92本目 今の時代はグローバルだね!はろー、まいねーむいずサイキョー
「あら、新しいお客さんですわね」
来海の発言とは裏腹に、彼女一派は目の前に現れた外国人を警戒している。野田と庭白もだ。
だが、金髪の女は分かっててか、挑発するように自己紹介を始める。
「Woo,ヤマトナデシコのみなすわぁ〜ん。ハロー、アタクシはマキノ・ハナブサ。こっちが」
「アバウント・デヴォーグ・ファルコ」
「図体と同じで名前が長いの彼。アタクシはフラペチーノを注文する時もメニュー表を指してこれって言うくらいには長い名前は覚える気ないの。だから彼のことはA.D.ファルコって呼んであげて。それで反応するから、ああ多分ね! ハハッ!」
マキノ・ハナブサと名乗る女は顎が外れそうなほどに口を大きく開け、偏見そのままの外国人の話し方をする。一人だけ外画出身みたいだが、目鼻立ちはアジア系の女性。
もう一人は背が高く、褐色肌で銀髪の男。名乗ったきり一言も話さずに上の方をボーッと見ている。
「アンタたち、にゃに者にゃわけ?」
「あぁ〜ら、子猫ちゃん。せっかちねぇ。顔だけ可愛くても余裕がない女は男にモテないわよぉ?」
「それでいいよ」
「……良くにゃいけど!?」
何故か庭白が返事をしたところで、改めて彼女たちは自己紹介をした。
「アタクシたちはUSA! アメリカから派遣された探索者よ! 一緒に攻略頑張りましょうね」
「おぉ! アメリカのシーカーなんだ! グローブ! よろしくー!」
グローバル、かな。
世界中にダンジョンができたことにより、海外でも探索者が、次々と誕生した。
だが、日本と違って、正式な探索者であると証明できるものは現状何もない。
まぁ、本物だろうと偽物だろうと、彼女たちを信頼することはできない。
何度も言うように、今回のセブダンジョンは他の探索者がいるわけないのだから。
「一体いつから潜んでた」
「あらーん? 潜んでたなんて失礼ねっ、もぉう。答える前に一つ寄り道を。アタクシたちはアナタたちのことを幼馴染のように知ってるわ。TOKYOを救ったマイマイとそのお友達でしょーん?」
「うん! えっ!? わたしたちって、おさなじみなの!?」
「海外特有の比喩表現だよ」と説明してあげるが、吾妻は理解できなくて、その内理解しようとすることを諦めた。
「アナタの名前は世界中に広がりつつあるわ。そんな有名人がここに来たなんて、やはりこのセブダンジョンは難しかったってことよね」
「つまり何が言いたい」
「アタクシたちは、アナタたちが来る二週間も前から探索し続けて来たの。つまりお腹がペコペコ、死にかけってわぁけ──だから、アタクシたちにもご飯恵んでくれないでしょうか。何卒お願いします」
突如として、三人は並んで土下座した。
確かによく見ればマキノたちの頬はやつれている。装備など身体は綺麗でいるのは、そこに広がる海らしきもので体を洗っていたからだろう。
だが、海水と同じ成分ではあるので、飲み水すら確保するのは難しかったんだろうな。
「おぉ、大変だったんだねー。全然オッケーだよ! ね! みんな!」
「マイマイ……! アンタ良い女だねぇ〜」
「待て。別に無理してここで生き延びなくとも、ダンジョンから出れば良かった話だろ」
マキノたちは頭を下げたまま、表情を見せない。
助けを乞う別の探索者を善意で助けたら、身ぐるみ全部剥がされてしまった、なんてのは日本でもよく聞く話だ。
こいつらもそれと同じで、寝首を掻いてくるに違いない。
「もう東くんったら〜。お肉いっぱい食べたいならそう言えばいいのに〜。独占したい気持ちは分かるけどさ〜」
「吾妻さん、どこの馬の骨かも分からないやつに食べ物を恵む必要はないぞ」
「だいじょぶ! この人たちが悪い人たちでも、わたし最強だからぶっ飛ばしちゃうもん! それに、東くんにみんながいるから! だいじょぶだいじょぶ!」
メイドの鈴鹿が「まだまだお肉様はたくさんございます」と、シェフの蝶野が焼いた肉を新しく持ってくる。
他のみんなも吾妻がそう言うならばと賛同したようで、三人を輪に入れてあげる。
「アンタたち……! いいのぉ!?」
「えぇ。わたくし達はゆとりありますから。それに、マイマイさんが頷くなら、わたくし達は従うのみですわ」
「あ、ライスおかわりできますか?」
来海の話を聞かず、左右の男共はもうガッツリご飯を食べている。ファルコは既に10本も串を平らげているほど早食いだな。
本当にこの子達の警戒心のなさというか、あるいは自信の表れなのか。ただ今までに油断して隙を突かれることが何度もあったよな……。
海外のダンジョンストリーマーは情報が少ないが、彼らについては探りは入れておきたい。
「アンタたち! 久々の食事よ! 食べ尽くすわよぉ!」
「うん」「イェス、ライス!」
……うーん。何かポンコツなのが目に見えるが、警戒するに越したことはない。




