86本目 ラストステージ!いんトウキョウダンジョン!!
「う〜、ゆっくり落ちるの変な感じ〜、なにこれぇぇ〜」
「マイマイ!!」
「ん〜? あ! えりにゃーん! それにみんなもー!」
「ここに落ちて! そして、あのホタルって子をにゃんとかしにゃさい! マイマイにゃらできるでしょ!!」
「も〜ちろん!!」
佐藤が宝具の効果を切ると、維持されたままの重力加速度に則って再び吾妻が高速で落ちて来る。
「ふにゅにゅにゅ……! 行ってらっしゃいマイマイ!」
「行ってマイリます!!」
そして、みんなの手によって広げられたオーデュイの身体をトランポリンにし、吾妻はまた空へと跳ね上がった。
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『みんなホタルがいっちばんの妹だよねー♪ だから、おにいちゃんなら妹のために命を投げ捨てられ──』
『とうっ!』
玉響が東京中のファンに向かって呼びかけた時、空けたままだった穴から吾妻が飛び出してきた。
『はぁっ!? 何で生きて!?』
『スタッ……。ホタルちゃん!』
『どうやって戻ったか知らないけど、今度こそ殺してやるっ! ホタルがいちばんの妹なんだからー!』
『わたしがお姉ちゃんになってあげよー!』
吾妻の堂々たる意味不明な言葉に、思わず玉響の動きが止まった。
『おねえちゃんに……お前が?』
『うん! いやー、わたし一人っ子だから、欲しかったんだよね〜』
『え、おにいちゃんいた──』
『一人お兄ちゃんがいてー! し、下が欲しかったんだよぉー。かわいい妹が特にね! ……ふぅ、あぶないあぶない』
『……それだけじゃヤダ。ホタルはみんなの妹なの! だからいっぱいホタルは可愛がってもらうの、死ぬまで死ぬ気で死んでも愛してもらいたいのぉ!!!』
『そっか! じゃあー、ん!』
吾妻は両手をバーンと広げた。
『なにそれ……』
『ん? よしよししてあげよーって』
『ふざけないで!』
玉響がステージの床からいくつも石の塊を作り出し、吾妻に飛ばす。
それを彼女は避けなかった。頭に当たり、血を流したとしても防ぐことはしなかった。
『何で……何でやりかえさないの!』
『わたしはもうお姉ちゃんだから! かわいい妹が悪いことしても、わたしは暴力で怒らないよ。もちろん「こらっ」って叱るけど、その後はギューっと抱きしめるの。そしたら、心がホワってして幸せな気持ちになるの。わたしもお母さんにそうしてもらったから。だから、おいで?』
吾妻は優しく微笑みかけた。
『……ホタル悪い子だよ』
『悪い子なんていないよ。いっぱい反省したら、わたしが全部許してあげる♪』
『許してって……そんな……あれ……』
するといつの間にか玉響の瞳から涙が流れた。
本当は何か忘れてしまったけど、きっと自分は、安心がずっと欲しかったんだと。
『……おねえちゃん……おねぇちゃん!』
絆された玉響が走り出すと──こめかみを狙撃され、そのままステージ床に倒れた。
『……っ!? ホタルちゃん!!』
◇ ◇ ◇
「──あー、ホタルンったらダメなのにー。これじゃ次に進まないでしょ、ほんともー。それにS級の奴らも使えないし。あー、ほんとムカつく。ソウシがしてあげるの、ここまでだからね」
ライブ会場から遥か遠く、スカイツリーの展望台の上に座るイズモダンジョンの模倣者、天原ソウシ。
彼は指を丸めて作った指望遠鏡を通して行末を見守っていたが、気に食わない展開になったので、指望遠鏡をそのままレールガンの発射装置として、その辺で使われているネジを勝手に取っては撃ち飛ばした。
「じゃ、消えずにいたらまた会おうね、ホタルン♪」
◇ ◇ ◇
玉響が倒されたことで、彼女に魅了されていた人々は自我を取り戻した。
……そして、ダンジョンが、東京中が崩壊を始めた。
このままでは上にいる人は落ち、下にいる人は落ちてきたものに潰されてしまう。
「──マイマイ! どこだ、マイマイ!!」
『この声は……! お兄ちゃーん! こっちだよ!!』
悲鳴と叫喚の中、東の声を聞き分けた吾妻が呼び込み、それを聴き取った東がすぐに駆け付けた。
『マイマイ! 無事か! 今すぐに脱出しよう、ここは崩れる!』
生配信中なのでマイマイ呼びをする東は、彼女だけでも救出しようとするが、吾妻は『やだ!』と拒否する。
『みんなを助けなきゃ。上にいる葵ちゃんたちも、下にいるえりにゃんたちも、そしてホタルちゃんを……東京中のみんなを! お兄ちゃん。どうやったら全部救えるかな』
吾妻の真剣な眼差しに、東は強く頷いた。
『……考えよう。俺たちは最強のバディで兄妹だろ。何でもできるさ』
『うん!!!!』




