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高嶺さんのWEB恋愛小説は実話です。ークラスメイトの美少女が俺との日常をWEBに投稿している件ー  作者: 朝霧いお


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意図せずしてクラスメイトと繋がった件

グループの内の会話の表記について、ネームドキャラの時はチャットの前に名前をつけて書いています。(本当はこのキャラならこういう名前で登録してそう、というのはあったのですが、分かりづらそうだったので今回はやめました)

 大路が何を考えているかわからないが、俺はとりあえず渡されたIDを入力することにした。

 大路のアイコンは、顔のいい大路なら自撮りでも設定しているのかと思ったが、意外にも夕焼けの海の風景だけの写真だった。


【晴人:瀬崎です。宜しくお願いします。】


 挨拶はちゃんとするべきだろう。俺が律儀に連絡したら、大路はさらっと俺の挨拶を流した。


【大路 :登録ありがとう! じゃ、これからグループいれるね】




■1年A組■

(大路さんが晴人さんを招待しました。)

(晴人さんが入室しました。)


 大路に招待されて俺がグループにはいると、クラスメイト達がすぐに俺に挨拶してくれた。


【お? 瀬崎くん入ってきた?】

【こんにちは!】

【ようこそ〜】

【瀬崎くんようやく入ってきたんだ。なんで今まで入ってなかったの?】

【すでに入ってるって思ってた】

【これ2人足らなかったのか。28人しかいなかったもんな】


 どうやら俺がいなかったことを把握していない人間もいたようだ。

 待ってくれ。悲しいことは言わないでほしい。心が痛む人間がここにいるんですよ!?


【じゃあ、あとは残すところ高嶺さんだけ?】


 女子の一人がそう書き込む。すると、大路がこうフォローした。


【大路:高嶺さんはそもそもLIMEアカウントないみたいだから、今日の放課後瀬崎が作り方教える予定。作ったとしても、突然ここに入れちゃって仲良くない人から連絡いくと可哀想だから、しばらくは様子見で高嶺さんへの連絡は瀬崎にもらおうと思うんだけど、みんなはいいかな?】


【王子に賛成!】

【私も!】


 女子たちは元気よく賛成しているが、この言葉を境に男の書き込みが突然なくなった。


【高嶺さん、すぐ入れちゃ駄目なの?】


 沈黙を、一人の勇者が破る。


【男子、高嶺さん怖がらせちゃ駄目だからね。連絡先知ったからって連絡取ったやつは晒し上げます】


 だがその勇気は、一瞬で踏み潰された。


【なんで!?】

【高嶺さんはうちのクラスの癒し枠だから。今この時間からの男子の高嶺さんへのLIME無断接触を禁じます】 


 快活ムードメーカーな内田さん(名前だけは把握している)が、さくっと牽制する。


【瀬崎はいいのに!?】

【瀬崎くんはいいんだよ。高嶺さんから近づいてるんだから。高嶺さんが自分から動く分は認めます】


 どうやら、俺は女子目線だとセーフらしい。……でも、俺だけセーフって、他の奴らに恨まれそうだ。


【なんで女子が決めるんだよ!】

【興味ないリアルで仲良くない男に突然ネットで話しかけられるの普通に怖いし可哀想でしょ】

【クラスメイトでも!?】

【クラスメイトでも!】


 内田さんと仲のいい(教室でよく話しているのを見る)白石さんが今度は答える。


【俺は女子から連絡来たら普通に嬉しいけど……?】

【女子は男子とは違うんだよ。好意ない相手だと気持ち悪いだけだから。それに高嶺さんは今日アカウントつくるなら、仕組みとか絶対知らないでしょ。突然ろくに話したことない男子から連絡くるのホラーだよ。】

【そうそう】


 俺は、そのやりとりを見て昔ネットで見た比較画像を思い出した。

 確か男女で、異性からの好意の受け取り方は違うってやつ。男は女子からの好意は嬉しいが、女子はそうではないらしい。


 つまり俺は――クラスの女子から見て、高嶺さんに唯一クラスの男子で好意をもたれているように見える、ということだろうか?


【そういうわけで駄目です。男子は高嶺さんと話したいなら、高嶺さんからLIMEを聞かれるところから始めて】

【高橋:難易度高すぎじゃ】

【クリアしている人いるんだから不可能じゃないでしょ。ね。瀬崎くん】

【晴人:俺に振らないで】


 突然話を振られて、俺は思わずそう返した。


【高橋:でもさ、なら瀬崎にたのめばいいんじゃ? 瀬崎、高嶺さんになんかいい感じに言ってくれよ】


 男の頼みだ。俺だって、学校に話せる友達は欲しい。

 でも、もし女子たちが高嶺さんが不快に思うと考えているなら、俺は友達欲しさに、彼女を売るわけにはいかなかった。


【晴人:ごめん。協力してあげたいとは思うけど、高嶺さんが困るなら頷けない】

【高橋:瀬崎……!】


 高橋が、男泣きするスタンプを押してくる。

 うーん。これは少し面倒だ。なんて俺が考えていると、女子の一人がこんな書き込みをした。


【私、この返事で高嶺さんがなんで瀬崎くんにだけ心許してるのかよくわかっちゃった】


 不思議と好感触だ。


【だよねえ】

【これが高橋との違い】

【瀬崎くん無言で落ちてたゴミ拾ってくれるし、掃除の時もゴミ捨てかわりに行ってくれるしいい人だよね】


 今の俺たちの教室から、ゴミ捨て場までは少し遠い。女子に運ばせるのは可哀想だから、俺の掃除場所が教室のときは代わっていたが――。


【晴人:教室、ゴミ捨て場地味に遠いから。それに、まあまあサイズあるし】

【これだよ。そういう気遣いがあるかないかの違いなんだよね】 

【そうそう】


 何故か他の女子たちも頷いている。なんでだ?

