88本目 大事件のその後を、ちょっとだけ教えるよ♪続きはサブチャンで!
「……おぉ、なんや。見舞いに来たんか。参ったなー、出せるもん何もないわ」
「構いませんよ。ただ、新しい観光地ができたと聞いたので、それを見に」
都内、高層ビルの屋上。
狭間と藤岡が見下ろすのは、以前とは違う……歪な東京の街だった。
アキハバラダンジョンから生まれたものは数々の建造物と混合していた。
上野にそびえ立つパンダ柄な四角錐の山。
100mまでジェンガのように積み上がった銀座のビルから流れ落ちる滝。
光と闇が深く混じり合った新宿。
稲妻のように折れ曲がって立つ東京タワー。
街が元通りに戻ったのではなく、都内のダンジョンの特徴的な要素がぐちゃぐちゃに現実に混ざり合ってしまったのだ。
それも(こうだっけな? あ、こうなったらいいな〜、こっちの方がかわいい!)と、吾妻の理想を描いた街に生まれ変わったのである。
もっとも、これでインフラ機能などが成り立ってしまっているのが、吾妻の恐ろしくも凄いところである。
物理演算など関係ない。予定調和であるように上手く世界は回り続けていく。
「なぁ、オマエはワシらを消そうとしたんか? 四皇を自分以外のダンジョンに行くよう仕向けよって。そんなん知って、ワシは血相を変えてしまいそうやったで」
「S級探索者である四皇が東京にいれば、目的を果たすのが困難になるため、地方へ飛ばす必要があっただけです。私としてはキョウトダンジョンが無事であれば、他はどうなろうとも構いません」
「素直に自白しよったな、おい」
「では、復讐しますか?」
藤岡が問いかけたが、狭間は溜息を吐いて、また街を見下ろす。
「バカにしとんか。ワシはもうB級や。SS級になったオマエに勝てるわけないやろ、アホ」
全国のS級ダンジョンはキョウト以外は攻略され、B級にまで降格した。
しかし、キョウトダンジョンのみ謎の人物の介入により、氷に閉ざされ誰も攻略できなくなってしまった。
よって、彼はSS級模倣者へと昇格された。
ダンジョン内にいた探求省職員、探索者は皆、凍った状態で発見されたが、無事に全員一命を取り留めた。
「私は交友関係が広いですから。これも良い教師として必要な要素ですから」
「ほぉーん。んで、そのお友達と、また何かするんか? 今度はもっとデッカくいくんか?」
「……さぁ、あなたにはもう関係のないことでしょう」
「あー、せやな。ま、楽しみにしといたるわ。たまには舞台から降りて客席から見るのも悪くないからな」
◇ ◇ ◇
──12月に入った。
季節はすっかり真冬となり、太陽の光が恋しくなる人々は、防寒のために着込むようになった。
「──マイマイかわいい〜!」
「ありがとー! 少しサイズが大きくなったからね、新しくしたんだ〜。ユッキーだって、すっごくかわいいよ!」
「しってる〜。ワタシはちょ〜美人なお姉さんだからねぇー。はい、しょーのちゃんも、ほらほら、ワタシにかわいいって言って?」
「うるせぇ」
「もー! しょーのちゃんったら照れてるんだからー!」
「──エリナ、やっぱ恥ずかしいよ……」
「にゃに言ってんのよ! リリナはカワイイんだから自信持ちにゃさい!」
「う、うん……」
「──葵嬢! はい、これ日傘!」
「ふふっ。オーデュイさん、ありがとうございます」
しかし、彼女たちはまるで逆の世界に生きていた。
各々、自分の衣装に着替えると、吾妻を筆頭に海小屋から走り出てきた。
「青い空! 白い砂浜! なんか太陽っぽい暑いやつ!」
そう、ここは──
「「「海だぁ!!」」」
夏に焦がれた俺たちは今、常夏のセブダンジョンへとやってきた。




