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第3章 第1話 『ただいま異世界その③』

第3章 第1話 『ただいま異世界その③』




時を同じくして、2月16日



西の国グマチヤ とある集落



「わ、私の家がぁ………。」


 ここは西の国グマチヤ連邦国。マカヤオ皇国やラズシーマ王国より西に位置する国である。国とは言ったものの、グマチヤはいくつもの種族がそれぞれ集落を作っており、それぞれ独立した生活を送っている。

 ラズシーマ王国やマカヤオ皇国と大きく異なる点がもう一つ存在する。それはこの国が獣人族の国ということである。かつての大戦で、ラズシーマ王国から追い出された獣人族を含め、多くの獣人がこの土地で暮らしていた。

 そしてこの2人もまた獣人族である。


「お姉ちゃん‼︎早く行こ‼︎」


「待って。すぐ行くから。」


 ここはとある集落の外れにある一つの民家。この民家にはとある兄弟が2人だけで暮らしていた。


「今日は何を採りに行くの⁉︎」


「ん〜⁇昨日は魔石を掘りに行ったから、今日は山菜でも採りに行こうかなって思ってる。」


「わかった‼︎じゃあ先に山登ってるね‼︎」


「すぐ行くってば‼︎ほんとせっかちだなぁ。」


 この2人の住む民家は集落とは少し離れているが、周りには豊かな自然が溢れかえっていた。毎日色んな物を収穫しては村に売りに行く。こうして生計を立てているのである。

 姉は中学生。弟は小学生くらいの年齢だろうか。働くには早い年頃だが、2人はこの生活になんの苦も感じてはいなかった。




「またあったよ‼︎フキ‼︎」


「お〜。今日は順調だねぇ。」


 2人が山についてまだ10分程度しか経っていないが、次々と山菜を見つける弟。

 くんくん、と鼻を動かす。2人の頭には大きな耳が垂れ下がっており、長い尻尾も見られる。獣人族ならではの特徴である。どうやらこの2人の種族はとりわけ鼻が効くようで、山菜を見つけるにもなかなか理にかなっている種族なのかもしれない。

 いつもと変わらない。そんな平凡な日が今日も過ぎるのかと思ったその時、



ドゴォォォォォォンッッ‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎



 とてつもない轟音が山中に響き渡った。音のなる方を見下ろすと、家の近辺を中心に爆炎が舞い上がっていることが確認できる。


「………あんたが急かしてなかったら、今頃私たちバラバラに吹き飛んでたかもね。」


 姉は呆気に取られ、呆然と立ち尽くした。


「お姉ちゃん‼︎行ってみよう‼︎家が大変だよ‼︎」


「バカっ‼︎フィーブ‼︎危ないからダメだって‼︎」


 弟があまりに何も考えず、足早に爆心地に向かっていくため、姉は多少取り乱してしまった。こうなっては弟を追いかけるしかない。




「わ、私の家がぁ………。」


 当初は心配していたが、特に誰かがいる気配もなく。ただただ無惨に吹き飛ばされ、粉々になってしまった家だけが、そこに取り残されていた。


「これからど〜すんのよ私たち…。メイおばさんなら泊めてくれるかなぁ。」


 すっかり意気消沈し、座り込んでしまった姉。


「大丈夫⁇お姉ちゃん⁇」


「大丈夫なわけないでしょぉ‼︎家が更地になってんのよ⁉︎なんであんたはそんな感じなのぉ〜。」


 幼い弟はことの重大さがまだ呑み込めてないのだろう。姉は必死に今後の指針を立てようと考えを募らせようとした瞬間、


「悪りぃ悪りぃ。巻き込まれてねぇよな⁇」


 誰かがこちらに向かって声をかけながら走ってきた。姉は瞬時に立ち上がり、弟を背中の後ろに隠し、戦闘態勢を取る。


「あなたですか‼︎私たちの家吹っ飛ばしたのは⁉︎」


「いや〜こんな外れに民家があると思わなくてよ。魔法を放つ瞬間に見えたんだが、もう間に合わなくてな。そのままドカンよ。がっはっは。」


「笑い事じゃないですよ‼︎どうしてくれるんですか⁉︎」


 その男は鍛え上げられた腹筋を見せ、黒髪の頭からは大きなツノが2本生えている。そして一際凄いのが巨大な鎌である。まるで死神が持っていそうな狂気的な見た目をしている。


「まさか………。魔人族ですか⁇」


「あぁ。心配すんな。ハーフだよハーフ。普通にこの国の人間だ。それよりお前ら怪我とかしてねぇのか⁇」


「大丈夫だよ。僕たち山に山菜取りに行ってたから。」


 弟がなんら怖がることもなく、ひょこっと顔を出して返答した。


「そっか。そりゃ良かった‼︎いや〜悪りぃなホント。」


「いや、悪りぃで済まさないでくださいよ‼︎こっちは住むとこがなくなってんですよ⁉︎それに悪りぃって謝り方私めっちゃ嫌いなんですけど‼︎ホントに反省してます⁇何謝る時までカッコつけてんですか‼︎」


「かっこなんかつけてねぇって‼︎わかった‼︎わかった‼︎ちゃんと弁償するから‼︎」


 こうしてひとまず姉の怒りは収まった。にしてもこの男、何者なのだろうか。


「………2人の名前、教えてくれねぇか⁇俺もちゃんと自己紹介するからよ。」


「………ラギ・サンバード。」


「僕はフィーブ・サンバード‼︎」


「ありがとな‼︎俺はリューキ・スカルスガルドだ。よろしく‼︎」


「えぇ⁉︎」


 姉は絶句した。実はこの男。なの通った男であった。なんと西の国の武闘会でチャンピオンに君臨するこの国一の強者、リューキ・スカルスガルドである。


「やべえ。ホントに異世界だ。何言ってるかわからん。」



「「「⁉︎」」」


 ラギ、フィーブ、リューキの3人は声のする方へ目をやった。そこには服がボロボロで今にも倒れそうな男、昴駿太郎。瑞樹の大の親友である彼が立っていたのである。




「………まさか⁉︎お前、副産物か⁉︎」


 今ここに前代未聞の凸凹パーティが結成された。

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