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ダンジョンストリーマー!! 〜人気急上昇中のJK配信者はチート級に強い──なぜなら裏方の俺が暗躍しているから〜  作者: 杜 一樹
第13章 アキハバラダンジョン

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80本目 【勉強】勉強してください!【べんき……やだぁ】


「エリナは、無事なんですよね」


 ダンジョンの崩壊していく音がここより程近いところから聴こえる。今いる通路も大きく揺れて、とても歩きにくい。

 庭白は先行く藤岡の後ろをただ付いて行っていた。心から愛するバディの生死が心配で足が思うように動かない。

 彼は音のする方を見て溜息を吐き、それから質問に答えた。


「私は約束を破らない。大人としては当然のことだ。ただ、もう彼女は何も覚えてないかもしれないが」

「……っ!?」


 藤岡が使用できる能力、洗脳にはいくつかの使い分けがされている。

 長い時間をかけて、違和感なく相手の過去に刷り込んでいくもの。

 投稿された動画を利用して、大多数に軽い洗脳をかけていくもの。

 あるいは頭に直接触れることで、短期間で無理やり植え付けるもの。その際、元ある記憶を一度空(から)にするために、のちに記憶障害が出てしまうことがある。


「……そんな……エリナ……」

「泣くことはない。彼女を君が覚えてあげるだけでも幸せじゃないか」

「そんなこと……!」

「それとも、永遠の別れが望みだったかな。……構いませんよ、今すぐに指示すれば彼女は自害するように教育──」

「……っ!? やめて!!」

「では、言うことがありますよね?」

「……ごめんなさい……もう、逆らいません。だからお願いします、エリナだけは助けてください……」

「よろしい。私の教育は模倣者《イミテーター》には効果がない。したがってあなたの記憶から彼女を消すことは私にはできません。……もっとも探求省が秘密裏に保有する宝具《レリクス》なら記憶を上書きできるかもしれませんがね」


 たとえ野田に忘れられても、決して彼女のことを忘れたくなかった。

 だから自分だけが我慢すればいい、そう考えて藤岡に従うことにした。

 再び歩み始めた彼に、庭白は質問する。


「あの、何でわたしを……」

「質問がある際は手を挙げてから」


 まるで厳格な教師とマンツーマン授業をしている感覚に陥る。

 庭白は逆らうことなく右手をしっかり挙げた。


「はい、庭白さん」

「わたしを連れて行ってどうするつもりですか。わたしはD級の模倣者《イミテーター》。何か秀でた能力もなければ宝具《レリクス》も持っていない。何の役にも立たないのに……」

「そう自分を卑下する必要はありませんよ。気付いていないだけで、あなたには特別な才能がある。それを見つけて伸ばしてあげるのも教師の役目ですから。……我々模倣者(イミテーター)は一度死んだ人間がダンジョンという媒体を通じて、二度目の人生を与えられた存在……ここまではご存知かな?」


 庭白はゆっくりと頷いた。

 攻略された際に記憶が蘇った……わけではなく、彼女は元から全て知っていた。

 野田にもかかっているトサダンジョンの怨呪《ダンジョンカース》は、全ての記憶を忘れないこと。

 庭白もまた、自分が死ぬ迄の過程を生まれた段階から覚えていた。野田と出会う前まで気が狂う毎日だった。


「優秀ですね。ダンジョンが攻略された段階で、前世の死に際が模倣者《イミテーター》の脳内に蘇る。攻略難度とその進度によって個人差はありますが、いずれはほぼ全てを思い出すことになる」

「そう、ですね。でも、それが……」

「そして、完全攻略された場合──その模倣者《イミテーター》は消(・)滅(・)する」

「……っ!? え……」

「ダンジョンと模倣者《イミテーター》は密接な関係にある。巣を失った雛鳥は生きていけないように、我々も消える運命にある。そういう模倣者《イミテーター》を私は何人も見てきた……だが、君はここにいる。それは何故か」


 藤岡が振り返り、人差し指と中指を立てた右手を振り下ろすと、風の音が聴こえて……庭白の左腕が落ちた。


「……ひいっ!?」

「進化したのさ。次の存在へと。人の死を乗り越えて、模倣者《イミテーター》の消滅すらも乗り越えて、辿り着いたのさ……不死となったいわば新人類へと。……心配しなくてもそれも治る」


 パニックになった庭白は慌てて落ちた左腕を接合部にくっ付ける……しばらくして接着し問題なく動かせるようになっていた。

 出血は少量、痛みもそれほどなかった。


「……わたしが、不死なる存在……ど、どうして……」

「不思議だろう。疑問に持つことはとても良いことだ。では、私と一緒に解いていきましょう」

「あ、あなたの目的は何ですか」

「先生と呼びなさい……まぁ、いいでしょう。別に、私の目標は一つだけですよ」


 黒縁眼鏡を外し……彼は呟いた。


「……もう死にたくないのさ、私もね」

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