90本目 歓喜せよー!【水着回】だぞぉー!!
「ん〜、着いたぁ〜! ハワイー!」
「セブ島な」
空港を出た途端、肌に感じる常夏の空気……全身で感じ取った吾妻は全然違う地名を叫んだ。
彼女の知っている南国は沖縄とハワイくらいしかないので、仕方ない。
俺たちは、フィリピンのセブ島に出現したセブダンジョンへと招待された。
急遽決まった海外遠征だが、俺たちはパスポートを持っていない。
が、特例で三日後にはできていた。恐ろしいな、国家権力ってのは。
そして、他の攻略メンバーとはダンジョン前で現地合流し──現在は、リゾートを思う存分満喫している(?)
セブダンジョンには他に誰もいないので、貸切状態だ。
「うぃー! やっほー! マイマイのマネージャー!」
松實が手を振りながら、ビーチパラソルの影の中で休む俺の元に、生野と共にやって来た。
一応、攻略配信であるので呼ばれたメンバーは、吾妻と仲の良いダンジョンストリーマーたちばかり。
来海葵とその使用人たち。野田とバディの庭白。そして、探求省から松實と生野だ。
保護者役の佐藤がいないことを尋ねてみるが、
「あぁ、あいつは仕事で忙しいから」
「そだよー! ワタシたちの分もしてくれるのー!」
いつもの如く原因はこいつらだった。
可哀想だし、お土産くらいは何か買って帰ろう。
「少ししたら配信を開始するが、二人はVの姿じゃなく生身で出演するのか?」
「もっちのろ〜ん! マイマイと冒険したいからね〜!」
「トウキョウでの活躍に伴い、上から許可は貰った。もっともユキカナチャンネルとはバレないだろうがな」
絶対バレるだろ。
宝具や声、話し方。ましてや名前まで晒してたよな。
もう吾妻には1200万人のファンという名の監視者がいるんだぞ。そっちも500万人は超えているだろ。
そう、このメンバーはトウキョウを救った際、吾妻に駆け寄ったところも配信されていたからか、仲良いNewTuberとしてチャンネル登録者を一気に増やしていた。
アオイ嬢の優雅なひとときチャンネルが163万人、えりにゃんチャンネルが296万人、ユキカナチャンネルは534万人(ギリ身バレしていない段階で)。
人気も、そしてS級の模倣者と激闘を繰り広げるほどに力を付けているので、この緊急依頼でも彼女たちは活躍することに違いない。
「そういやマイマイのマネージャーは遊ばないの〜? 遊ぶと遊べるよ!」
「バカか松實。遊ぶんじゃない、創作だ。でっかい砂のお城を作るぞ」
「えー、しょーのちゃん、おもしろくなーい。いつも運動しないからワタシより弱いんだよ〜?」
「うるせぇ! 今は関係ないだろ!」
……まぁ、今は衣装と称した水着姿で、ダンジョン内にある海っぽい場所で遊んでいるだけだが。
目の前にいるスクール水着姿の松實幸(今年28才)と、ラッシュガードを着用した生野奏はいつもの如く言い争う。
「おしり砂まみれになるよー。海入ろうよ〜」
「いや、焼ける……」
「おしり丸見えのくせにぃ〜」
「出してねぇわ! 変な誤解与えんな!!」
実際出てるのは、脚だけ。
それを言うと、露出に関して気にかかるのはあっちの二人組か。
「エ、エリナ……! こ、これ! これ付けて!」
「パレオ? いいけどリリナ、アンタかなり大胆ににゃるけど♪」
「……っ、うぅ……」
レースをあしらった黒のビキニを着た野田エリナと、対して純白のものと麦わら帽子を被る庭白リリナ。
バディの露出が気になる庭白が自身のパレオを譲り渡すが、どちらかといえば彼女の方が目立つようになり、麦わら帽子を深く被る。身体隠さず顔を隠す。
まぁ、裏方だからカメラに映らないし、現在は俺たちしかいないけども。
そして、俺のバディである吾妻舞梨は、緑の和柄模様の水着姿となった来海葵とビーチボールで遊んでいた。
「それー! わわっ、ちょっとミスったー!」
「大丈夫ですわよ! この距離ならゆとりを持って届きますから!」
勢いよく走って、海に飛び込みながらビーチボールを吾妻に跳ね返した。
その様子をお付きの人達は、昼食の調理とセッティングをしながら温かく見守っていた。
「おー! 葵ちゃんすごーい!」
吾妻の水着は……。っ、ダメだ。直視はやめておこう……。
俺が目を逸らすと、下腹部がヒヤリとした。
「うぉ……オーデュイか。どうした」
真夏には嬉しいヒンヤリボディのオーデュイが、胡座に座る俺の上に乗ってきていた。
「あのさ、お願いがあるんだけど〜……」
「お願い?」
「うん。その、マイマイのマネージャーって模倣者じゃんか。人間でもあるけど、そのぉ魔物でもあるというか……」
「気遣う必要はない。括りとしては魔物と同じだから」
「う、うん、じゃあワタシと同じ魔物ってことでいいんだよね!」
「あ、ああ。そうではあるが……どうしたんだ?」
「だからね、ワタシもなれないかなぁって思うんだ……ニンゲンの姿に!」




