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第28話 王女救出作戦

――無名とセニアが魔国へと足を踏み入れた頃。


アルトバイゼン王国では王女救出作戦がいよいよ開始されるところであった。


「我が国は魔族に蹂躙され勇者の一人は殺された。それに加えて我が娘ラクティスが連れ去られた!娘の命は君たちに委ねられている。頼むぞ……」

国王であるクライスが悲痛な面持ちで王国の玄関口である防壁の門前に集まる者達に声を掛ける。


集まったのはおよそ八百人からなる王女救出部隊だ。

可能なら千人は集めたいところだったが、魔族に蹂躙されたこともあり、これ以上救出部隊に人員を割くことができなかったのだ。


部隊を率いるのは剣聖ランスロット・リベリオン。


爵位持ちの魔族に敗れてから鍛えに鍛え、剣の腕は更に昇華されている。


そしてもう一人、副隊長として任命されていたのは黒峰拓斗だった。


剣帝の勇者の力を得た彼は、まだまだ剣聖の足元にも及ばなかったが、今では更に強くなっている剣聖と互角以上に渡り合えるだけの実力を身に着けていた。


それも全ては無名に追いつくため。


黒峰はずっと道半ばでこの世を去ってしまった同郷の仲間の事が頭から離れなかった。


無名のような力があれば斎藤大輝が死ぬことはなかっただろう。

だから必死に訓練に明け暮れた。

その結果、剣聖に認められるどころか免許皆伝を言い渡されるほどに成長していた。


ランスロットと黒峰。

二人を筆頭にした救出部隊にはまだ他にも強力な戦力が加わっていた。


「おい、ジェシカ。この依頼ほんとに大丈夫なんだろうな?魔国まで王女を助けに行くって結構な難易度だぞ?」

「流石に冒険者である私達を捨て駒にするような真似はしないでしょ。この救出部隊の三割は冒険者なんだから」

冒険者パーティー"銀色の夜明け"のクロウとジェシカだ。

無名やドレイクといった強者ばかりに目がいくが、レベル4の冒険者というのも十分ベテランの領域である。


「そう心配しなくていいよ。私達もいるんだから」

「レイラさん……確かにそうっすよね。"紅き旋風"の方々もいるんだし、捨て駒なんて有り得ないっすよね!」

不安そうな表情を浮かべていたクロウの肩に手を置き、安心できる言葉を投げ掛けたのは"紅き旋風"のリーダーでもあるレイラだった。


レイラのレベルは5。

セニアともライバル関係にあるベテラン冒険者だ。



「開門!!」

魔族の襲撃により数多の傷がついている古びた門がゆっくり開かれると蹄鉄の音が鳴り響く。

八百もの兵士の出立はなかなか壮観であり、見物人も多く集まっていた。



「王女様の救出か。魔族との戦闘は避けられないし、白馬の王子様にでもなった気分だな」

「不謹慎よクロウ。誰が聞いているか分からないんだから言葉に気をつけなさい」

「大丈夫だって。これだけ周りが煩かったら聞こえやしないさ」


王国から魔国まではそれなりに距離がある。

大人数の移動ということを考慮し、およそ四日から五日はかかる計算だった。



「長旅になるな……」

「ラクティスさん無事だったらいいけど」

「大丈夫だって!ラクティスさんは人質なんだし攫った魔族だって殺してしまったら人質としての価値がなくなるのは理解しているでしょ」

不安そうな表情を浮かべる朝日莉奈とは対象に明るくそう零したのは三嶋茜だった。

そんな二人をなんとも言えない表情で見つめる黒峰拓斗。


楽観的なところは長所であり短所でもある茜は事あるごとに無名とぶつかっていた。

その事を思い出し黒峰は苦笑いを浮かべる。


「莉奈、万が一の時は茜を守ってくれ」

「もちろんです。前と違って今なら離れた場所にも結界を張ることができますから」

莉奈と茜もそれなりに成長はしていた。

黒峰ほどではないが、勇者と言われる程度には自身に与えられた能力を十全に発揮している。



「黒峰、魔国に入ったら恐らく魔族の襲撃が予想される。陣形は絶対に崩すな」

