79本目 わたしはみんなを信じてるよ!最強のわたしが言うからまちがいなーい!!スパチャもありがとございまーす!!!
『行くよメガちゃん! う〜〈どっかいけー〉!』
宝具:テロップメガホンで魔物を大量に吹っ飛ばす吾妻。
俺も撮影をしながら画角外の魔物を倒すも、数は増えていくばかりでキリがない。
『続いて歌うのは『キラリ⭐︎キラkiller』! レッツスターティン♡』
SS級の模倣者、玉響ホタルと名乗った少女が歌とダンスを披露すると、それに鼓舞された魔物は強度を増していく。
さらにエフェクトという名のトラップがいつの間にか設置されており、踏みどころを間違えれば爆発に巻き込まれてしまう。
『うー、なかなか全部倒せないなぁ。どうするお兄ちゃん!?』
『そうだな──』
『……っ!? おにいちゃん……? その人っておにいちゃんなの……?』
カメラ前のみの俺の呼称を聞いた玉響はライブを一時中断する。
『え? う、うん。そ、そうだよ〜。お兄ちゃんはわたしのお兄ちゃんだからね!』
『……いいなぁ。……いいないいなぁ!! ホタルもおにいちゃんが欲しい! 強くてカッコよくて、ホタルを守ってくれるおにいちゃんが欲しいぃ!!』
激昂した彼女に呼応して、魔物達の凶悪性が加速する。
狙いは後方で潜むオーデュイにも及んでいた。
『あわわ、囲まれたよぉ!?』
『オーデュイ! こっち! 目をつぶってとんで!』
宝具:ファイヤーフランタンで魔物の目眩しをした吾妻の胸に向かって、意を決して飛び込んだオーデュイ。
その場は切り抜けるも、しつこく魔物が数を増やしながら追いかけてくる。
俺も二人を助けに行こうとするが、突如として現れた巨大な壁が行手を阻む。
すぐさま殴って穴を開けるが、壁は硬く分厚く貫通しない。
さらに空いたところからすぐさま修復していく。まだ向こうにはたくさんの魔物が残っているというのに……!
『ダーメ。おにいちゃんはそこで待っててね。妹は一人だけで十分だよね?』
ダンジョンをステージだと思い込んでいる玉響は、自由にこの場の環境を変えられる。壁に自分だけ通れる穴を開けて向こう側へと移動しようとする。
くそっ、油断した……!!
絶対吾妻から離れてはいけなかったのに──
『──〈やっほー!!〉 あ、お兄ちゃんだいじょぶ!?』
……玉響との入れ違いで、オーデュイを頭に乗せ、二つの宝具を携えた吾妻が開けた穴の淵に立っていた。
『あ、あぁ、俺は大丈夫だが……』
『さっすがわたしのバディだね!』
『なにこの女……。っ、ホタルのファンを全部殺しちゃってるじゃない!』
玉響が見た壁の向こう側は、大量にいたはずの魔物が全滅させられていた光景だった。
『ファンが減ったらわたしのおにいちゃんが減っちゃうじゃない! やめてよぉ!!』
ダンジョン全体が大きく揺れる。
足場は崩れ、天井は崩壊していく。
『妹はホタルだけ! ホタルだけなのぉ! あの女はホタルが殺す!』
SS級の模倣者に目をつけられた吾妻を助けに行かねば!
俺は落ちる瓦礫を足場にして──
『お兄ちゃん! わたしはだいじょぶだから、他のみんなを助けてあげて!』
『だが……!』
『だいじょぶ! わたしを信じて。わたしも信じてるから!』
崩壊する中で見せた彼女の笑顔。
それは時に見せる、心奪われるあの表情だった。
俺と吾妻の間を再びダンジョンが遮る。
もう姿も声もこちらには届かない。
オーデュイがいるから配信もサブカメラでの撮影を続けてくれるはず。俺は持っていたカメラを閉じた。
まだ電波は通じている。俺はスマホを取り出してマイマイチャンネルの配信を観た。
同接は脅威の50万人を超えた。過去最高記録だ。
『──はぁーあ、ホタルもあんなカッコいいおにいちゃんが欲しいなー』
『ふふーん、いいでしょ〜。わたしのお兄ちゃんはカッコいいだけじゃなくて強くて賢いんだよ〜。まぁ、わたしは最強だから全部勝っちゃうんだけどね!』
『なら、いらないよね。ホタルにちょーだい?』
『やだ。だって、それだけじゃないもん。一緒にいると、すっごく心がホワホワでキラキラで……楽しいもん! だから、ぜーったい渡してやんないもんね!』
……もう、吾妻舞梨は俺が守らなくても十分に強くなった。
年も近くて話の合うオーデュイもいるし、編集や撮影も俺がいなくてもできるようになった。
──それでも、彼女は俺を必要としてくれる。
カメラはホタルに向けているから、吾妻の表情は分からない。
けれども、いつもの屈託のない笑顔で俺たちみんなが来るのを待っている。
辺りを見回し……よし、抜け道は見つけた。俺はすぐに走り出した。