 一つ言えるのは、俺が見られている瞬間、全部ゴミ関連なのは少し嫌だ。


【そういえば、瀬崎くんこの間高嶺さんおんぶしてたよね? 遠足の時】

【え? なにそれ。どういうこと?】

【晴人:いや、あれは単に高嶺さんが足捻ったから、同じ班だった俺がおんぶして登っただけだから……】


【高橋:なにそれ!? マジ羨ましい。俺も高嶺さんと同じ班だったのに! あの日、腹さえ壊さなければ……】


 高橋が再び食いついてくる。だが高橋の元気さは、再び女子達に粉々に砕かれてしまった。

 

【無理無理。あの時私見てたけど、高嶺さんは王子と瀬崎くんで瀬崎くん選んだんだから。高橋じゃ天秤にも乗れないよ。私だって二択だもん】

【私も、二択かもしれないです。】


 珍しい。予想外だ。

 いつも無言で、教室で本を読んでいる印象しかない大人しめ女子の吉野さんが、俺の肩を持つような言葉を書き込んでくれた。

 内田さんや白石さんのような陽キャとは違うタイプの女子に言われて、俺は少し嬉しくなってしまった。


 駄目だ。確かにこれが、男は女子に好意を持たれると、誰からでも割と嬉しいというやつかもしれない!

 ――それは、嬉しくだってなるだろう。女子は大路一択だと思っていたから、俺が天秤に乗せてもらえるなんて思っていなかったのだ。


【高橋はその、ちょっと……ね】

【高橋:ちょっと!? ちょっとってなんだよ! ちゃんとした説明を求めますっっ!!!!!!】

【そういうとこだよ】


 あれ? クラスに一人不憫な男がいるぞ。俺以外に。


【高橋だもんね】


 教室にいても全然クラスメイトに話しかけられないと思っていたが、高嶺さんを眺めつつ、もしかして俺も彼らに遠目には見られていたんだろうか。


 だとしたら、あまり話したことはなかったとしても、高嶺さんの小説【仮】にあったように、俺はクラスメイトから特別嫌われているわけではなかったのかもしれない。


 いや……でも。

 やっぱり良くないって。俺、普通にボッチなんですけど!?

 学校でまともに話しているのは、高嶺さんと大路、偶に姫野さんなんだけど!?

 俺も話し相手が欲しい。教室にいるのに、何故か感じる疎外感から俺を解放してくれ!

 だが俺のそんな心の叫びは届かず、俺を置いて話は進行する。

 

【じゃあ高嶺さんのことは、男子は基本瀬崎くんに任せるということで】

【賛成】


 女子監修、高嶺さんの保護活動は完璧だった。女子のこの高橋の扱いを見て、高嶺さんに無理に連絡するやつはいないだろう。

 むごすぎる。


【姫野:高嶺さん、しっかりしてるみたいに見えてちょっとほわほわしてるから、瀬崎くん連絡も含めてよろしくね。】

【瀬崎:わかった】


 癒し系お姉さん枠の姫野さんのお願いに、俺は頷いた。

 姫野さん、遠足以降高嶺さんとの絡みが増えて、こっそり俺はママみを感じているのは秘密である。

 こう……(若干常識がなく)手のかかる娘に対する、慈愛の視線を感じるのだ。

 ――と、いうか。

 

「…………」


 俺は、スマホの画面から視線を上げて、教室にいるクラスメイトたちの顔を見た。

 思ったんだが、これ今全員同じ教室にいるんだからリアルで話せばよくない? なんでみんなLIMEで話してるんだ???


「高嶺さんには内緒だからね」


 しーー。

 俺がクラスメイトの顔を見て一人困惑していると、大路がぼそっと俺に言った。

 

 いやだからお前は、その俺の思考読んでるみたいな発言やめてくれよ。


【大路:みんなにお知らせ。放課後、高嶺さんと瀬崎が教室に残るから、高嶺さんが怖がらないよう今日はみんな早めに帰ってね。高嶺さんが恥ずかしがっちゃうからね】


 待て大路。お前は勝手に根回しをするな。

 というかこのクラス、高嶺さんをペンギンかレッサーパンダか何かと勘違いしてないか?

 そして俺は、保護生物の飼育担当じゃないんだけど!?


「ありがと。じゃ、あとは宜しく」


 隣のクラスから戻ってきた数学の教科書を俺の机において、大路は颯爽と自分の席に戻っていった。


 





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