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高嶺さんのWEB恋愛小説は実話です。ークラスメイトの美少女が俺との日常をWEBに投稿している件ー  作者: 朝霧いお


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14/20

放課後、二人きりの教室で。

「瀬崎くん、今日は一緒に残ってくださってありがとうございます」


 大路の根回し通り、俺と高嶺さんは教室に二人で残ることになった。


「高嶺さんって、元々あんまり放課後は残らないほうだった?」

「そうですね……。お迎えがあるので、学校が終わったら、すぐに帰っていたかもしれません。今日まで知らなかったのですが、皆さんもすぐ帰られるものなんですね」

「いや……うん。まあ、そうかな?」


 俺のこれまでの記憶なら、居残りする人間は存在していた気がするし、そもそも今日残るつもりの人間は確実に居た。

 その筆頭だろう高橋は、教室に残ろうとして内田さんに引きずられて帰っていった。大路曰く、二人は幼馴染らしい。ということは、ああいうのを夫婦漫才というのだろうか。


「高嶺さん、スマホ出してくれる?」

「はい」


 高嶺さんが、鞄からスマホを取り出す。

 スマホカバーは桜色だった。可愛い。


「じゃあ、まずはアプリをダウンロードしてもらおうかな」

「アプリ?」

「……」


 どうやらそこから教える必要があるらしい。


「すいません! いつもマリが教えてくれるので……ネットには、危ない場所もあるからと」

「なるほど」


 俺は、高嶺さんがしっかりしてあるようでほんわか育ったのは、過保護な人が身近にいたせいかもしれないと改めて思った。

 ――いやでも、と、いうことは……?

 俺のなかで、あの小説アカウントが、元々そのマリさんが作った説が浮上した。

 高嶺さんは読書家のようだし、どこかの流れであのサイトを知った可能性はある。

 もしこの仮定が正しければ、お嬢様ガチ勢のマリさんは、高嶺さんの小説を読んでいる可能性が――。

 

「どうかされましたか?」

「いや? 何でもないよ」


 うん。今気にしてもどうにもならない。

 俺は無駄な思考をやめて、目の前に集中することにした。俺自身スマホを取り出して、高嶺さんと同じ画面を開く。


「せっかくだし、教えるから自分でやってみる?」


 何事も経験だ。俺がしてあげるのは簡単だが、高嶺さんが自分でやるのもいいだろう。

 

「まずはストアを開こうか。俺と同じボタンを押して。そうしたら、画面が変わるから」

「はい」


 まるで、先生と生徒だ。

 頭の良さなら絶対に高嶺さんのほうがいいと思うけれど、そんな彼女にこうやって教えるのも悪くない。


「ここに検索したいワードを打ち込んで。そしたらアプリがヒットするから」

「こうですか?」

「そう。そしたら、アプリを落とすボタンが出てくるから。――出てきた。で、ここを押して。インストール」

「押しました」


 高嶺さんは、頷きながら素直に行動する。

 うーん。やっぱり高嶺さんは、今どき珍しい、素直で可愛い純粋さを兼ね備えている。


「少し、ぐるぐるしています」

「うん。じゃあ、待ってようか」

「はい」


 少し、不思議な感覚だ。

 高嶺さんといると、時間がゆっくり流れていく気がする。

 楽しい相手と過ごすと時間は短く感じる、というけれど、これはそういうことではなくて――高嶺さんという人の生きる世界が、俺たちが生きている時間より、一つ一つ足跡を刻むみたいに、緩やかに流れているように感じるのだ。

