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第1章 第18話 『唯我魔法』

第1章 第18話 『唯我魔法』




王都ラズシーマ繁華街外れ

ハーフエルフキャバクラ「ユグドラシル」



2月18日20時



「魔法の訓練⁇ここでですか⁉︎」


 ミズキは思わず聞き返した。ここはキャバクラ店内、魔法をぶっ放すようなことをすればめちゃくちゃであろう。まさかアンドレア騎士長、酔っ払っているのだろうか。


「そう身構えるな。座学だよ座学。一つずつ教えてやるから。」


「なんだ。そういうことですか。ありがとうございます‼︎」


 はじめて会った時は質問責めをして怒られてしまったが、蓋を返せばアンドレアの方からいくつも大事な話を聞けている。今日聞いたことはきちんとスマホのメモに取っておこう。いや、いつ充電が切れてもおかしくない。きちんと紙のメモを用意すべきだな。とミズキは思った。


「なんだかんだ言って、今日は色々教えてくれてありがとうございます。」


「いや、当然のことだと思ってよ。思い出したんだ。俺もはじめてここに来た時、右も左も分からず、同じように戸惑ったなぁってよ。」


 アンドレアも元々この国の人間ではなかったのだろうか。気になるところだが、魔法の話をご教授いただく方が先である。


「まず魔法には大きく3つの種類がある。1つ目は強化魔法。基本的には身体を強化する魔法で1番基礎的なものだ。魔法を使える人間は大抵使えると思って良い。もちろん練度は人によって異なるが。」


 やはり何かにメモを取っておきたくなったミズキは、結局スマホを取り出し必死に指を動かした。


「例えば筋力を強化することで跳躍力をあげたり、身体の強度をあげたりすることもできる。他にも視力を強化したり、俺たちが今できてるように多言語間での翻訳も自動ですることができる。」


「翻訳のことで聞きたいことがあったんですけど、異世界から来た自分の言語をなぜアンドレアさんたちは理解できるんですか⁇」


「詳しいことは術式を作ったやつにしかわからないが、あくまで脳がそう読み取っているだけで、俺たちが直接ミズキの言語を喋れたり理解できているわけじゃないんだ。だからその言語にしかない言葉だったりは、たまにバグが発生する。意味が近い言葉に翻訳されることもあれば翻訳されずそのまま言葉だけが伝わる場合もある。」


 確かに"コンタクト"の話をした時はそのまま言葉が伝わっていたような気がした。この世界にコンタクト、あるいはそれに近いものが存在しないということである。

 しかし、それにしても脳が勝手に変換してくれるというのは便利すぎて恐るべき魔法である。つい今アンドレアが発したバグという言葉も自分にわかりやすく変換されたのだろう。この世界にバグという名称があるわけがない。

 ん⁇コンタクト⁇

 翻訳魔法に感動を覚えていたところで、ミズキはふと思い出した。


「ってか今視力も強化できるって言いましたよね⁉︎」


「あぁ。俺も本気を出せばかなり遠くまで見れるぜ。」


 来たぁぁぁぁぁ‼︎ようやく1Dayのカピカピコンタクトレンズとおさらばできる‼︎

 ミズキはこの日1番のガッツポーズを全力で取った。


「2つ目は属性魔法と言われるものだ。水、火、風、土の4種類の属性があり1人1つ以上発動することができる。」


 属性系は王道である。中々面白くなってきたぞ。魔法講座。


「どれでも発動できるんですか⁇」


「言葉が足りなかったな。大体普通の人間はランダムでどれか1つ使えるってとこだ。ごく稀に才能のある人間は2つ使えたりするぜ。」


 なるほど。自分の属性が何なのか非常に気になるとかではあるが、その前に。


「アンドレアさんは何と何が使えるんですか⁇」




「ん⁇俺か⁇俺は4種類全てを最大火力で発動できるぜ。」





21時


 気がつけばアンドレア。ルイス。カヤ。3人ともご就寝のようである。アイミーは相変わらずハーレム状態を楽しんでいるようだが、そんな中、突然入り口付近で男が叫び出した。


「メグちゃんを出せって言ってんだよ‼︎」


「申し訳ございません‼︎別のお客様が指名中でして………‼︎」


「んなこたぁど〜でもいいんだよ‼︎‼︎この店が誰のおかげで営業できてると思ってんだ‼︎闇市場を支配してる俺の親父の援助がなきゃあ、こんな店潰れてお前らの生活もおしまいだってことわかって言ってんのかあぁん⁉︎」


 どうやら典型的なクズ野郎が来店してしまったらしい。あぁ関わりたくない。関わりたくない。ミズキは目を逸らした。


「………アイミー様。申し訳ありません。あちらのお客様のお相手をしてきてもよろしいでしょうか。」


 どうやらメグちゃんはアイミーのすぐ隣にいる女性だったらしい。声も身体も震えており、正直見てられない。相当あの男にいつも酷いことをされているのだろう。

 するとアイミーが無言で立ち上がった。片足を机につき、ズボンのポケットからキセルのようなものを取り出した。

 何この子⁉︎未成年でキャバクラに来てタバコまで吸ってんの⁉︎ミズキはドン引きである。


「おい‼︎副産物の。」


「え。自分ですか⁇」


 ミズキはアイミーと目が合いようやく自分のことだと気付かされた。なぜこのタイミングで自分が呼ばれなければならないのだろうか。


「さっきアンドレアと魔法について話していたな。………レッスンの続きだ。アンドレアが寝落ちしてしまって話せなかった3つ目の魔法について教えてやる。」


 そう告げるとその場の空気が一瞬にして変化した。膨大でとてつもない何かが起きようとしていることは確かである。

 すると短パン小僧のクソガキは、静かな声でこう呟いた。





「……………唯我魔法。」

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