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第2章 第1話 『東の国マカヤオ』

第2章 第1話 『東の国マカヤオ』




時は少々遡り、2日前



ヴァニシウス暦601年2月16日




東の国マカヤオ、とある地下施設



「皆さん。今日はお集まりいただきありがとう。」


 ここはラズシーマ王国より東に位置する国、マカヤオ皇国である。この国は現在、ラズシーマ王国と、もはや戦争状態に近い関係となっている。その戦いを指揮している男こそが、今言葉を発した人物であった。


「知らない者もいるでしょうから自己紹介を。私はこの国の宮廷魔導士カデンス・パイロネットです。」


 全身を白色の装飾で纏い、髪色まで白である。まさに魔導士といった容姿をしている。


「もちろん知ってやすよ。魔法の腕は超一流。限られた人間にしか使えない唯我魔法も、とても得体が知れず、恐ろしい物を持ってるらしいじゃないですか⁇」


 別の男が言葉を返した。その場にはその男の他に2人の男が立っている。3人とも一定の間隔を取って横に一列に並んでおり、それぞれバラバラな服装をしている。1人は傭兵のような格好。1人は盗賊のような格好。もう1人は商人のような格好である。実はこの3人はカデンスによりこの場に招待された者たちである。


「そんなに私の唯我魔法に興味がおありでしたら、試してみせましょうか。」


「いやいや、そんなつもりで言ったわけじゃ………あっ、あがぁっ‼︎」


 突然、話をしていた商人の男が苦しみ出した。凄まじい形相で首元を押さえている。どうやら呼吸ができないらしい。今にも気絶寸断といったところで、


「おっとすみません。試す程度でしたが少々やりすぎましたね。」


 商人の男は大量の汗をかきながら倒れ込んだ。ひぃ、ひぃ、と必死に酸素を取り込んでいる。


「他に私の魔法を試したいものはいませんか⁇」


 残りの2人は無言を貫いた。盗賊の男はあまりの恐怖にゴクリと唾を飲み込む。


「では本題に移りましょう。今回の依頼はラズシーマ王国の冒険者ギルドにいる、大魔法の副産物を捕らえてくることです。賞金は5000万ゴルドー差し上げます。」


「ラズシーマ王国⁉︎聞いてないぞ‼︎」


 盗賊の男が慌て始めた。すると傭兵の男が続けて話し始めた。


「依頼は引き受ける。だが問題は金の方だ。本当に5000万ゴルドーきっちり貰えるんだろうな⁇」


「当然。依頼をこなしてさえすればお支払いいたします。」


「あんたは国の正式な要人だが、はっきり言って良い噂は聞かねぇ。俺たち裏社会の人間に依頼するのも、利用するだけ利用して後で始末するためなんじゃないのか⁇」


「そっそうだ‼︎そうだ‼︎」


 傭兵の追求に、未だに膝立ちでへばっている商人の男も便乗して叫ぶ。


「………では私にどうしろと⁇」


「半分の2500万を前金にしろ。」


「その金を持ち逃げするつもりじゃないでしょうね⁇」


「だから依頼は完璧にこなすと言っているだろ。」




「イヤ……………ウソダナ。」


「「「⁉︎」」」


 その場にいる3人が同時に構えた。突然知らない人物の声が地下の一室に響き渡った。


「なるほど。それは残念です。」


「待て‼︎どこのどいつだ⁉︎俺は嘘なんかついてな、、、あ、」


 今度は傭兵が苦しみ出した。腰に携えた剣を抜こうとするも力が入らないのだろうか。全く身動きが取れない。


「そちらのあなたも先程不満を仰っていましたね。」


「ひいぃぃぃ。やる‼︎やるよ‼︎金は後でいい‼︎」


「ソレモウソダ………。ソイツハイライヲウケルツモリガナイ。」


「なるほど。それは残念です。」


「待ってくれ‼︎信じてくれ‼︎俺はっ‼︎」




数分後。




 先ほどと同じ地下の一室。商人の男と傭兵の男はその場に倒れ、ぴたりと動きを止めていた。唯一盗賊の容姿をした男だけが無事のまま立ちすくんでいる。


「残ったのはあなただけですが、どうしますか⁇」


「や、やります………。引き受けます。」


「………。」


「どうですギルザックさん⁇彼の言うことは信じて良いんですか⁇」


 カデンスは天井の方を見上げながらそう声をかけた。どうやら謎の声の主はギルザックという名でどこか別の場所から様子を伺っているようである。


「………。ハイ。カデンスサマ。ソイツハウソヲツイテイナイ。」


「ほぅ。そうですか。ありがとう。ではなに盗賊団でしたっけ⁇」


「レ、レイブン盗賊団です。」


「レイブン盗賊団ですね。失礼しました。依頼の方、よろしくお願いしますよ。」




「…本当に嘘は言っていないんですね。」


 盗賊の男が帰った後、カデンスはギルザックと呼ばれていた男に確認をとっていた。ギルザックと呼ばれる男はカデンスとはうって変わり、ガッチリとして筋力のありそうな大男体型である。猫背で肌は若干黒く、顔には複数の傷や鉄のギプスのようなものがついている。静かだがどこか凶暴性を感じる容姿である。


「アイツ…トウゾクダンノ、リーダージャナカッタ。タダノシタッパ。ヨケイナコトハイワズ、ゼッタイニイライヲ、ヒキウケテコイ、トメイレイサレテイタ。」


「…なるほど。中々面白いですね。もしかしたらあなたの能力のことをどこかで聞いたのかもしれません。」




同時刻

マカヤオ皇国、とある通り


「なるほど。心を読むやつがいるのは本当だったんだな。でかした‼︎」


「いや、マジで怖かったっす。もうあんな仕事は受けたくない。」


 そう会話をしているのはレイブン盗賊団のリーダーと先程地下で依頼を受けた下っ端である。


「なんでお前じゃダメだったんだ⁇」


 横で壁にもたれかかっている男はおそらく盗賊団の参謀だろう。


「そりゃおめえ。俺はいつかこの国を乗っ取るつもりでいるからな。そんなのが漏れたらやばいだろ⁇」


「はぁ。どこまでが本気なんだかわかんねぇよ。」


 参謀の男は呆れきった返事をした。


「だがラズシーマ王国ってのは驚いたな。こいつはかなりの大仕事になりそうだ。」


「それからリーダー。カデンスの野郎から助っ人を貰いました。」


 下っ端の男がそう発言すると後ろからある人物が近寄ってきた。


「助っ人だぁ⁇………ってもしかしてあんた………⁉︎」


 リーダーはその人物を見た瞬間、あまりの驚きに絶句してしまった。

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