「分かってます。魔族の恐怖に打ち負けるような訓練は受けてきていませんから」

魔族は怖い。

王国を壊滅にまで追いやった魔族に恐怖の感情が芽生えていないかと問われればそれは嘘だ。

ただの強がりでしかないが、救出作戦の主戦力でもある黒峰はそんな事も言っていられない。

だから自分を奮い立たせてランスロットに言葉を返した。


「ランスロットさんは怖くないんですか?」

「怖くないわけがないだろう?鍛えてきた自分の剣技が何一つ意味を成さなかったのだから。しかし、あれからまた強くなっている。そう簡単に負けるつもりはない」

「俺もですよ。……無名に負けていられないし」

「無名、か。彼は今頃何をしているんだろうか。噂では獣王国に邪龍が現れたと聞いたが」

「案外その邪龍と戦っていたかもしれませんよ。ああ見えて意外と情に流されやすいですからね」


二人の談笑から聞こえてきた名前を耳にしたのか、茜は突然不機嫌になった。


「茜さん、どうしたんですか?」

「ん?いや!なんでもない。……ちょっと嫌な奴を思い出しただけ」

「……それって神無月さんですか?」

「そっ。アイツあんな力があるのに王女様の救出に向かわないなんて力の持ち腐れじゃん。あんな飄々としてさ、アタシ達より強いなんて納得できない」

無名の強さだけは茜も認めていた。


ただ性格だけはどうしても合わなかった。



――――――


王都出立から四日後。

いよいよ魔族領を目前(もくぜん)にしてみな息を呑んだ。


表現し難い異様な空気感。

不気味な紫色の空に紫がかった岩肌。

異質な光景に自然とみなの足が止まったのだ。


「これが魔国……想像通りだ」

黒峰は元の世界で見たことのあるアニメや漫画を思い出していた。

魔界と呼ばれる不気味な領域は人が住める場所ではない。

その理由の一つに空気中に漂う魔素の濃度にあると言われている。


無機物ですら濃い魔素の影響を受けて色が変わるほどだ。

人間のような弱き生物では長くはもたないだろう。


ただ、例外はある。

勇者や魔女、高レベルのエルフのような魔力の器が大きい者であればさほど影響はないのだ。


この中でその基準を満たせるのは一人もいない。

つまり、長居はできないということであった。



「ここから先は魔族領になる!長くとも一週間の滞在が我々の限界だ。帰りの時間を考慮すればおよそ三日から四日。その間に王女殿下を見つけねばならないが……茜、頼めるか?」

「任せて!」


闇雲に探した所で広大な土地の魔族領を王女一人見つけるのは至難の業だ。

そこで考案されたのは茜の飛行魔法に頼る策だった。



「じゃあ行ってくる!」

「気をつけろよ。敵は魔族だけじゃない。空を飛ぶ魔物だっているからな」

「大丈夫だよ黒峰さん!アタシだってまだ死にたくないし」

茜が意気揚々と飛び上がり凄い速さで魔族領へと飛翔していく。


茜の飛行魔法なら長時間飛ぶことが可能だ。

非凡な魔力量を持ち空の勇者である茜にしかできない索敵。


空を飛び回り王女の魔力を探知でき次第即帰還。

そして救出部隊はそこを目指して一直線に向かうという内容だった。




茜が魔族領へと飛び去ってからおよそ一時間。

待っている者としては茜の安否が気が気でない。

黒峰も落ち着かない様子で立ち上がったり座り込んだりとその場でウロウロする始末。


「黒峰、もう少し落ち着くんだ」

「ランスロットさん……でも茜の戦闘能力は下位の爵位級魔族とようやく互角です。高位の魔族に襲われたら……」

「信じて待つしかない。我々には長時間飛ぶ能力はないだろう?」

ランスロットにそう言われ、黒峰は深いため息をついて座り込む。


茜が戻ってこればいよいよ救出作戦の開始だ。

兵や冒険者達は英気を養うため、食事を済ませ今か今かと彼女の帰還を待つ。




茜が姿を見せたのは飛び去ってからおよそ六時間後のことであった。

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