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高嶺さんのWEB恋愛小説は実話です。ークラスメイトの美少女が俺との日常をWEBに投稿している件ー  作者: 朝霧いお


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高嶺さんに避けられている気がする③

【ハルくんとこのまま話せていたらよかったのですが、これは新しい学校での、生徒同士の交流会も兼ねています。当然、逃げてばかりではいられません。

 ハルくんはオウジくんに話しかけられて、私は必然的に、ヒメさんとお話することになりました。


「高嶺さんは、普段休みの日は何してるの?」

「私は、お休みの日は、お庭で過ごしたり……」

「ガーデニング、ってこと?」

「お庭でお菓子と一緒にお茶をいただいたり……でしょうか?」


 私が今住んでいるのは別邸ですが、お庭には本邸と同じようにたくさんのお花が咲いています。

 休日はそこでスコーンにクロテッドクリームを塗って、紅茶と一緒にいただくのが私は好きです。

 マリは紅茶を淹れるのが上手で、お菓子に合う産地のお茶を淹れてくれます。


「なるほど、そうなんーー……ん、んんっ???」


 不思議なことに、今度はヒメさんが、ハルくんと同じような顔をされました。

 何故……? 何故なのでしょう。

 私はやはり、少しズレているのでしょうか。新しい学校でお友達を作りたいのに、壁を感じますし、なかなかうまくいきません。

 少しだけ、気持ちが落ち込みます。昨日眠れなかったこともあり、少し疲労を感じます。


「きゃっ!」


 そんな時でした。私は、少し盛り上がった地面に引っかかって転んでしまいました。

 ――痛い。

 もしかしたら、足をくじいてしまったかもしれません。


「大丈夫? コトノさん」


 ハルくんが、すぐに私に手を差し出してくださいました。私は、その手を取ろうとして――二人の視線に気が付きました。ハルくんに、ご迷惑をかけるわけにはいきません。


「大丈夫です。お気遣い、ありがとうございます」


 私は、小さく首を振りました。



 ですが、痛みは誤魔化せるものではありません。

 歩く速さが遅くなってしまっていたせいでしょうか? 後ろを歩いていたハルくんが、私に尋ねました。


「コトノさん、もしかして足が痛いの?」


 ぎくり。

 私は、内心焦りました。

 せっかくの遠足なのに、ハルくんにご迷惑をかけるわけにはいきません!


「コトノさん、ここに座ってくれる?」

 

 ハルくんが、道端の石を指差して言いました。明らかに怪しまれています。私は、再び首を振りました。


「いえ、私は大丈――」

「いいから」


 ハルくんの声は、いつもより低いように感じました。私は何故か逆らえなくて、黙って石の上に座りました。

 ハルくんは私の前に静かに膝を付くと、そっと、私のくじいた足に触れました。


「……っ!」

 私は、思わず声が出そうになってしまいました。


「……痛いの?」

 ハルくんは優しい人のはずなのに、なぜか今は少し怖いです。


「大丈夫です。歩けます」

「大丈夫、じゃ、ないだろ」


 ハルくんが、低い声でおっしゃいました。

 どうしましょう。やっぱり私、何か失敗してしまったみたいです。

 困っていたら、ハルくんは私の前に、背中を向けてしゃがまれました。


「あ、あの……」

「乗って。俺が、上まで運ぶから」

「でも」


 私は、ヒメさんとオウジくんを見ました。二人の前でハルくんに背負っていただくなんて――そんなの、恥ずかしすぎます!


「コトノさんの荷物は私が持つよ」

「じゃあ、僕がハルのを。足の怪我、思ったよりひどいみたいだし、僕が運んでもいいけど――コトノさんは僕かハルだったら、ハルのほうがいいんだよね?」


 呆然と私がしている間に、いつの間にか、外堀は埋められてしまっていました。

 これではもう、『大丈夫』だなんて言えません。


 私がどう動くべきか困っていると、何故かハルくんが立ち上がろうとされました。もしかして、オウジくんがいいと勘違いされてしまったのかもしれません。

 ハルくんとオウジくんのどちらがいいと言われたら――それは勿論、彼がいいに決まっています。

 私は、彼のジャージの裾を引っ張りました。


「……私は、ハルくんにお願いしたいです」


 私は、一体どうしてしまったのでしょう? 

 心臓の鼓動が、いつもより早い気がします。恥ずかしくて、どきどきして、ハルくんの顔が見れません。

 私は下を向いたまま、ハルくんの首に手を回して、それから体を預けました。

 ハルくんは私の足を抱えると、ゆっくりと立ち上がられました。


「きゃっ」

「大丈夫?」

「は、はい。大丈夫です……」


 どうしましょう。

 マリは私を前で抱えてくれることもあり、背負われる経験は子供の頃しかなかったので、背負われた後に足を大きく開くような格好になっていることに気付いた私は、時間の経過とともにどんどん恥ずかしくなってしまいました。


 周りの方は気にされていないようですが、私は、顔から火が出てしまいそうでした。

 私を背負われている分、ハルくんが山を登る足取りは少し遅くなります。そんな私たちの班を追い越していく、他の班の方々の視線――こんなもの、気にしないというのが無理に決まっています!


