99本目 人生で一度は行くべき観光スポット教えて!!
「うぅ、助かったよ。マイマイのマネージャー……」
「気にしなくていい」
ダンジョンの奥へと吸い込まれていくオーデュイを壁にぶつかる前にキャッチした。
スライムだし大丈夫なんだろうが、大事なスタッフを怖い目に遭わせるわけにはいかない。
「さすがマイマイのマネージャー! マイマイと同じでマイマイのマネージャーも足早いんだねー。てか、ずっとマイマイのマネージャーって呼んでたけど、マイマイのマネージャーって名前長いからマイマイのマネージャーから呼び方変えていいかな?」
「あ、あぁ。好きに呼んでいい。もうオーデュイも立派な吾妻のマネージャーでバディだしな」
「おぉ〜、やったぁ! んーと、東くん……って、マイマイとややこしいか〜。じゃあ、亮くんで!」
「え? あぁ……」
亮くんって呼ばれるのは初めてだ。
正確には亜澄さんと那緒子さんの保護者にはあるから、同世代では初めてになる。
いや、彼女はまだ知らないが、本当ならば俺たちより10歳年上か。
「うわぁ、それにしてもよく分かんないとこに来たねー。でも、神秘的だぁ〜」
天空遺跡内部の、かなり広い場所に出たな。
本来では光の届かない閉鎖的な空間だが、青く光る苔と魔晶石があるお陰で辺りが見える。
前方にあるのは、祭壇か……?
過去に栄えていた文明の祭祀場だったのだろうか。
そもそもダンジョンに文明とは、よく分からない設定だが。
「とにかく吾妻たちと早く合流しよう。まぁ、無事だろうが何をやらかすか分からない」
「そうだね! 一応動画回す? カメラは無事だよ」
オーデュイは自身の体の中からカメラを取り出した。
いくらでも入る便利な収納スペースが内部には広がっている彼女。
ただ体重は入れた質量分増えてしまうので、必要最低限の物でお願いしている。負担がかかるから、ではなく(一応)女子高生らしく体重を気にするらしい。
「そうだな。この天空遺跡のインサートが欲しい。撮っておいてくれ」
「わかった!」
「──おっと、マジックに撮影は困りますねぇ。何度も見返されてはマズいのですよ。ライスは何度食べても美味しいですけどね」
飛ばされて来た道を戻ろうとすると、ジェントルが帰り道を阻んでいた。
「一人……ってことは、そっちもトラップにハマったか」
「はい。見抜けませんでした。マジシャンとしてまだまだですね。この隠す技術はちゃんと盗まないと」
手を挙げたジェントルの左手には俺たちのカメラが。
「えっ!? 盗られてる!?」とオーデュイがしっかり握っていたはずなのに、無くなっていたことに彼女は驚く。
「何の宝具だ」
「チッチッチッ。タネも仕掛けも、武具も宝具もありませんよ。これはマジックです。いえ、怪盗のテクニックかな?」
彼が左手を翻すと、カメラは消えて無くなった。
どういう仕掛けだ……あと、高級品だぞ。ちゃんと返せ。
「しかし、1対2のこのままじゃ圧倒的に僕の不利だ。だからここで仲間出現マジックをお披露目しましょう!」
ジェントルはマントを脱ぎ、通路を隠した。
「それではカウントダウン! 3・2・1……タラーン!!」
「──あ、ここ広い」
出てきたのは……知らない長身の男だった。
「へー、ここって祭祀場とかかな。何かを生贄に捧げてたとか」
「Who? えっと、君はー誰かな?」
「仲間じゃないのか?」
「僕たちは三人組ですよ」
ジェントルも知らない男。もちろん俺たちの仲間でもない。
つまり、あいつらとはまた別のディープウェブの住人なのか……?
「あ、ここのスタッフの人ですか?」と彼が語りかけて来るので、俺は首を横に振った。
「そうですか。色々と観光地ならではの情報を知りたかったですけど。そっか、では」
「ちちんぷいぷいー! 君は誰なのかな? 一体何者──」
ジェントルは去ろうとした男の肩を掴むと……掴んだところから徐々に体が凍っていった。
「冷たっ……うわぁぁぁ!? ちょ、誰か怪盗を解凍してくれる解答をく──」
そして、一瞬のうちに彼は全身凍らされてしまった。
すぐさま俺は戦闘態勢を取る……!
「触らない方がいいですよ。あ、遅かった……まぁ、死んではないのでゆっくり溶かせば戻ります。別に意味のない殺生はしたくないので。では」
「待てっ!! お前何者だ……人間じゃないな。セブダンジョンの模倣者か……?」
「ここにはまだいないみたいですよ。歴史浅いですし。でも、まぁ模倣者です。あ、初めまして。えーと、社会名付けてもらったな。確か自分は加賀遺フーガです。出身はシレトコです」
……っ!?
SS級ダンジョンの模倣者だと……!? どうしてここに!?
だが、実力を隠蔽工作できるのは強者だけ。こいつは本物だ……。
「オーデュイ、隠れるんだ」
「う、うん! 亮くん気をつけて!」
祭壇の裏側に身を潜めるため、オーデュイはピョンピョン跳ねて逃げた。
「へー、喋るスライムですか。自分たくさん観光してきたけど、初めて見たなー。あー、てか亮くんって、もしかして東亮ですか。ヨナグニダンジョンの。うーん、困ったな」
「何がだ……」
すると、加賀遺は逃げ道を無くすため、近くにいた氷漬けのジェントル諸共、通路の入口を生み出した氷壁で塞いだ。
「東亮はできたら殺しておけって言われてるんです。困ったな、キョウトの二の舞だ。自分、本気出すと世界が凍るんですよ。貴重な観光地を破壊しちゃうじゃないか。観光保全第一なんで、自分」
冷たい殺意が場を支配する。
同時に、青かった空間が白い氷の世界へと早変わりした。
◇ ◇ ◇
「──あら?」
「どうされましたか葵お嬢様……おや……」
セブダンジョンのビーチで、抹茶餅を食べながら体力を回復していた来海とそのお付きたちは晴れ渡る空を見上げる。
「……雪が降ってきましたわね」




