これは休日デートですか?②
「女の子がたくさんいます」
「高嶺さんも見てみる?」
高嶺さんは、女の子らしくアクセサリー店に興味を惹かれたようだ。
店内にはリングにピアスにネックレス、指輪やヘアアクセ、小さめのバッグやカードケースなども売られていた。
全体的に空間がキラキラしている。高嶺さんと雰囲気が合っているかといえば微妙だが、高嶺さんが楽しそうなのでよしとする。
この空間に男の俺が一緒にいると、最早彼女と彼氏にしか見えないと思うが、高嶺さんが何とも思っていないようなので、俺は必要以上に視線を気にしないことにした。
美少女すぎる高嶺さんに釣り合わない男ですまない。どうか俺のことは、空気か背景だと思ってください!
「すごく、可愛いです……!」
「うん。そうだね」
高嶺さんは声からもう楽しそうだ。だが俺は女子のみの空間に、昔のトラウマが蘇った。
「? 瀬崎くん、どうかされましたか?」
「いや、その……。妹に昔プレゼントを贈ったら、返品されたのを思い出して……」
「返品……?」
高嶺さんは意味が分からない、という表情をした。
天音の十歳の誕生日、俺は女子しかいない店でカエルのぬいぐるみを買って渡したら、返品されてパンダのぬいぐるみにされたのだ。
可愛いと本気で当時の俺は思ったんだけども――。ちなみにこの件、母さんが爆笑して親戚に話したせいで、俺の心の傷は更にえぐられた。
「それは……悲しかったですよね。私は瀬崎くんからいただけたら……その、呪いの人形でもだいじにします!」
「呪いの人形は高嶺さんにはあげないよ」
勿論天音にもあげない。
それに、実はこの話には後日談があって、数年後に俺がうさぎのぬいぐるみを渡したら、それは部屋に飾っていたから、俺からのプレゼントが嫌だったんじゃなくて、単に本当に趣味が合わなくて嫌だったようだ。
ギョロッとした大きな目の緑のカエルのぬいぐるみは、女子ウケはしなかったらしい。
「小さなお花が可愛いです」
「それ買う?」
高嶺さんは、桜の花の形のイヤリングを気に入ったようだ。俺が尋ねると、高嶺さんは少しの間のあとに首を振った。
この店は宝飾店とは違って高校生の俺でも買える店だったから、俺が買ってもいいかなと思っていたんだけれど。俺からのプレゼントを、高嶺さんが受け入れてくれるなら。
「……いえ。家族とお出かけするときは、父が用意したものを身につけるよう言われているので。その時にこれは、身に付けられないかもしれません」
高嶺さんの声の調子が少し下がる。
「実は、休日にこうやって、学校の方とお出かけするのもこれが初めてで……。父と関係のある方と会うときは、どうしても服装について指摘がはいるので……」
「……高嶺さん」
「すいません! なんだか、空気を重くしてしまって。可愛いアクセサリーが見られて楽しかったです。ありがとうございました」
空気が重くならないよう高嶺さんは笑って、さっと店を出てしまった。
彼女を追って店を出て、俺はスマホで時間を見てからこう提案した。
「そろそろお昼だし、フードコートでご飯を食べようか」
「フードコート?」
どうやらお嬢様は、フードコートも初めてらしい。