 私は顔を隠すように、ぎゅっとハルくんの身体に回す手に力を込めて、それから自分の顔が彼らに見えないよう、少し頭を下げました。


 恥ずかしい。……やっぱり、すごく、恥ずかしいです。

 楽しい遠足のはずなのに、全く心が休まりません!



 山頂に着くと、学校側から案内があり、昼食をとることになりました。

 先ほどお世話になりましたし、私はハルくんと一緒にご飯を食べたかったのですが――おかしいです。ハルくんの姿が見当たりません。


 もしかして、私は避けられているのでしょうか。足の痛みを隠していたことで、ハルくんを怒らせてしまった……?

 私がそんな考え事をしていると、ヒメさんがふふっと楽しそうに笑って、私におっしゃいました。


「コトノさんって、Sくんと仲いいんだね」

「えっ?」

「だって、普通あんなふうに自分から申し出ないよ」


 私には、『普通』がわかりません。


「他の人にからかわれるかもしれないし、傾斜は緩やかといってもおんぶして登るのはつらいと思うから。それでも、コトノさんのために動いてくれたんだね」


 さっきのハルくんの行動は、『普通』の男の子の行動ではなかったようです。つまりハルくんは――自分より、私を優先してくれた、ということでしょう。


「おうちの人は、あとで来るんだよね? じゃあ、ご飯は一緒に食べれる?」

「はい。大丈夫です」


 爺やに迎えは頼みましたが、迎えが来るのはまだ先です。ご飯までは、私は皆さんと一緒にいられます。


「だったら、Sくんのところに一緒に行かない? みんなでご飯食べようよ。ね?」


 ヒメさんはそう言うと、自然に私の手を取りました。


「うーん。Sくんいないなあ。どこに行ったんだろう」

「見つけました!」

 

 ヒメさんと、ハルくんを探して数分。

 私は、ようやくハルくんの姿を見つけました。彼は、どうやらオウジくんと一緒にいるようでした。


「じゃあ、コトノさんがSくんにお願いしてきて!」

「えっ?」

「私より、コトノさんが頼んだほうが頷いてくれると思うし」


 そうでしょうか?

 私には、とてもそうは思えないのですが――。


「あの……! ハルくん。私と一緒に、ご飯を食べてくれませんか?」


 私がハルくんにお願いすると、何故かオウジくんが、ハルくんにぼそっとこうおっしゃいました。


「大変だね、ハル。コトノさんと二人っきりでご飯なんか食べたら、他の男子の注目の的になっちゃうね」

「……」

「でも僕がいたら、少しは緩和されると思わない?」


 二人の話を踏まえると、どうやら私がお誘いする前に、ハルくんはオウジくんにお誘いを受けていたようです。……なぜでしょうか。もし私が誘わなければ、ハルくんがオウジくんと二人だけで一緒に食べていた可能性もあったかと思うと、なんだか胸がもやもやしました。


「私も一緒に食べたいんだけど、ご一緒してもいいかな? ハルくん」


 ヒメさんが、ひょこっと私の後ろから現れて微笑まれます。

 ハルくんは、返答までに少し時間をかけられました。


「……わかった。みんなで食べよう」



 学校での遠足では、1人が座れる大きさの小さめの敷物を持っていくのが普通なそうなので、私も今日のために、初めて一人用のものを購入しました。

 小さなお花柄の、可愛い小さな敷物です。ハルくんはイメージ通り、無地のもののようでした。


「……お前も花柄なのかよ」

「えっ」

「?」


 ハルくんの指摘を聞いて、私がオウジくんのほうを見ると、オウジくんの敷物も私と同じような花柄でした。

 オウジくんは珍しく、なぜか慌てたご様子です。


「い、妹のを間違えて持ってきたみたいだ! 次からは気をつけないとだね! うん!!」


 続いて、オウジくんのお弁当ですが――こちらも可愛いお弁当のようでした。


「お前の親、えらく可愛い弁当作るんだな」

「ど、どうやら妹のと間違えたみたいだ……」

「オウジの妹も今日は遠足なのか?」

「……」


 オウジくんは何故か、ハルくん質問には答えられませんでした。


 そういえば、オウジくんは少し他の男の子とはどこか違う気がします。

 可愛い、というか――興味や関心としての視線は感じるのですが、視線が優しい? 気がするんです。

 ただそれは、ハルくんの視線とも少し違って――……私が一番オウジくんと似ていると思うのは、ハルくんよりヒメさんかもしれません。


「コトノさんのお弁当は……」


 そんな事を考えていると、ハルくんが私の弁当に注目されました。

 

「おいしそうだね」

「はい。料理長のお手製なんです! ハルくんも召し上がられますか?」


 私が作ったものではありませんが、大好きな、自慢の味です。

 私は、ハルくんにお弁当を差し出しました。


「……じゃあ、卵焼きをもらおうかな」


 ハルくんは、私のお弁当から卵焼きを一つ取って――。


「これ、美味しすぎる!!!」


 と、おっしゃいました。


 そうでしょう。そうでしょう!

