】

【これは男女で意見分かれそう】

【ハルさん無自覚人たらし説。性別問わず高感度爆上げ中(亀田先輩)。今年は美術部には負けないぞっ!】

【ハルさん、作者視点の描写だからどこまで正確か微妙だけど、性格がいいのは確実】

【ハルさん「普通にしてるだけなのに何故か男女問わずモテてしまう件について」】

【でもボッチ】

【それは……その、あれだよ。うん。】

【さりげない配慮満点】

【仕方ないなあ(やれやれ)、って思いながらも温かく見守ってくれたり、怒るんじゃなくて優しく笑ってくれるかんじなのメロい】

【読者にハルさん推しの女読者いない?】

【画面越しでもメロつかせてくる……!】

【女の言うメロいってよくわかんないよな】


 ちなみに俺もよくわからない。メロいってなんだ?


【別にハルさん本人じゃなくてもいいんだけど、ハルさんのいいなーって部分(行動とか言葉とか)を身近な男子がやってもときめくかもしれない、みたいな時に私はメロいなって思う】

【なるほどわからん】


 ちなみにメロいの説明は、俺も結局よくわからなかった。

 はあ、と俺が一人ため息をついていると、大路がポツリ呟いた。


「まあ、気付いてるのは僕くらいだとは思うけど。匂わせかと思っちゃった」

「……匂わせ、ってなんだよ」


 流石にそれは俺もわかる。でも、高嶺さんにその言葉は似合わない。


「あれ撮ったのは高嶺さんで、俺は登録してほしいって言われたから代わりにしただけで」

「じゃあ、高嶺さんがみんなに見てほしかったのかな?」

「高嶺さんは、そういうんじゃないだろ……」 


 計算とかじゃなくて、嬉しかったからそうしただけだ。

 そういう計算高い女みたいに、高嶺さんを表現されるのは気に食わない。


「なるほど。瀬崎は高嶺さんのために怒るんだね」

「……」


 からかうように大路に言われ、俺は無言になった。

 俺は、頭を押さえながらLIMEの画面を開いた。

 高嶺さんのLIMEのアイコンは、昨日のあの写真のままだ。

 するとその時、ぴこん! という通知とともに、新しいメッセージが届いた。

 亀田先輩――写真部の部長からのLIMEだった。


【今日の放課後なんだけど、二人とも部室に来てくれるかな?】


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