第1章 第17話 『ハーフエルフキャバクラ』
第1章 第17話 『ハーフエルフキャバクラ』
2月18日19時
王都ラズシーマサウスサイド繁華街外れ
「………かなり歩かされてますけど。まだですかね⁇」
「キャバクラなんて中心街にはないからな。ましてやハーフエルフのいるキャバクラだし。」
ミズキたち御一行は会議終了後、短パン小僧のアイミーに連れられ随分と歩かされていた。目的地はハーフエルフの女性で構成されているキャバクラらしい。
こんな子どもが入っていい店なのだろうか。この世界、なんと不健全なんだ‼︎許せん‼︎
「お前いま、クソガキのくせにキャバクラなんか通いやがって、羨ましい〜〜〜‼︎って思っただろ。」
「お、思ってないですよ⁇全然。」
こいつ心が読めるのか⁉︎これも魔法の力⁉︎
「大体誰がクソガキだって⁉︎」
「いや、別にクソガキなんて言ってませんから‼︎それ言ったのあんた自身だよね⁉︎」
「毎回思ってるけどお前、その見た目で子どもに誤解されるのは自業自得じゃね〜か。」
アンドレアが弁明した。ん⁇子どもに誤解される⁇この姿が真の姿じゃないパターンなのか。なんとなくミズキは理解した。
一つ合点がいったが、ミズキはもう一つ気になる点があった。それはアンドレアが発言した「ましてやハーフエルフの」という言い方である。
「話変わりますけどハーフエルフって珍しいんですか⁇」
エルフやハーフエルフが珍しいというのはある意味異世界アニメではお決まりの要素の一つである。
「その辺も少し話すか。ミズキ、この国で今まで人間以外の種族に会ったか⁇獣人族や魔人族に。」
「この国もなにもそんな人たち今までの人生で一度も会ったことないですね。」
「…………まぁそんな奴もいるか。」
そもそも獣人族や魔人族が当たり前なところから説明しないでくれとミズキは本音で思ったが、話が進まないのでそこは仕方なく飲み込むことにした。
「この国は一見平和そうに見えて実は闇が深いんだ。現国王は10年前の大戦で、軋轢の火種となる種族間の争いに決着をつけるべく人間以外の種族全てを追放した。」
だから他の種族を全く見かけないというわけか。そしてハーフエルフが王都の隅のキャバクラで働いているというのもなんとなく理由がわかった。おそらくここは他種族とのハーフには生きづらい国なのだろう。
この話を聞き、キャバクラに行くにしてはミズキは少し、深妙な気持ちになってしまった。
「アイミーロックウルフ様。お待ちしておりました。」
「久しぶりメグちゃん。お迎えありがとう。」
「アイミー様はうちのお得意様ですから。これくらい当然です。」
そこはまさに夢のような空間であった。どこを見ても美しい女性が接客を行なっている。よくよく考えればミズキは現実世界でもキャバクラなんぞ行ったことはない。心臓が破裂しそうなほどバクバクと音を立てている。どうやら先程までの深妙な気分は一瞬で吹き飛んだようだ。
確認するように彼女たちの耳に注目すると、やはり予想通り長細い形状をしていた。エルフといえばやはりこの特徴的な耳である。
「アイミー様‼︎いらっしゃいませ‼︎」
「アイミー様‼︎後ろの方たちは⁇」
「アイミー様‼︎今日はそのお姿なんですね‼︎可愛いです〜‼︎」
ちっ。このクソガキ。なんでこんなに人気なんだ⁉︎
アイミーは席に着くとあっという間に5、6人の美しいハーフエルフたちを指名し、まさにハーレムのような空間を作り上げていた。なんと羨ましいシチュエーションだろうか。
アンドレア騎士団長も、この国一強い男と評されているのである。当然、人気がないわけがない。彼のことを気づいた何人かは歓声をあげている。アイミーが彼を呼んだ理由の一つは、このようにウケがいいからなのだろう。
「僕⁇なに飲む⁇」
「……………あ、あの〜、一応自分成人してるんで、お酒お願いします。1番度数軽いやつで。」
「18歳だったんだ⁉︎ごめんね‼︎」
この世界は18歳から酒が飲めるらしい。にしても自分子どもに見られすぎだろ‼︎せめて18歳には思われてほしかったな‼︎
そんなことを思いながら多少苛立ってしまったミズキは、勢いで酒を注文してしまった。ちなみに彼はかなりの下戸であるため、余程薄い酒でもない限りすぐ気分が悪くなってしまうのであるが………。
「やば………。頭痛くなってきた。」
「ミズキくん。大丈夫⁇」
案の定、ミズキは苦しい局面を迎えていた。
「あ、大丈夫です。カヤさん。ありがとう。………それにしてもこんな訳のわからない店にまで付き合わせて本当にごめん。」
「全然気にしないで‼︎私こう見えてお酒好きだから。むしろ奢ってくれるアイミーさんに感謝してるくらいよ♪」
こんな訳のわからない状況でもどうやらカヤさんは楽しんでいるようで、ミズキは少しホッとした。しかし、玉座での会議の件もあり、カヤさんにはいくつか聞きたいことが山積みであった。このタイミングで聞くのもありかもしれない。
「カヤさん。あの〜………」
「カヤちゃ〜ん‼︎きみもこっち来て話さない⁇」
アイミーからの呼びかけである。あのガキャァ‼︎そんだけいてまだ女性を欲しがるのかよ‼︎
「ごめんミズキくん‼︎私も指名されちゃった。行ってくる。」
こうしてミズキの話し相手はいなくなってしまった。そういえばルイスはどうしたのだろうか。さっと横を見ると机に突っ伏しているルイスの姿があった。彼の飲み物をこっそりと飲む。
「いや、普通にジュースじゃねえか‼︎こいつ………場の雰囲気だけで酔い潰れたのか⁇」
なんとも間抜けなやつである。とても頼れる騎士になれるのか不安である。そういえばこいつに護衛されるのか自分。ミズキはかなり不安になった。
「暇そうにしてんなぁ。」
アンドレアである。ようやく話し相手ができた。
「もう最悪ですよここ。もう少し過激な展開を予想してたんですけど、現実はこんなもんですよね〜。」
ミズキは完全に萎え切っていた。
「気にすんな少年‼︎次があるさ‼︎」
なんのフォローにもなってないし‼︎また少年呼びに戻ってますよ、アンドレアさん‼︎
ミズキは心の中で悲痛な叫びをしたが、当然アンドレアには届かない。
「………あれだな。時間ももったいないしここで魔法の訓練でもするか⁇」
「………え⁇ここでですか⁉︎」