 私は、私の大好きなお料理の味を褒められて、自分のことのように嬉しくなりました。それに、ハルくんが私と同じ物を『美味しい』と思ってくれたのも嬉しいです。


「ふふ。そう言っていただけて嬉しいです。前日から用意して作る必要があるそうなので」

「すごいね」


 ハルくんとそんなやりとりをしていると、先生が見回りにやって来られました。


「おっ。ハルは女子と食べてるのか。モテモテだな〜」

「……先生、そういうのはやめたほうがいいですよ」

「そうか。すまんすまん」


 先生は、次に私を見て尋ねられました。


「コトノ。お前もみんなと楽しめてるか?」


 今日ハルくんと同じ班で遠足にこれたのは、先生のおかげです。

 怪我をしたり恥ずかしいと思うこともありましたが、この日の徒歩での遠足は、初めてでしたがとても楽しいものに思えました。


「……はい。みなさんと、仲良くなれて嬉しいです」


 私は笑って、そう答えました。


✿✿✿


今回のお話についてなのですが、最近ハルくんとあまりお話が出来ていないこともあり、遅くなってしまいました。申し訳ありません。】



 コトノさん――もとい、高嶺さんの日記が更新されると、コメント欄が一気に騒がしくなった。



【エンダァァァーーーー!!!!】

【末永く爆発しろ】

【甘酸っぱい青春。懐かしいなぁ。俺も遠足で美少女をおんぶしたんだった】

【わかりやすい嘘をつくな】


【やっぱハルさん、性格がイケメンだな。主人公視点だからそう思うのか?】

【これ寧ろ、教師がハルさんにちょっと手のかかる子押し付けてることになるのでは?】


 今回の小説【仮】には、考察勢も居るようだった。


【一つ気付いたんだけど、この先生のコメント→「ああそうだ。次の遠足、コトノ『も』ハルと一緒のほうがいいか?」ってさあ。つまり、コトノさんの他にハルさんと一緒がいいって言ってた女子がいた可能性ない?】

【女子って、この班だとヒメさんだけだよね? と、いうことは――】


 俺は、それはないだろう、と思った。だいたい俺は、姫野さんと殆ど話したことがない。そもそも俺は、学校でクラスメイトの女子と談笑するようなタイプではない。


【外見はわからないけど、ハルさんが面倒見良さそうなのは確か。妹いるお兄ちゃんっぽい】

【我慢してるとこに、ちょっと怒ってるっぽいの逆に好き】

【ちゃんと痛いって言わなかったから怒ってるよね。これ】

 

 改めて指摘されると恥ずかしい。確かに指摘のとおりだけども! 

 だって、今彼女とちゃんと話せるのは俺しかいないのに、その俺に頼ってくれなかったのは、ちょっと悲しいなって思うだろ?


【ハルくん、もしや隠れ人気あるタイプ?】

【善意が押し付けがましくない感じするし、グイグイいく男よりかは、静かなタイプの女子からはウケがいいのか?】


 この考察は、正直俺はよく分からなかった。

 中学までの地元の公立小学・中学の女子と比べて、今俺が通う私立高校に落ち着いている人が多いのは確かだが、それが理由で俺が評価されるとは思えない。


「……話をそらそう」


 ユーザーネーム『甘味好き』。

 俺は、ポチポチとスマホでコメントを打ち込んだ。


【甘味好き≫コトノ:怪我は大丈夫ですか? 足の怪我、早く治るとよいですね。ちなみに、話せないというのは、彼に何か問題があるんでしょうか? 顔を合わせづらい……みたいな。】


 高嶺さんは、俺の正体を知らない。だから、匿名で聞くのは本当は反則だ。

 だが、お嬢様学校から単身今の学校にやってきて、『普通』がなにか悩んでいる彼女をサポートするために、俺は今だけは、ちょっとしたズルは許されたいと思った。


【コトノ≫甘味好き:ありがとうございます。ハルくんは何も悪くないんです。ただ、私が恥ずかしくなってしまって……! 連絡先も知らないですし、お話しできるのは学校や通学の時だけなので。】


 文字だけで、画面の向こうにいる彼女がどんな顔をしているのか俺には想像できた。

 ……確実に、恥ずかしがりながらこの文章を打っている。

 俺が彼女の姿を想像して、思わず表情筋を緩めていると、ほかの読者たちもコメントを打ち込みだした。


【作者が可愛い稀有なWEB小説】

【おかしいな。小説家なんて陰キャが基本だと思うのに、なんだか今だけはキラキラして見えるんだ】

【それは偏見だろ……偏見、だろ?】


 まるで、どこぞの掲示板のような文字が並ぶ。

 そして、今日の彼女の日記(小説)の、読者コメントのファインプレー(読者目線)は、確実にこれだった。


【じゃあ、明日連絡先を聞いてみるのはどうでしょう? 作者さん、文字を書くのは慣れてると思うし。話すより、言葉のほうが伝えられそう。そしたら学校であまり話せなくても、お話の続きは書けますよね?】


【コトノ:確かにそうですね。わかりました。明日、頑張って聞いてみます!】


 どうやら俺は、明日高嶺さんに連絡先を聞かれるらしい。


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