 そしてそんな時間が、もしかしたら――きっと、俺は嫌いではなかった。


「瀬崎くん。インストール、終わったみたいです」

「じゃあ、アカウントを登録しよう」


 俺に画面を見せてきた高嶺さんに、俺はそう言って微笑んだ。



「改めまして、瀬崎くんの連絡先を教えてください」


 アカウント登録を終えた高嶺さんに言われた俺は、早速彼女に俺のアカウントを教えた。

 高嶺さんが、俺の友だち欄にいる――なんだか不思議な感覚だ。


「これで、今日から瀬崎くんとスマートフォンでもお話ができるんですね」

「……っ。そうだね」


 二人しかいない教室で、可愛く嬉しいそうに笑いながら言わないでほしい。心臓に悪い。

 ただ高嶺さんは、俺だけが存在する友だちの欄を見て、どこか暗い表情になった。


「あの、瀬崎君。もしかしてこれは、私以外のみんなは、昔から持っているものなんでしょうか……?」


 一緒に時間を過ごすようになって分かったことだが、高嶺さんはどうやら、『普通』というものが気になっているらしかった。

 電車の乗り方がわからなかったり、ICカードを使いすぎたり――彼女の『生活』は、少しだけ俺たちとは遠い場所にある。

 そんな彼女をクラスメイトたちは保護対象のように扱うが、それはもしかしたら、高嶺さんが本当に求めるところではないのかもしれないと俺は思った。


「――別に、そう悲観的に考えることはないと思うよ」

「え……?」


 俺の言葉に、高嶺さんは目を瞬かせた。


「こういうアプリとかSNSは、連絡が取りやすくなったり、簡単に情報を発信できる分大変に思う人も増えてる面もあるからさ……既読無視とかの問題もあるし」

「『既読無視』???」


 高嶺さんがキョトンとした顔をして復唱する。


「えっと……実はこれ、連絡を相手が呼んだら『既読』って文字が出るんだけど、読んだのに返信返ってこないってなると、送った側のメンタルがやられるというか……」

「じゃあ私、瀬崎くんに連絡をもらったらすぐにお返しします!」

「ええっ?」


 嬉しいけれども――高嶺さんが即レス勢なのは、少し面白いと俺は思ってしまった。

 拝啓から始まる手紙を、筆ペンで書いていても違和感がない人なのに。


 高嶺さんは、新しいアプリが気に入ったのか、じっと画面を見つめて――それから俺にこう尋ねた。


「そういえば、瀬崎くんのこのまるは、わたしとは違うんですね」

「まる? アイコンのこと?」


 俺は、マイページの画面を開いた。


「ごめん、教えてなかったね。背景とアイコンは、好きなのに変えられるようになってて。俺のは、家で妹が飼ってる犬。ポメラニアンのポメタ」

「可愛いです!」

「ありがとう。因みに高嶺さん、もしスマホに使いたい画像があるなら今すぐでも変更できるけど、どうする?」

「えっと、それは、その……」


 高嶺さんは、何故か少し俺の言葉に動揺しているように見えた。


「……い、今は大丈夫です! ありがとうございます」

「そう? もし変えたくなったら言ってね」

「……はい。ありがとうございます」


 そのときだった。

 ピコン!と俺のスマホの通知が鳴った。俺はすぐにLIMEの内容を見た。

 ――大路からだ。


【大路:瀬崎、高嶺さんのアカウント登録終わった?】

【春人:終わった】

【大路:ならよかった。それでさ、瀬崎に伝えたいことがあったんだけど、瀬崎はもう部活決めた? 確か、高嶺さんもまだだったよね】

【春人:俺は一応考えてるとこはあるけど、高嶺さんはわからない。すぐ入らなくてもいいかなって気もしてる】

【大路:来週中に決めない場合ボラ部に強制的になるらしいから、早めに決めたほうがいいかも】

【春人:ボラ部?】

【大路:ボランティア部。掃除とかになるらしいから、何でもいいから期限内に部活にはいるのをオススメする】


 部活にはいらずボッチで清掃活動になるのは避けたい。となれば、大路のいうように早めに部活は決めるべきだろう。

 そして高嶺さんに、ボランティア活動をさせるのも俺は気が引けた。


「瀬崎くん? どうかしましたか?」


 高嶺さんが、少し不安そうな顔をして俺を見ていた。

 二人きりの教室で、突然スマホで大路と連絡をとれば彼女が不審に思うのは仕方がない。

 でも校内で――人目のある場所を、高嶺さんと回るのは……。


「……」


 俺は、スマホを手に取った。

 口には出しにくい言葉も、人は文字だと伝えられたりする。


【春人:高嶺さん】


 即既読である。素晴らしい反射スピードだ。高嶺さんに10点!


【高嶺:はい。どうかされましたか?】

【春人:もし部活決まってないなら、よかったら明日、一緒に部活見学にいかない?】


「はい。瀬崎くんと一緒に、私も見学したいです!」


 高嶺さんはスマホではなく、元気よく俺の顔を見て返事をした。



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